妊娠前から母乳育児をしたいと思っていても、実際赤ちゃんが生まれて授乳し始めると予想しなかったトラブルが次々出てきます。母乳が出ない・母乳が出すぎる・乳房が痛いなど様々なトラブルに悩まされますが、このトラブルに関する情報はたくさんありますから、前もって準備や対処が可能です。
しかし、あまり良く知られていないのが授乳時のちくびの痛みです。ちくびの痛みを放置すると、乳腺炎へつながったり赤ちゃんが母乳を嫌がるようになってしまいますので、早めにチェックをして対処する必要が出てきます。そこで、ちくびが痛い時の原因や対処法・予防法などを詳しくご紹介しましょう。
授乳時にちくびが痛い原因
授乳時にちくびが痛いと、痛みに我慢しながら授乳しなければならないのでストレスになってしまいますし、赤ちゃんがきちんと母乳を飲めているのか心配になってしまいます。
痛みを我慢していれば悪化するだけなので、早く原因を知りそれを取り除かなければなりません。授乳時のちくびの痛みはお母さん側と赤ちゃん側両方に原因があるので、詳しく見ていきましょう。
母乳が詰まりかけている
母乳の出口である乳口が詰まって溜まるため、痛みができます。炎症が起きると授乳時だけでなく一日中チクチクとした痛みを感じるようになり、進行すると炎症がちくびから乳腺へさかのぼり乳腺炎の発症につながります。
ここまでくると抗生剤での治療が必要になりますから、悪化する前にセルフケアで治すようにしましょう。気になる場合は医師に相談してみると良いでしょう。
赤ちゃんの飲み方が下手
生まれた時からおっぱいを飲むのが上手な赤ちゃんと、下手な赤ちゃんがいます。赤ちゃんが口を大きく開けて乳輪部分全体を含ませるのが正しい飲み方ですが、口の開きが小さく浅く含んでしまうと、授乳時に引っ張られて切れてしまいます。
痛みに悩まされても、赤ちゃんが口に含むことを考えて保護クリームの使用も控えてしまうため、痛みが悪化しやすくなります。
飲み方が下手なサイン
見た目では赤ちゃんの飲み方が正しいのかどうかよく分からない場合は、授乳間隔や授乳時間をチェックしましょう。まず含みが浅いと十分に母乳を飲めないので、1回の授乳時間が長くなる特徴があります。
それから十分に母乳を飲んでいないので、すぐにお腹が空いて頻繁に授乳を繰り返すようになります。これらに加えて体重があまり増えていないようならば、赤ちゃんの飲み方が下手な可能性があります。
授乳するたびに痛い時は、赤ちゃんがきちんとちくびを含んでいるかどうかチェックしましょう。
ちくびの形が飲みにくい
陥没乳首・扁平乳首などちくびの形が飲みにくい形になっていると、赤ちゃんが吸う時に隙間が開いて皮膚の薄い部分を吸われたり噛まれたりして痛くなります。
すでに妊娠中に母乳マッサージなどでケアを受けられている方が多いのですが、それでもやはり赤ちゃんの吸う力は強いので皮膚が負けてしまうことがあるのです。
ただ、最初は痛くても吸われているうちに痛みは無くなってくるので、それまでは病院で指導を受けながら頑張って授乳を続けてください。
赤ちゃんの歯が当たって痛い
赤ちゃんの歯の生え始めは個人差がありますが、平均は生後5~7ヶ月ごろです。歯が生えてきても赤ちゃんはいつもと同じように母乳を飲みますから、赤ちゃんの飲み方によってはちょうど乳首に歯が当たってしまうことも少なくありません。
お母さんはその激痛に恐る恐る授乳しているかもしれません。少しでも痛みを和らげるために、まずは授乳時の赤ちゃんの姿勢を変えてみましょう。姿勢が変わることで、歯が当たらなくなるかもしれません。
また、赤ちゃんがきちんと深く咥えているかどうか改めてチェックしてみましょう。母乳を飲むのに慣れてくると浅く咥えても飲めるようになるため、それが乳首に歯が当たる原因になっている可能性があります。
ちくびが痛いのはいつ頃?
ちくびの痛みは原因によって発生時期が異なります。赤ちゃんの飲み方が下手な場合は、生まれてすぐから生後6ヶ月くらいまで痛みを感じるお母さんが集中します。
個人差があっても大体生後6ヶ月ごろには赤ちゃんはおっぱいを上手に吸えるようになるので、それまではケアをしっかり行いながら授乳を続けましょう。
乳口炎など病気が原因ならばいつでも発生しやすいですから、授乳を続けている間は十分注意してください。特に卒乳後は母乳が作られても飲む赤ちゃんがいないので残ったままになり、炎症を起こしやすくなります。
こんな症状が出たときの対処法
ちくびのトラブルは様々ですが、直接赤ちゃんの口に触れる部分ですから治療をためらってしまい、痛みを我慢したまま授乳を続けるお母さんも多いです。
この痛みは耐えていても無くなるわけではなく、悪化して乳腺炎や乳口炎へとつながってしまいますから、ちょっと痛いなと感じる時点で治療を始めるのがベストです。
悪化すれば病院で治療を受けなければなりませんが、軽度のものならセルフケアで改善できます。授乳時のちくびのトラブルで現れる症状ごとに対処法をご紹介しましょう。
乳首が切れた
ちくびの皮膚は薄いですから、赤ちゃんが強く吸うと切れてしまうことがあります。乳頭亀裂や乳頭裂傷と呼ばれますが、傷が悪化して化膿する前に出産した産婦人科で治療クリームを処方してもらいましょう。
薬が赤ちゃんの口に入ってしまうのではと心配するお母さんも多いですが、もちろん赤ちゃんに影響のない成分で作られていますから、安心してください。クリームを塗った上からプロテクターフィルムを貼れば傷を保護してくれるので、安心して授乳が出来ます。
授乳時の赤ちゃんの姿勢をチェック
ちくびが何回も切れるような場合は、赤ちゃんの飲む姿勢がちくびの位置と合っていないのかもしれません。赤ちゃんを横に抱いて授乳する姿勢が一般的ですが、赤ちゃんがおっぱいと向き合い少し上向きの姿勢を保たないと、きちんと飲めずにちくびに傷がついてしまうのです。
授乳時に色々姿勢を変えてみて、一番良い姿勢を探して見ましょう。難しい時は授乳クッションやベッドなどを使い工夫してください。
指を使って練習
飲み方が下手だったり、吸う力が強いとちくびが傷つく原因となります。赤ちゃん全員が生まれた時からおっぱいを飲むのが上手なわけではないので、下手な子にはちくびが切れてしまう前に飲み方を教える必要があります。
簡単なのは指を使う方法で、授乳させる前に指を吸わせて赤ちゃんに正しい吸い方を覚えてもらいます。指をしっかり隙間のないように加えられたらちくびというように、慣らしていきましょう。
また、ちくびを離す時に急に口を動かすと切れてしまいますが、それを防ぐためにもまずはちくびに沿って指を赤ちゃんの口の中に入れて隙間を作り、それから離すようにしましょう。
ちくびに白いものができた
ちくびに白いにきびのようなものが出来ることがあります。これは白斑と呼ばれるもので、母乳が詰まったものです。無理に取ろうとすると傷がつきそこから菌が入って炎症を起こすことがありますので、それよりは赤ちゃんに吸ってもらうようにしましょう。
ちくびに血豆・水疱ができた
ちくびが切れて出血すると、乳口に血豆や水疱となることがあります。血豆や水疱を見ると潰してしまいたくなりますが、自己流でつぶしてしまうと炎症を引き起こしてしまいますので止めましょう。
血豆や水疱は赤ちゃんの吸い方が悪いために起こるので、まずは抱き方を変えてしっかり吸わせ自然吸収されるのを待ちます。
もし血豆を赤ちゃんが飲んでしまったとしても、母乳と血液の成分は同じですから問題にはなりません。もしかなり大きくなってしまった場合は病院での治療が必要になりますので、治療中の授乳方法の注意をしっかり聞いておきましょう。
ちくびの痛みやトラブルを予防する
赤ちゃんの世話で疲れている最中の余計なトラブルは、どんなお母さんでも避けたいもの。授乳時にちくびのトラブルが発生するお母さんも多いですが、本当はトラブルが起きてから治療をするのではなくあらかじめ予防しておくのが、お母さんにとっても赤ちゃんにとってもベストです。
きちんと予防すればちくびの痛みとは無縁のまま楽しい母乳育児を続けられますし、もしトラブルが発生したとしても悪化する前に改善することができるでしょう。ちくびの痛みや授乳時のトラブルを予防する方法をいくつかご紹介します。
食事内容をチェック
乳腺炎が食事内容が関係していると言われますが、明確な根拠はなく、過剰に食事を気にしすぎるのも良くないとされています。参考:日本助産師会
しかし、カロリーの高いものや油脂・糖分をたっぷり使った食事やお菓子など、過度に食べてしまうことはおすすめできません。
母乳のためには野菜たっぷりでバランスのよい和食がおすすめです。産後の体型戻しにも和食は大活躍しますから、バランスの良い食事内容を心がけてください。
常に清潔にする
新生児の時は授乳の前にちくびを拭いて清潔にするように指導されますが、それは免疫力の弱い赤ちゃんがお母さんから菌をもらわないようにするためです。
もちろん赤ちゃんが大きくなれば必要ありませんが、だからといって清潔にしていなければ、今度はちくびの傷から菌が入り炎症を引き起こしてしまう可能性が出てきます。
自分のケアを忘れてしまうほど赤ちゃんの世話に疲れてしまうかもしれませんが、なるべく毎日入浴して清潔を保つようにしてください。
水分補給を欠かさずに
母乳育児をしている方は、母乳として体外に出て行く水分を補充しなければなりません。赤ちゃんの飲む量は成長によって変化しますが、日本人の食事摂取基準によると新生児~生後5ヶ月までは1日約780mlの母乳が必要なので、お母さんは毎日最低1リットルまたは理想として2リットルを水分補給をしなければなりません。
体内水分量が不足すれば母乳の濃度にも影響し、自然と粘度が高まってしまいちくびに詰まる可能性が出てきます。
水2リットルというと多く感じるかもしれませんが、母乳育児をすると自然と喉が渇くので、無理をしなくても飲めるでしょう。一気に飲むと体に吸収されにくいので、少量ずつ時間をかけて飲むのがポイントです。
妊娠中からちくびケア
ちくびの皮膚は弱いですから、妊娠中からオイルなどを塗ってマッサージしておく必要があります。特に赤ちゃんが飲みづらいちくびの形をしているお母さんは、病院から指導を受けているかもしれません。
赤ちゃんが飲んだ後のちくびはかなり伸びるので、それに耐えられるよう入浴後にワセリンやオリーブオイルを塗って皮膚の柔軟性を高めましょう。
妊娠中サボっていた方も、今から始めれば十分間に合いますので安心してください。すでにヒリヒリ痛む時でも同じようにケアすれば、痛みも落ち着いてくるでしょう。¥
抗生剤を飲むときの注意
痛みが耐えられないほど強くなったり白斑がかなり大きくなると、乳腺炎への進行を避けるためにも病院で治療をしなければなりません。病院では抗生剤を処方しますが、医師の指導によっては一時的に断乳を勧められることがあります。
抗生剤が母乳を通して赤ちゃんに伝わるのは極わずかなので、新生児以外は副作用の心配はないと考えられています。
しかし薬の成分で母乳の味が変わってしまい、それをきっかけに赤ちゃんが母乳を飲まなくなるという可能性がありますので、それを考えると治療中赤ちゃんにはミルクを与え、母乳は搾乳して母乳量を減らさないように気をつけていくのが一番です。
乳頭保護器の上手な使い方
amazon:乳頭保護器
傷が深くて授乳できない時は、乳頭保護器を使う方法もあります。乳頭保護器はちくびの傷を保護しながら授乳できるというシリコン製の器具で、傷の程度やちくびの大きさや形によってソフトタイプ・ハードタイプと使い分けることが出来ます。
最初は使い方にコツが必要だったり中々赤ちゃんが慣れてくれないということもありますが、次第に改善されますので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。
そこまで傷が酷いわけではないけれど、ブラジャーが摺れると痛む場合に使える保護カバーなどもありますので、セルフケアの一方法として取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
ちくびに痛みを感じても、赤ちゃんに薬の成分が入ってしまうことを恐れて治療を行わず我慢してしまうお母さんがほとんどです。
しかし現在は赤ちゃんが飲んでも影響のない薬がありますし、何より我慢していたことによって乳腺炎や乳口炎へと症状が悪化してしまう方が問題です。
これから母乳育児を続けていくためにも、トラブルは早く解決しましょう。病院での治療以外にも、ちくびの痛みを予防できますので、ぜひ手軽に出来る部分から始めていきましょう。