赤ちゃんが小さな手で耳を触るしぐさは可愛いものですが、一日に何度も耳を触っているのを見ると、もしかして耳が痛いの?かゆいの?と心配になります。赤ちゃんの耳は小さく、耳に汚れも溜まりやすく、中耳炎や外耳道炎など、耳の病気も生じやすい状態です。
赤ちゃんが耳を触ったり、かくときに考えられる原因について、赤ちゃんの耳のケア方法や耳鼻科系のトラブルの予防法など、知っておきたい情報がご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
赤ちゃんが耳をさわる、かく理由とは?原因は?
赤ちゃんが耳を触ったり、かいているとどこか耳に悪いところがあるのでは?と不安になるお母さんもいるでしょう。赤ちゃんが自分の耳を触る原因はさまざま。
眠くなったときになんとなく触るくせのある赤ちゃんも入れば、耳の中に垢が溜まっているせいで、痒みを感じていることも。アトピー性皮膚炎になると、耳がカサカサしたり、耳の付け根が切れてしまうこともあります。
さらに中耳炎や外耳道炎など、赤ちゃんに生じやすい耳の病気はいろいろ。赤ちゃんの耳の病気を早期に発見するには、お母さんやお父さんが常に赤ちゃんの耳の状態を注意深く観察することが大切です。赤ちゃんが耳を触る原因について、ひとつひとつ詳しくみていきまょう。
眠くなったときのくせ
赤ちゃんが耳を触るのは、赤ちゃんの自然な動きのひとつ.とくに眠くなったときなどに、自分の耳を無意識に触ったり、かいたりしている様子がよくみられます。口をもぐもぐさせる、自分の手をじっと見つめる、手足を口にもっていく、といったように、赤ちゃんの成長過程のひとつとして行う仕草とも考えられます。また眠くなったときや沐浴・お風呂後のリラックスしたときに、耳を触る仕草をみせる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんが耳を触る・かく仕草を見せたら、まずは赤ちゃんの耳の中をチェックし、膿や水がたまっていないかどうか、きちんと確認してみましょう。その上で異常が発見できなければ、不安に思う必要はありません。それでもどうしても心配な方は、乳児定期健診の際に医師に相談すると安心です。
耳に汚れが溜まっている
赤ちゃんの耳の穴は小さいため、耳垢がつまりやすい状態です。耳垢というと、単なる汚れが溜まったものと思いがちですが、これは間違い。実際のところ耳垢には、耳垢腺と皮脂腺から分泌される分泌物も含まれています。
この分泌物にほこり、汚れ、老廃物がくっついたものが耳垢。耳垢の本来の目的は、外部の異物から耳を保護することにあります。汚れや乾燥から耳の内部や鼓膜を保護するために必要な耳垢ですが、大きくなりすぎると赤ちゃんの耳の穴全体を壁のようにふさいでしまいます。この状態は耳垢栓塞と呼ばれています。
耳垢栓塞の原因とは?
耳には本来自浄作用が備わっています。耳の自浄作用とは、耳の皮膚に生えている毛が動くことにより、耳垢らを耳の外へと押し出すること。食べものを噛む、会話をするといった動きにより、顎が動き、それにつれて細かな毛が動き、耳垢も自動的に耳の外に押し出されます。
しかし赤ちゃんの場合は、食べ物を噛む、会話をするといった行動が少ないため、耳垢が溜まりやすい状態にあります。また上手に耳かきのできないお母さんやお父さんが、耳掃除の際にあやまって耳垢をかえって奥のほうに押し込んでしまうことも。これらが赤ちゃんの耳垢栓塞を引き起こす原因です。
耳垢栓塞の症状
耳垢栓塞になると音の聞こえが悪くなり、不快感や耳の閉塞感を感じます。垢がたまっている違和感から痒みを感じることも。赤ちゃんに耳をかく仕草が見られたら、耳垢がつまっていないかどうか確認してあげましょう。
外耳道炎
外耳道炎とは耳の中に水が入ったり、異物が侵入することにより起こる皮膚の炎症を指します。外耳道炎になると、痒みに加えて、耳の赤み、ただれ、耳だれなどが生じます。
耳だれとは白・黄色の分泌物が出ることで、いやな匂いが生じることも。膿が出て、耳の穴をふさいでしまうこともあり、耳の痛みだけでなく、発熱といった症状もあらわれます。
外耳道炎のもうひとつの原因は耳掃除の際に傷をつけてしまうことで、耳かきやコットンで頻繁に赤ちゃんの耳を掃除してしまうことにより起こります。
中耳炎
鼓膜よりも内側にあるのが中耳ですが、中耳炎とはこの部分に炎症が起きる状態を指します。鼻やのどから細菌が中耳腔に入り込み、ここで増殖。膿などの分泌物がたまることにより、発熱や痛みといった症状が発生します。
赤ちゃんの耳管は大人に比べると短く、太く、さらに水平であることから、鼻やのどをとおして細菌が入り込みやすい状態にあります。赤ちゃんに中耳炎が多いのはこのためで、赤ちゃんが成長し、大人の耳管に近い形になるにつれて、中耳炎にかかる可能性は減っていきます。
中耳炎の症状
中耳炎には急性中耳炎や滲出性中耳炎など、いろいろなタイプがあります。急性中耳炎は風邪を引いて、鼻水が続いたときなどにかかりやすく、痛みや発熱、耳だれなどが典型的な症状です。
赤ちゃんがしきりに耳を触る、高熱が出ている、機嫌が悪い、夜泣きが激しく耳を痛がる、このような場合は念のため小児耳鼻科で診察を受けたほうが安心です。
滲出性中耳炎とは?
滲出性中耳炎とは耳に水がたまっている状態を指します。急性中耳炎では中耳腔に膿や分泌物が溜まり、炎症を起こしていますが、滲出性中耳炎には膿はみられません。風邪を引いたあと、急性中耳炎にかかったあとによくみられる症状です。原因についてははっきり分かっていませんが、急性中耳炎の治療が不十分だったり、耳管の機能が完全にはたらいていないことが原因ではないか?と考えられています。
滲出性中耳炎の特徴は、耳の聞こえが悪いこと。急性中耳炎のようなはっきりした症状が出ないため見落としがちですが、そのままにしておくと完治まで長い時間を要します。赤ちゃんの耳になにかしら問題があると感じたら、自己判断で決め付けず、専門医の診察と検査を受けることが必要です。
乳児湿疹
乳児湿疹とは新生児ニキビ、乳児脂漏性湿疹、おむつかぶれ、汗疹などの湿疹やかぶれを総称した呼び名で、赤ちゃんに一般的にみられる症状です。
乳児湿疹にはいろいろな種類がありますが、耳、おでこ、頭皮、首まわり、肩などはとくに症状があらわれやすく、カサカサ、うろこのようなかさぶた、じゅくじゅくしたただれなど、症状のあらわれ方もさまざまです。
乳児湿疹は生後2週間頃から生後1、2年目まで続くことが多く、ほとんどの場合赤ちゃんの成長とともに自然に完治していきます。症状を見ただけでは、原因を特定することが難しい場合もありますので、どのような対処法を取ればいいか迷ったら、必ず専門医の判断を仰ぐようにしましょう。
乳児湿疹の中には痒みを伴わないものもありますが、汗疹や乾燥性湿疹、アトピー性皮膚炎の場合は痒みがひどく、赤ちゃんが耳のカサカサをかきむしってしまい、さらに症状が悪化することも。耳のカサカサは汚れを取り、きれいにしてあげるだけでなく、保湿することも大切です。
アトピー性皮膚炎
耳のカサカサや耳切れは、アトピー性皮膚炎によっても起こります。乳児のアトピー性皮膚炎にはいくつかの要素が複合的に関わっています。まずひとつは皮膚のバリア機能が低下し、皮膚が乾燥すること。もうひとつは赤ちゃん自身がアレルギー体質であること。そしてもうひとつはダスト、ダニ、花粉などのアレルゲンが身の回りにあること。
アトピー性皮膚炎と乾燥の関係
生後3、4ヶ月頃になると赤ちゃんの皮脂の分泌は減り、皮膚が乾燥しやすくなります。これに加えてアレルギー体質な赤ちゃんがアレルゲンに晒されると、皮膚が乾燥し、耳や頬、あご、首まわりなどがカサカサに。皮膚がカサカサになると、赤みや痒みが生じ、かいてしまうことにより皮膚の状態がさらに悪化。じゅくじゅくになったり、耳切れやただれなどのスキントラブルが生じます。
アトピー性皮膚炎の疑いがある場合は病院で検査を受けること
耳のカサカサ、耳切れ、湿疹やただれといった症状だけから、アトピー性皮膚炎かどうかを判断することは難しく、病院で検査や診察を受ける必要があります。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんの多くは、食べ物アレルギーを併発していることも多く、スキンケアだけでなく、食べ物にも特別な注意が必要になります。赤ちゃんの耳にカサカサや耳切れがあり、アトピー性皮膚炎が疑われる場合には、できるだけ早く小児皮膚科で診察を受けるようにしましょう。
誤ったスキンケア
赤ちゃんの肌はとってもデリケート。大人に比べると皮膚の厚みが極端に薄く、皮膚を外部の刺激から保護するバリア機能も完全ではありません。このような状態にある赤ちゃんの皮膚に対して、間違ったスキンケアを行うことは深刻な影響を与えます。
洗いすぎは逆効果
赤ちゃんの体や顔の汚れや汗をしっかり取ってあげようとするあまり、洗いすぎるのは逆効果。かえって赤ちゃんの耳のカサカサや湿疹を悪化させます。赤ちゃんの皮膚のバリア機能にとって必要な 皮脂分まで落としてしまうと、皮膚が乾燥し、湿疹やかぶれが生じやすい状態になります。
他にも沐浴・入浴後に十分な保湿を行わないことも、赤ちゃんの耳のカサカサの原因のひとつ。赤ちゃんの顔や体を清潔に洗うと同時に、保湿も忘れずに行いましょう。
赤ちゃんの耳のイヤな臭いについて
赤ちゃんの耳からいやな臭いがするのはどうしてでしょうか?沐浴やお風呂のときに、きちんと耳もきれいにしているつもりなのに、なぜか赤ちゃんの耳からいやな臭いがする、こんな体験をするお母さんも多いようです。
赤ちゃんの耳の臭いには、心配する必要のないものと、病院で診察を受けた上で治療をしたほうがよいものの二種類があります。
赤ちゃんの耳垢の生理的な臭いであれば、まず心配いりません。注意したいのは、我慢できないほどのいやな臭いに加えて、ジュクジュクした耳だれが出ている場合。この場合は中耳炎にかかっているおそれもあります。
臭いに加えて、ジュクジュクがある場合、耳垢がびっしりたまっている場合などは、自宅で自己流の対処をせず、専門医の治療を受けたほうが安心です。
またいやな臭いがするからといって、耳掃除を頻繁に行うのはNG。赤ちゃんの耳の皮膚を傷つけ、その部分にジュクジュクができてしまい、さらにいやな臭いが発生することも。赤ちゃんの耳掃除の正しいやり方を心得ることが大切です。
トラブル回避の耳のお手入れの方法
赤ちゃんの耳のトラブルや病気を予防・改善するために必要な対処法についてくわしくみていきましょう。アトピー性皮膚炎など、予防しようと思っても難しいものもありますが、お母さんのちょっとした努力で防げるスキントラブルもあります。赤ちゃんの耳のトラブルの予防・対処方法について挙げていきましょう。
耳掃除のコツ
お母さんの中には赤ちゃんの耳掃除を毎週行っている方もいるようですが、これは間違い。赤ちゃんの耳垢には、ほこりや乾燥から赤ちゃんの耳や鼓膜を保護するはたらきが備わっています。
赤ちゃんの耳垢を無理やりに取ってしまうと、このはたらき自体を奪う結果に。また耳掃除を頻繁に行うことにより、赤ちゃんの耳の皮膚に傷をつけてしまうおそれもあります。赤ちゃんの耳を掃除する際には、外耳道の外側の部分だけを、柔らかいコットンで優しくふき取るだけで十分です。
耳掃除の回数は月に一回、多くても二回程度にとどめましょう。またお母さんが上手にできないときは、小児耳鼻科や耳鼻科病院でやってもらうと安心です。
赤ちゃんの様子を常に観察すること
赤ちゃんの耳の状態を常にチェックする習慣をつけましょう。湿疹やかぶれ、カサカサ、耳切れ、耳だれなど、気になる症状がみられたら、早めに専門医の診察を受けることがなにより大切です。
耳の病気は体の他の症状としてあらわれることがあります。発熱、機嫌が悪い、腹痛、激しく泣くなど、耳の異常に加えて、他の症状がある場合にも念のため耳鼻科で診察を受けたほうが安心です。
赤ちゃんの耳の保湿
沐浴・入浴後は必ず赤ちゃんの耳の保湿を行いましょう。お風呂からあがったら、体と顔の水分を優しくふきとり、その上でワセリンやベビーオイルで耳も必ず保湿してあげましょう。乳児湿疹にしろ、アトピー性皮膚炎にしろ、乾燥はそれぞれの症状をさらに悪化させます。赤ちゃんの耳の保湿にも十分に気を配りましょう。
まとめ
赤ちゃんが耳を触るときに知っておきたいいろいろな情報を幅広くご紹介しました。赤ちゃんの耳のトラブルは、乳児湿疹や中耳炎、そしてアトピー性皮膚炎までさまざまです。
赤ちゃんの耳の症状、耳のトラブルの原因や予防方法・対処法を知っておくと、いざというときに必ず役に立ちます。赤ちゃんが耳の痛みや痒みで辛い思いをしないよう、耳のトラブルの早期発見・早期治療に努めましょう。