母乳しこり・授乳しこりが気になるときに知っておきたいこと

母乳しこり、授乳しこりが気になるときに知っておきたいこと 産後お母さん

赤ちゃんが生まれたら母乳で育てたい、と妊娠中からケアをしていたお母さんも多いでしょう。母乳育児のメリットは大きいですが、だからと言って母乳育児をする方全員が順調に続けられるわけではなく、それに対してトラブルも多いのです。

母乳が出ない・飲んだ量が分からない等の不安のほかにも、しこり・痛みなど乳房のトラブルも頻繁に起きます。特にしこりは乳がんにつなげて考える方も多いので、気になるところかもしれません。そこで、しこりと母乳・乳腺炎との関係や対応策などを詳しくご紹介します。

しこりの原因とは

しこりの原因とは

授乳している時に乳房のあちこちに出来るしこりの原因は、一つではありません。

お母さんと赤ちゃんの環境や母乳の出方など複数の原因が合わさってしこりとなるので、しこりが出来た時は自分の環境や生活習慣など広い部分から原因を探す必要が出てきます。

授乳間隔を空けすぎる

授乳間隔を空けすぎる

新生児の1日の授乳回数は8回~12回と言われています。もちろんこの回数は目安ですから、1時間おきに泣いて授乳を繰り返したり授乳時間が長い赤ちゃんもいるでしょう。

しかし授乳回数が多いのは母乳量が足りないからと考え、授乳回数を減らしてその分母乳を溜めておこうとするお母さんもいます。母乳はどんどん作られて溜まりますが、授乳間隔が空きすぎると母乳が溜まりすぎてしこりが出来やすくなります。

また、時間を置いた母乳はおいしくありませんから、その点からも授乳間隔を無理に空けるべきではありません。

赤ちゃんがきちんと飲んでいない

赤ちゃんがきちんと飲んでいない

最初から上手に母乳を飲める赤ちゃんがいれば、中々上手くいかない赤ちゃんもいます。飲むのが下手な赤ちゃんは、きちんと乳首を根元から咥えられずに浅く含んでしまい、お母さんに十分な母乳があっても赤ちゃんは中々吸えずに疲れてしまうのです。

残った母乳をそのままにしてしまうと質が悪くなってしこりとなり、乳腺を詰まらせる結果になります。

母乳量が多い

母乳量が多い

母乳が少ないと悩むお母さんも多いですが、その反対に母乳が多すぎて大変というお母さんも少なからずいます。

赤ちゃんが1回に飲める母乳量と作られる母乳量のバランスがお母さんのほうへ大きく傾いてしまうと、授乳しても必ず母乳が残ってしまいしこりの原因となってしまうのです。

しかし、残ったからと全て搾乳してしまうと、「空になったからもっと母乳を作ろう」と脳が命令を出して更に母乳が増える逆効果になってしまい、しこりが治ってもまた出来るというループに陥る可能性が出てきます。

お母さんの食事との関係は

お母さんの食事により乳腺炎になりやすい、詰まりやすいなどと聞いたことがあるでしょう。しかし明確な根拠はないとされています。※参考:日本助産師会

あまりにも食事を注意し、体調を崩してしまっては意味がありません。お母さんの体力回復や良質な母乳のためにもバランスの良い食事をとることが大切です。

いつ頃しこりは発生しやすい?

いつ頃しこりは発生しやすい?

しこりが発生しやすいのは、生後1~4ヶ月ごろと言われています。生まれてすぐにしこりが出来てしまう場合は、赤ちゃんが母乳をしっかり飲めていないことが原因の一つに挙げられるでしょう。

また、生後3・4ヶ月は母乳量が一気に増える時期ですが、母乳が増えればしこりが出来てしまう可能性も高くなります。

しこりが出来るとせっかく増えた母乳量も減ってしまうので、母乳育児を継続していくためにもしこりの有無にはいつも気をつけましょう。

卒乳後のしこりは

卒乳後のしこりは

赤ちゃんが上手にたくさん母乳を飲めるようになるとしこりも減っていくので、もう大丈夫と安心してしまう方も多いです。

しかし、実は卒乳後にもしこりが出来ることがあります。卒乳は急に授乳をストップするわけですが、体はその変化についていけず母乳を作り続け、それが溜まってしこりの原因につながります。放置すると次の出産後の授乳に影響すると言われているので、しっかり対策を取りましょう。

搾乳しすぎると逆効果なので、分からない時は乳腺外来などで相談してみてください。

しこりが現れる授乳中の病気

しこりが現れる授乳中の病気

しこりが出来ても、忙しいあまりに放置してしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。授乳するたびに母乳が作られますから、そうするとしこりの場所にどんどん母乳が詰まって、お母さんが想像するよりも早く悪化してしまうことも考えられます。

初期ならばセルフケアで改善できますが、そのままにしておくと最悪の場合手術の可能性が出てきます。そこで、しこりが出来るとどのような病気になりやすいのか、また治療法などを見てみましょう。

乳瘤(にゅうりゅう)

授乳中にできるしこりは、一般的に乳瘤と診断されることが多いようです。母乳が乳腺内で袋のようなものに溜まった状態なので、しこりがあっても触ると移動したり押すと痛みを感じるのが特徴です。

赤ちゃんが母乳をたくさん飲むようになれば自然と乳瘤は減少してきますし、また卒乳後に出来た場合でも体内に吸収されるので、あまり心配するものではないと考えてよいでしょう。

ただ、もし痛みがあったり熱を持っている場合は対処が必要になります。

うつ乳

うつ乳は、乳腺炎を発症する前段階といってよいでしょう。原因は乳瘤と同じように残ってしまった母乳が溜まってしまうものですが、うつ乳の場合は母乳残ったが乳腺を詰まらせてしまい、そこにしこりができます。

うつ乳は、授乳中でもチクチクした痛みがある・授乳してもまだおっぱいが張っている・熱をもっている・しこりがあるなどの症状が特徴ですが、この段階でしっかりケアをすれば乳腺炎を防ぐことが可能です。

乳腺炎

乳腺炎

うつ乳が悪化して細菌に感染すると、しこりが更に大きくなり触れないほどおっぱいが痛くなる・高熱が出る等の症状が現れます。

また母乳が通る乳管は複数ありますが、乳腺炎を発症して一つが詰まってしまうと他にも影響し、その結果母乳が出なくなる可能性が高くなります。

それだけでなく、乳腺炎になると抗生物質を投与して治療をするので、その間は授乳が出来なくなってしまい母乳量の減少につながる恐れなど、今後の母乳育児に何らかのマイナス面が出やすくなります。乳腺炎は治療やその後のケアが大変ですから、そうなる前にしっかり予防していきましょう。

乳腺膿瘍

乳腺炎重症化

乳腺炎が重症化すると、乳腺組織の周辺に膿が溜まってしまいます。ここまでくると抗生物質投与だけでは効果が出ないので、切開して膿を出す手術を行わなければなりません。

1回の手術では全ての膿を出し切れないので、管を挿入して数日間排出させる処置を行います。

治療中は赤ちゃんに母乳を上げることはもちろん出来ませんし、症状の程度によっては入院しなければなりませんので、お母さんにとっては辛い状況になってしまうでしょう。ここまで悪化させないためにも、早い気づきと対処が大事なのです。

乳がんの可能性は?

乳がんの可能性は?

しこりがあると、もしかして乳がんなのではと心配になってしまいますね。授乳中に乳がんを発症する確率はゼロではありませんが極めて低いとされていて、深刻に考えてストレスが溜まるほうが問題かもしれません。

乳がんのしこりは母乳のつまりによるしこりとは大きく異なり、石のように硬い・動かない・痛みがないといった特徴があります。

もし母乳によるしこりとは違うしこりを見つけた時は、乳腺外来や母乳外来を受診してください。乳腺外来を受診する時は、スムーズな検査のためにも授乳中であることを事前に伝えましょう。

副乳とは

哺乳類には複数の乳房がありますが、人間には必要ないため進化の過程で数が減り今のような状態になっています。しかし中には乳房が残ってしまうケースがあり、これを副乳と呼びます。

普段は目立ちませんが、乳腺が通っているため産後や授乳中は母乳が副乳に溜まって痛みやしこりが出来ることがあります。副乳には出口がなく中の母乳を排出することが出来ないので、冷やす程度のケアにとどまります。もし痛みが強い時は病院を受診してください。

しこり対策、予防は?

しこり対策、予防は?

なるべくならしこりを見つけた時すぐに対策を取れるようにしたいもの。そこで対策をいくつかご紹介します。

症状にあったマッサージをする

症状にあったマッサージをする

母乳が溜まっているしこりは、マッサージをすると詰まりが取れてしこりも無くなります。

マッサージのやり方はたくさん紹介されていますが、自分では痛くてきちんとマッサージできなかったり、力加減を間違えてしまうこともありますので、出来れば一度、産婦人科や母乳外来などで専門家にマッサージをしてもらいましょう。

そうすればマッサージと一緒に生活習慣の指導など、様々な面からしこりをなくすためのアドバイスがもらえます。

とにかく赤ちゃんに母乳を飲んでもらう

とにかく赤ちゃんに母乳を飲んでもらう

赤ちゃんの飲む量と母乳量がマッチすればしこりも自然と無くなります。たくさん飲んでもらうことでしこり改善できます。

授乳時の赤ちゃんの姿勢を変える

授乳時の赤ちゃんの姿勢を変える

赤ちゃんがいつも同じ姿勢で母乳を飲んでいると、乳首や乳房にかかる圧力が偏って飲み残しが出やすくなります。いつも同じ場所にしこりが出来る方は、赤ちゃんの授乳姿勢を変えてみましょう。

赤ちゃんの姿勢は横抱きだけでなく縦抱きやフットボール抱きなど様々で、その姿勢ごとにかかる圧力が変わるのでどの乳腺からも満遍なく母乳を飲むことが出来ます。

授乳後の搾乳

授乳後の搾乳

しこりは母乳の飲み残しが溜まって起きますから、授乳が終わったらしっかり搾乳をして乳房を空にしておきましょう。

空になればきちんとそれ以上の母乳が作られて補充されますので、母乳が少ない方も安心してください。ただ反対に、母乳量が多い方や卒乳した方は最後まで搾乳してしまうと余計に増えてしまう恐れがありますので、乳腺を刺激せず乳房を空にしないような搾乳方法を取るべきでしょう。

乳房を冷やす

保冷剤

乳房にしこりが出来て熱を持ってしまった時は、冷やすのが一番です。しかし氷などで急激に冷やすのは体に良くありませんから、ゆっくり時間をかけて保冷剤や氷のうなどで冷やすのがおススメです。

できるだけ体を休ませる工夫を

できるだけ体を休ませる工夫を

産後は体力や免疫力が低下しており、また授乳でお母さんが摂取したエネルギーをドンドン赤ちゃんに渡してしまうため、風邪を引きやすくなったり、すぐ疲れやすい状態です。

疲れが溜まると血行が鈍るため、乳房の不要な母乳などもドンドン溜まって、しこりが出来やすくなります。ちょっと疲れると、すぐに母乳量が減少したり乳房に痛みを感じた経験を持つ方も多いでしょう。

そうでなくとも夜中の授乳等による睡眠不足で疲れを感じますから、これ以上疲労して授乳に悪影響が出ないためにも、休める時はしっかり休みましょう。赤ちゃんが寝たからと家事を頑張るのではなく、隣に横になってリラックスする時間も必要です。

早めに病院に相談を

早めに病院に相談を

お母さんは赤ちゃんの世話に追われて、自分のことはつい後回しになってしまいます。おっぱいが痛いと思っても、赤ちゃんを連れて病院にいく大変さを考えると、セルフケアで大丈夫かも、と決め付けてしまう方もいらっしゃるでしょう。

しかし、母乳には栄養がたくさん含まれていますから、細菌に感染すれば爆発的に増殖して症状があっという間に進行してしまいます。

後でと延ばし延ばしにすると、母乳育児を諦めなければならない事態に陥る可能性も出てきますので、早めに病院を受診してください。

まとめ

授乳でできるしこりは、母乳が乳腺内に溜まったものです。原因は様々ですが、そこに細菌感染が起こると炎症を起こして乳腺炎となってしまいます。

乳腺炎や更に悪化した状態になれば母乳育児を諦めなければならない最悪の事態にもなりかねませんから、乳腺炎予防のためにもしこりを見つけた段階で早めに対処する必要があります。母乳育児を続けるためにも予防対策をしっかり行い、もししこりが出来た時は早めに病院で治療を受けましょう。