赤ちゃんは母乳で育てたい、できれば完全母乳を目指して育児をがんばりたいと考えているお母さんは、自分の身体の変化を敏感に感じ取ります。赤ちゃんに与える母乳は、お母さんの血液から作り出されているので、ちょっとした体調の変化が母乳に現れやすいからです。
お母さんが食べるものにより、母乳の味も変わると言われていますから、食べ物や体調が気になって当然と言えるでしょう。
出産後は、さまざまな身体の変化がお母さんの身体に生じますが、その変化のなかでも特に気になるのが授乳中の生理です。授乳と生理にはどんな関係があるのか、など詳しく見ていきましょう。
授乳中は生理が止まる理由とは
母乳で育児をしているお母さんの場合、基本的に授乳中は生理が止まることがほとんどです。これは、授乳していることによりホルモンバランスが変化し、排卵をストップさせるからです。
母乳を与える必要がある赤ちゃんがいることで、お母さんの身体は妊娠より授乳を優先しようとします。出産したことで、自動的に赤ちゃんを育てるモードに身体のスイッチが入るとは、なんとも神秘的な仕組みだと言えます。
ホルモンの作用が関係している
母乳はお母さんの身体から作られるものですが、何もしなくても勝手に生産されるわけではありません。
母乳が作られるためには、赤ちゃんがお母さんの乳頭を加え、刺激する必要があります。赤ちゃんから刺激されることにより、お母さんからの身体では母乳を作るホルモンのプロラクチンが分泌されます。
そしてオキシトシンというホルモンが作用し、作られた母乳が乳頭まで運ばれ、赤ちゃんの身体へと届けられるのです。
授乳により分泌されるプロラクチンやオキシトシンは、子宮を収縮して回復させ、排卵を抑制する作用があります。これにより、授乳をしている限り基本的には生理が再開されることはないのです。
生理再開時期は人それぞれ
赤ちゃんに母乳をあげている間は生理がない、と思っているお母さんも多いですね。しかし、「ない」わけではなく次の妊娠の準備をするよりも、母乳生成を優先する時期なのだと言えます。
ですから、最初からミルク育児の方は母乳育児の方よりも一般的に早く生理が再開されると言われ、中にはまだ子宮の状態が回復していない産後3週間で生理が始まってしまう方も珍しくありません。
また、若いお母さんは子宮の戻りが早いので、比較的生理再開が早いとも言われています。反対に卒乳してしばらく経ってもまだ生理再開しないという遅い方もいますが、どの場合も身体に異常があるわけではないので心配しないようにしましょう。
生理が再開した理由とは
授乳中は、基本的にプロラクチンやオキシトシンといったホルモンの作用により排卵が抑制されるため、生理が再開されることはありません。しかし、最近では授乳中であるにも関わらず生理が再開する方も増える傾向になってきました。
昔は出産してから授乳を終えるまで、生理がストップしているのがほとんどで、出産して1年以上生理が来ないことも多かったといいます。
それではなぜ近年、生理の再開が早まっているのでしょうか。それは、さまざまな原因が関係していることがわかってきています。何が生理の再開を早めているのか、詳しく見ていきましょう。
質の良い食事と回復力
昔は、授乳中は生理がこないことがほとんどでしたが、最近では授乳中でも条件が揃えば生理が再開されることが多くなってきました。それは、昔に比べると質の良い栄養を摂ることができ、安定した環境で体力の回復がしやすくなっていることが関係しています。
産後の生理再開は平均14.6カ月といわれていますが、生後7ヶ月ごろには約7割のお母さんに生理が再開されているため、年々早まってきていると考えられるでしょう。早い人だと、生後2ヶ月くらいから生理が再開されるケースもあります。
早く生理が再開される人としては、体型がややぽっちゃりしていて、ニキビができやすい体質の人が多いようです。たくさんエネルギーを蓄え、体力があり、出産の回復力が早い人ほど、生理は再開しやすいと言えるでしょう。
授乳量の変化の影響
基本的に授乳中は、ホルモンの影響により生理がこない仕組みになっています。しかし、授乳量や授乳間隔の変化により、ホルモンバランスが変化し排卵が起きて生理が再開されるというケースもあるのでご紹介しておきましょう。
授乳中に生理が起きないのは、母乳を赤ちゃんに与えることにより分泌される、プロラクチンやオキシトシンといったホルモンが排卵を抑制しているからです。
しかし、授乳量が少なく授乳間隔があいていると、母乳を作り出すためのホルモンが分泌されにくくなるため、排卵を抑制することができなくなってしまうのです。その結果、排卵が起こって生理が引き起こされてしまいます。
遊び飲みが始まる生後4ヶ月前後は、授乳間隔が乱れ、授乳量にもバラつきが出ることが多いため、生理が再開しやすくなります。生理を避けたい、排卵を抑制したいという方は、こまめに一定量を授乳するように心掛ける必要があるでしょう。
授乳の間隔、時間の影響
授乳中は、基本的に生理は再会しませんが、授乳間隔が開いたり、回数や量が減ったりすると、ホルモンバランスが変化し排卵が起きてしまいます。生理中は何かとデリケートになるため、産後しばらくの間は生理をできるだけ起きないようにしたいと考えるお母さんも多いと思います。
では、どれくらいの授乳間隔や回数であれば、生理が起きる可能性は低くなるのでしょうか。
生理を置きにくくさせるためには、授乳により分泌されるホルモンを減少させないようにする必要があります。一定量のホルモンを分泌させるためには、1日に5回以上授乳をしておく必要があるでしょう。
また、1回の授乳時間が10分以下と短くなるとホルモンの分泌が少なくなるため、できるだけ授乳時間は10分以上与えるようにしてください。
夜の授乳の減少
1日に5回以上の授乳を行い、1回の授乳時間は10分以上に保っていれば、生理が再開される可能性は低くなります。しかし、条件を満たしているのに生理が再開されるケースがあるので、ひとつ注意点をご紹介しておきましょう。
赤ちゃんの月齢が進むと、夜にまとまった睡眠をとれるようになるため、夜の授乳回数が一気に少なくなってきます。ホルモンの働きは夜に活発になるため、夜の授乳回数が少なくなると必然的にホルモンの分泌量が不足し、排卵を促して生理を再開させてしまうことになります。
夜にまとまった睡眠が取れるようになった赤ちゃんに対しては、夜寝る前にしっかり母乳を与えるようにしましょう。
また、夜中に起きたときにはしっかり母乳を与えるようにすることで、生理の再開を防ぐことができます。添い乳もホルモンの分泌には効果的ですし、赤ちゃんも寝付きやすくなるので実践してみると良いでしょう。
ストレスの影響
生理の再開を遅らせたいと考え、授乳回数やタイミングなどに気を付けていても生理が来てしまうことがあります。
それは、ストレスが関係している恐れがあるでしょう。ストレスは自律神経の働きを弱らせ、ホルモンバランスの分泌を乱れさせてしまうものです。そのため、本来なら母乳を与えることで分泌されるはずのホルモンが少なくなり、排卵を抑制することが難しくなってしまいます。
ストレスにより生理が来てしまった方の場合、またすぐに生理が止まったり、突然再開したりと不規則になることも多くなります。
初めての育児はストレスが溜まりますし、2人目、3人目となると他の子供たちの世話も加わり、目が回るほどの忙しさになるでしょう。できるだけ生理の再開を遅らせたいと考えるなら、ストレスを溜めこまないようにすることが大切です。
乳腺炎などのトラブル
授乳間隔はできるだけ守りたい、でも乳腺炎や乳頭トラブルに見舞われると、母乳を赤ちゃんにあげたくてもあげられない状況が出てきます。乳腺炎になると、高熱が出たりおっぱいが痛くて授乳ができなくなったりするため、母乳を作り出すホルモンの分泌が減少してしまいます。
3~4日授乳をストップしただけでもホルモンバランスは大きく変わってくるため、母乳を再開したから大丈夫と思っていたら生理も来てしまったということもあるのです。
乳腺炎のトラブルは未然に防げるようにし、母乳をストップさせる要素をできるだけ取り除いておくことが大切だと言えるでしょう。
生理が来たらどうする?
1日にたくさん母乳を与えているのなら、基本的に生理は再開されないことがほとんどですが、ホルモンバランスの乱れや、乳腺炎などのトラブルに見舞われると、生理が再開されてしまうこともあります。
授乳中に生理が来たら、もう母乳は出なくなるのでは?と不安になりますが、一度生理が来たからと言って母乳が急にストップするようなことはありません。
ただ、母乳が出る量に変化が出る可能性があり、乳管が詰まって乳腺炎になりやすくなるので、マッサージなどでこまめにメンテナンスする必要があるでしょう。また、授乳中に生理が来ても母乳が出るようなら赤ちゃんに与えても問題はありません。
しかし、赤ちゃんによっては生理が来たことにより微妙に変化した母乳を敏感に察知し、飲まなくなるケースもあるようです。赤ちゃんが母乳を突然飲まなくなる原因は、いろんなことがあるため100%生理が関係しているとは言い切れません。母乳の出方がいつも通りにスムーズになれば、同じように飲み始めることもあるので気にしすぎないようにしましょう。
産後の排卵周期は不規則になりがち
妊娠前から基礎体温計測を習慣にしていた方は、産後も同様にして体調をチェックするでしょう。しかし、産後は育児の疲れに加えて身体を元の状態に戻す真っ最中で様々なホルモンが分泌されている状態ですから、妊娠前のようにはならないと思っておいたほうが良いでしょう。
こんなに沢山ホルモンが分泌されればちょっとした事で分泌バランスが崩れてしまうので、生理があっても無排卵だったり、体調によってはあったりなかったりと生理不順に陥る事があります。
今まで排卵周期が一定だった方にとっては大きな不安の種になるかもしれませんね。しかし身体の回復と共に排卵周期も以前のように変化していくので、少し様子を見てみましょう。
産後の生理痛が酷くなった場合
産後は生理痛や月経前症候群が軽くなったというお母さんが多いですが、その反対に酷くなったという方もいます。赤ちゃんの世話をしないといけないのに、痛くて動けない・数日は横になったままなのは辛いです。
生理痛が酷い理由に妊娠中の骨盤のゆがみが戻らないのが挙げられ、ゆがんだ骨盤の中にある子宮が正常な位置にないのが痛みの原因と言われています。
この場合低用量ピルの服用や骨盤ベルトの矯正で改善できますが、その他に毎月不正出血が続いたり痛みが段々酷くなる時は子宮内膜症や卵管の炎症・胎盤の取り残しなどを疑い、早めに病院を受診して検査をしてもらいましょう。
生理を再開したい場合
赤ちゃんに母乳は与えたいけれど、できれば早めに二人目を授かりたいと考えている夫婦にとって、生理はできるだけ早く再開させたいものです。
生理を再開させるためには、きちんと母体を休めて回復させ、母乳とミルクを混合で与えるのが良いでしょう。身体がしっかり回復していないと、次の妊娠に向けた準備が整いませんから、栄養や休養を取ることが大切になります。また、母乳を頻繁に与えているとホルモンがたくさん分泌され、排卵が起きにくくなってしまいます。
ホルモンの分泌が活発になる夜間を中心に哺乳瓶での授乳に切り替え、生理が再開しやすい状況を整えていきましょう。
ここまでのまとめ
授乳中の生理についてさまざまな情報を幅広くご紹介しました。できるだけ生理は遅らせたいと考えている方もいれば、早く二人目を授かりたいから生理を再開したいと考える方もいます。
生理の再開時期には個人差がありますが、条件が揃えばコントロールできることでもありますので、調整しながら再開の時期を検討していくと良いでしょう。