一日一日成長している赤ちゃんを見るのは、この上ない楽しみです。寝返りできたりお座りできたりするようになると、今度はいつ言葉をしゃべってくれるのか待ち遠しくなってしまうでしょう。実は新生児の頃からすでに赤ちゃんは話す準備を少しずつ始めています。
最初は喉から漏れるような音だったのが、お母さんもなんとなく「しゃべっているのかな?」と分かるような音になっていき、それから「ワンワン」「ブーブー」といった意味のある一語文が出てくるようになります。一語文が出始める目安は1歳前後ですが、それ以前の赤ちゃんが出す音を喃語と呼びます。
喃語は赤ちゃんがコミュニケーションを取ろうとしている大事な発達段階の一つですから、赤ちゃんの刺激となるように関わっていきましょう。どうしたらよいか分からない・喃語が遅くて心配と言うお母さんのために、喃語に関する詳しい情報をご紹介します。
赤ちゃんの喃語とは?
喃語は多音節で出来る言葉の意味のない声のことです。喉・舌・横隔膜など発声に必要な器官が発達するにつれて、次第に出せる音が変わってくるのが特徴です。
また、これまで反射的に泣いたり笑ったりしていた赤ちゃんが、喃語を発することで周りの人が応えてくれるというコミュニケーションを学ぶ機会でもあります。
もちろん赤ちゃんの個人差もありますが、お母さんがどんどん話しかければ赤ちゃんの刺激になって喃語も増えていくでしょう。
喃語とクーイングの違い
中には「うちの子生まれたばかりなのにもう喃語をしゃべる」と言うお母さんもいらっしゃるかもしれません。実はそれは喃語ではなくクーイングといいます。
クーイングと喃語の大きな違いは、クーイングが「あー」「うー」と言った母音のみであるのに対し、喃語は「ぶーぶー」「まんまんまん」など子音が混ざってくる点です。クーイングをする時点では口腔内がまだ狭く子音を出すことが出来ないため、母音ばかりになってしまうと言われています。クーイングは喃語の前段階と思ってよいでしょう。
喃語はいつから始まる?
クーイングの始まりが生後2ヶ月~3ヶ月ですがその後次第に喃語へと移行していき、最も盛んに喃語が出てくるのは生後4ヶ月~8ヶ月と言われています。
最初はクーイングと同じように発しやすい母音が出てくるので、最初のうちはどちらなのか区別がつかないかもしれません。
発声器官の変化
新生児は口の中の大きさに対して舌が大きいので、上手く発音が出来ず母音のみになります。しかし生後1年間は体の成長が著しく、それに伴い口腔内もどんどん変化していきます。
例えば頭囲は生後1年で大きく成長するので、その分口腔内が広がり舌が自由に動くようになって、出せる音の種類が増えるようになります。
また、生後4ヶ月になれば咽頭の位置が大人と同じ位置に下がるので、子音がはっきり聞こえるようになるといった変化も見られます。このような変化が喃語の発達につながっていくのです。
喃語の始まりから終了までの変化
喃語は赤ちゃんの成長に伴ってどんどん変化していきます。最初は同じように聞こえるかもしれませんが、注意して聞いていると少しずつ変化して赤ちゃんの出せる音が増えていくのがわかるでしょう。
専門家によれば約2ヶ月ごとに喃語が変化するとのことなので、実際どのように変わっていくのかを見てみましょう。もちろんこの月齢はあくまでも目安なので、このとおりに赤ちゃんの喃語が出ていないからと焦る必要は全くありません。
生後4ヶ月ごろ
「あー」といった発声しやすい母音が出始める頃です。クーイングから喃語に移行する時期でもあるので、クーイングだと思っていたらいつの間にか喃語が出ていたなんてことも多いです。
もちろんこの時期はまだ喃語が出ない赤ちゃんも多いですから、可愛いクーイングをもう少し長く楽しめる時期と考えて、自然と喃語が出てくるのを待ちましょう。
声遊び期とは
4ヶ月~6ヶ月にかけて咽頭部や口腔が広くなり舌を動かせる範囲が広がったので、様々な音が出せるようになっていきます。この時期を声遊び期と呼び、赤ちゃんが色んな音を出して遊びながらコツを掴んで発声が上手になっていく時期なのです。
ですから、この時期は普通の声以外にも叫んだりうなり声をあげたり唇を震わせたりと様々な音を出しますから、どこか痛いのかとびっくりしてしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。
赤ちゃんが楽しみながら学んでいるので、体調が悪くないことを確認したら少し様子を見ましょう。
生後5ヶ月ごろ
母音だけでなく、子音が混ざってくるようになります。この母音と子音を組み合わせた音を規準喃語と呼び、これから言葉を話す上で最も大事な発声になります。
またちょうどこの頃から離乳食が始まるため、これまでの飲む動きだけだった口や舌・喉などに新しい動きが加わって鍛えられ、これから更に発声できる音が増えていきます。
生後6ヶ月~7ヶ月ごろ
発声できるようになった規準喃語を「ぶーぶー」「だだだ」など繰り返すようになりますが、これを反復喃語と呼びます。
この時期「ママ」「パパ」と話した!と喜ぶ方も多いですが、喃語は意味のない音の連続ですから、残念ながら偶然に音が重なっただけだと思われます。お母さんを指してママと呼べるようになるのは一語文が出始める1歳前後が平均ですから、もう少し待ちましょう。
赤ちゃんが出しやすい子音
赤ちゃんが発声することの多い子音は、マ行から始まりバ行・パ行・ダ行・ハ行があります。
新生児から比べると口腔や喉の筋肉が随分発達してきましたが、それでもまだまだ未熟ですから、まずは力を入れなくても音を出しやすいマ行やバ行が多く出るようになるのです。
実は世界の言語でお母さんを意味する言葉は、ほとんどmから始まります。赤ちゃんの一番身近にいるお母さんを赤ちゃんが一番発しやすい言葉で表すというのは、非常に興味ぶかいですね。
生後8ヶ月ごろ
更に口腔や喉が発達するので、これまで鼻にかかるような発音だったのが明瞭になってきます。反復喃語が更に上手になり、機関銃のように発声する赤ちゃんも出てくるでしょう。
自分の出す音に夢中になってずっと喃語を出し続ける赤ちゃんもいるため、煩わしいと思ってしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。それよりも、後の発語にスムーズにつなげられるチャンスと思って赤ちゃんとたくさんコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。
生後10ヶ月ごろ
この時期になると「ダブダブ」と異なった音を組み合わせて発音する赤ちゃんも出てきます。
この時期10ヶ月健診を行う自治体もありますが、ハイハイや立っちの状態・小さいものをつまめるかといった項目が重要になるので、喃語をどれだけ話すかということはこの健診ではチェックされないことも多いです。
赤ちゃんの喃語が出ない・少ないと悩むお母さんは、健診時に医師や保健婦に相談してみるのも良いでしょう。
喃語の終わり
後1.2ヶ月で1歳の誕生日という頃になると、赤ちゃんは自分の気持ちを伝えようとし始めます。まだ喃語はつづいていますが、その中に混ざって何かを取って欲しい時やお母さんとコミュニケーションをとる時に「あ」「ん」等の音が出るようになります。
喃語は意味のない多音節を指しますから、同じように聞こえたとしても赤ちゃんが何か意図して発した音とは意味が異なってくるのです。こういった音が出てくるようになれば、一語文が出てくるまで後少しです。一語文が出るのは平均1歳前後と言われていますから、待ち遠しいですね。
ジャーゴン(ジャルゴン)って何?
赤ちゃんの言葉の発達は喃語の次は一語文・二語文となっていますが、中にはそうならない赤ちゃんもいます。一語文まで順調に発達してきたと思ったら、今度は日本語でも他の言語でもない言葉を楽しそうにしゃべるようになる赤ちゃんがいますが、これをジャーゴンや宇宙語などと言います。
ジャーゴンは通常失語症に表れる一症状ですが、赤ちゃんの場合は更に練習を続けて出せる音の数を増やそうとしている時に現れると言われています。
ジャーゴンが出ると発達障害ではと心配になってしまいますが、気になる時は1歳時健診・1歳半健診で相談してみてください。
喃語にどうやって接すればいいの?
喃語を話している赤ちゃんがとても楽しそうでも、お母さんにとってはただの音にしか聞こえませんから、どう対処したら良いのか分からない方も多いです。
適当に対応して赤ちゃんの発育に何か影響があったら、と真剣に悩んでしまうお母さんも多いです。しかし、分からないからとお母さんからの働きかけが全くないようだと、赤ちゃんの言葉や理解能力・コミュニケーション能力の発達に影響を与える可能性が出てくるかもしれません。
そこで、赤ちゃんの喃語にどう答えたら良いのかポイントをご紹介します。
お母さんも喃語で返事
難しく考える必要は全くなく、赤ちゃんが楽しそうに喃語で話していたらお母さんも喃語で返事をしてみましょう。赤ちゃんが「ぶーぶー」と言ったら、お母さんも「そうね。ぶーぶーね。」と答えるだけでもよいのです。
ただ、その時にはお母さんはちゃんと聞いているよという意味を込めて赤ちゃんに向き合って言うと、赤ちゃんは自分が声を出せばお母さんとコミュニケーションが出来ることが分かって、更に喃語を増やしていくでしょう。ぜひお父さんにもアドバイスして、家族で赤ちゃんとの会話を楽しみましょう。
家族の言葉遣いをチェック
赤ちゃんの喃語がだんだんはっきりして種類が増えてくるようになると、一語文が出てくるまでもう少しです。
この時期赤ちゃんは喃語しか話せなくても、周りの話している言葉を聴いて様々な言葉を続々とインプットしている真っ最中です。お父さんやお母さんが乱暴な言葉遣いをしていると、今は話せなくても後々影響する可能性が出てきますから、今のうちに言葉遣いをチェックしましょう。
赤ちゃん言葉での話しかけはNG・OK?
喃語を話す赤ちゃんに対して高い声で抑揚をつけるように話すお母さんは多いですが、これをマザリーズといいます。この時期の赤ちゃんが好む話し方で、お母さんだけでなく老若男女問わず自然とこのような話し方になります。
また、赤ちゃん言葉で話す方もいますが、赤ちゃんの言語発達の過程を考えるとこれは避けるべき話し方だといえます。例えば先ほどの赤ちゃんが「ぶーぶー」と言ったら、お母さんも「そうね。ぶーぶーね。」それを赤ちゃん言葉で返すと「そうでちゅね。 ぶーぶでちゅね。」となります。
多くの言葉をインプットしている最中に赤ちゃん言葉が混ざってしまうと、正しい言葉のインプットが遅れてしまう可能性が出てきてしまうのです。今のうちから赤ちゃん言葉を避けるようにしていきましょう。
喃語が多い赤ちゃんはどうしたらいい?
喃語がでないと悩むお母さんにとっては、沢山喃語を話す赤ちゃんをうらやましく思うでしょう。しかし、一日中ノンストップで喃語を話す赤ちゃんを持つお母さんにとっては、それはそれで悩ましいものです。
この月齢の赤ちゃんは、何がよくて何がダメかと言うルールをまだはっきりと理解できないため、静かにして欲しい場所でも構わず喃語を話します。だからと言って様々な場所へ連れて行かないのは、可哀想ですね。静かにして欲しい時はシーッ、ね、と人差し指を口に当てるポーズを見せてお母さん自身静かにすることを繰り返しましょう。
赤ちゃんは真似っこが好きですから、最初はダメでも、次第にこのポーズをした時は静かにすると言うことを学んでいきます。静かな所では静かにというのは社会的ルールですから、今から教えても早くはありません。
喃語が遅い・少ない時はどうしたらいいの?
喃語の発達の目安を上でご紹介しましたが、言葉の発達は個人差が大きいですから、必ずしも赤ちゃん全員がこのようになるわけではありません。
自分の赤ちゃんの喃語が遅れたり少なかったりすると、周りの喃語が多く出る赤ちゃんと比べて心配になってしまいますが、発声に慎重なタイプだったり他の興味に集中している赤ちゃんだと遅くなる可能性があります。気になる方は以下のポイントをチェックしてみてください。
病気の可能性は 滲出性中耳炎
聴覚障害があっても赤ちゃんはクーイングや喃語を発声しますが、自分の発する音が聞こえないため次第に喃語が減ってくると言われています。
聴覚障害の原因は先天性のものと後天性のものに分かれ、先天性は妊娠中の風疹症候群、後天性は中耳炎が原因となっています。特に滲出性中耳炎という内耳に液体が溜まるタイプの中耳炎は音が上手く伝わらず、悪化すれば難聴につながる可能性が高くなります。
滲出性中耳炎は無自覚症状なので判断しづらいのですが、周りの声が聞こえていないような素振りを赤ちゃんが見せる場合は耳鼻科の受診をおススメします。
多くの人と会う機会を作ってみる
昼間はお母さんと二人だけだと、どうしても話すパターンが決まってしまい赤ちゃんの喃語も限られてしまう可能性があります。
赤ちゃんの喃語はテレビではなく人が実際に話しているのを聞いて刺激されるので、おじいちゃん・おばあちゃんに会ったり、公園や買い物など赤ちゃんが様々な人の話しを聞くチャンスを作るのも一つの方法です。
乗り気がしない時は、子育て支援センターで赤ちゃんを遊ばせながら職員と話をするところから始めてみては。
まとめ
喃語は生後4ヶ月ごろから始まる意味を成さない音の連続を指します。意味がない音であっても、お母さんが答えればそのことが刺激となって後の言葉の発達やコミュニケーションに影響を与えますから、ぜひお母さんも赤ちゃんと一緒に楽しみましょう。
喃語を発する時期や音の多い少ないは個人差が大きいですから、それもまた赤ちゃんの性格や個性だと考えてゆっくり待ってあげてください。