赤ちゃんが話せるようになるのは平均で1歳前後ですが、実はその前から赤ちゃんは話す練習を始めています。最初はただの音のように思えますが、これをクーイングと呼んでいて、赤ちゃんが言葉を話す最初の段階であると言われています。
しかし、クーイングとはどんなものなのか、良く分からないお母さんも多いでしょう。そこで、クーイングはいつごろ起こるのか、赤ちゃんが出す他の音との違い、対処法など気になることをご紹介していきます。
クーイングとは
クーイングとは、鳩の鳴き声に似ている赤ちゃんの声を指します。クーイングを知らないお母さんも、独特の可愛らしさのある音を赤ちゃんが出しているのはご存知かもしれませんね。
声を出すためには吐く息をコントロールし、またそのタイミングに合わせて声帯を使う必要が出てきますが、赤ちゃんがこの動作に挑戦して出す音がクーイングなのです。あー、うーといった吐く息に合わせて出す音が聞かれた時は、口腔や喉が発達してきた証拠といえるでしょう。
クーイングが始まる時期は
クーイングが始まるのは、早くて生後1~2ヶ月と言われています。生後3ヶ月になれば、ほとんどの赤ちゃんにクーイングが見られるでしょう。
もちろん赤ちゃんの発育具合には個人差がありますし、早産児や出生時低体重児の赤ちゃんはクーイングの時期が遅くなる可能性があります。
クーイングが始まる月齢なのに赤ちゃんがクーイングをしないと心配かもしれませんが、もうしばらく待ってみましょう。気になる時は健診時などに相談してみましょう。
クーイングが母音だけの意味
ブーやキーなどが子音が混じる喃語と異なり、クーイングは母音だけなのが特徴です。なぜ母音だけなのかというと、それは赤ちゃんの喉の構造に原因があります。
赤ちゃんは母乳やミルクを飲みながら呼吸出来ますが、赤ちゃんの喉頭が大人よりも高い位置にあり、気管と食道が分離されているためです。このように便利な赤ちゃんの喉ですが、この構造だと音が鼻に抜けてしまい、子音がきちんと言えず母音だけとなるのです。
喃語との違い
クーイングという言葉をあまり聴いたことが無くても、喃語なら知っているお母さんも多いのではないでしょうか。喃語は生後4ヶ月頃から見られ、上にも述べたように子音や多音節を発音しはじめるのが特徴です。
最初は「あうあー」など母音をつなげて発しますが、次第に子音が混ざった「きー」「まー」などを発音するようになります。次は子音をつなげるようになり、また「だ」「ぱ」といった濁音や破裂音が出てくるようになります。こうなれば音を出す練習も終わりに近いです。
他の声との違い
クーイングや喃語以外にも赤ちゃんが発する声はいくつかあります。クーイングとその声の区別がつかないかもしれませんが、クーイングはあくまでも吐いた息と一緒に出る音なので、赤ちゃんが感情から出す声とはまったく異なります。
また、生後1ヶ月くらいに出る「あー」「うっく」といった声は、赤ちゃんがご機嫌な時に出るプレジャーサインと言われていますが、声の出し方によってはクーイングと捉えられることもあるようです。
クーイングが聞こえたらどうしたらいいの?
赤ちゃんがクーイングをしていたら、お母さんはどう対処したらよいでしょうか。一人で楽しそうだし邪魔したら泣かれそう。
自分も家事が忙しいし、とそのままにしておきたくなってしまいますが、赤ちゃんにとってはコミュニケーションの一つですから、ぜひ積極的にかかわるようにしていきましょう。どうしたらよいか分からないというお母さんに、ポイントをいくつかご紹介します。
赤ちゃんに聞こえやすいマザリーズ
特に難しく考える必要はなく、赤ちゃんが声を出してたらそのまま返事をしてあげてください。赤ちゃんのクーイングに対して「お話してるの?」「ごきげんだねー」といったお母さんの答えが、赤ちゃんへの大きな刺激となります。
この時自然とお母さんの声が高くなりますが、それをマザリーズと言います。マザリーズは赤ちゃんが一番聞き取りやすい音と言われていて、お母さんは本能でそれが分かっているのです。いつもの声と違うからと恥ずかしがらず、どんどん赤ちゃんに答えていきましょう。
鸚鵡返しでクーイングを促進
赤ちゃんが「うー」と言ったら、お母さんも「うー」と鸚鵡返しに答えてみましょう。鸚鵡返しを繰り返しているうちに、赤ちゃんがお母さんが話す口元をじっと見てきます。
赤ちゃんはそうやって聞こえた音と口の動きを確認して学習し、さらに発音できる音を増やしていくと言われています。赤ちゃんがお母さんの鸚鵡返しに慣れてきたようだったら、ぜひ違う音を出してみてください。赤ちゃんはじっと見て、自分でも真似していくようになるでしょう。
放置したらどうなる?
赤ちゃんがクーイングしてるけど、手が離せないという時もあるでしょう。そういう時は仕方がありませんが、できるだけ声をかけるようにしましょう。
赤ちゃんはクーイングをコミュニケーションの一つと考えていますから、自分がクーイングをしてどこからも返事がないと、誰かに答えてもらおうと赤ちゃんはどんどんクーイングの間隔を短くしていく場合もあります。まったく答えがもらえない赤ちゃんは次第にクーイングで周りにかかわることを減らしてしまいます。
クーイングでしゃっくりが出やすいのはなぜ?
クーイングをしている最中にしゃっくりがでて、それがきっかけで今までご機嫌だったのに急に泣き始めた、なんて赤ちゃんも多いのではないでしょうか。
実際クーイングだけでなく、おっぱいやミルクを飲んでいる最中やオムツが濡れた時など、赤ちゃんは実にしゃっくりをします。しゃっくりは肺を押し上げ呼吸をサポートする横隔膜が痙攣することで起こりますが、体のあちこちが未熟な赤ちゃんはもちろん横隔膜も未熟なため、ちょっとした拍子にしゃっくりが起こりやすいのです。
クーイングは音を出す練習で横隔膜も使いますから、余計にしゃっくりが出やすい状態になっているのです。しゃっくりが出た時は母乳やミルクを飲ませたり、落ち着くまで抱っこしてあげてください。
赤ちゃんの言葉の発達
クーイングから始まって喃語と、赤ちゃんは出せる音をどんどん増やしていきますが、それからお母さんと言葉でコミュニケーションを取れるようになるまで、どのような発達をしていくのでしょうか。
もちろん赤ちゃんによってそのスピードは異なりますが、言葉の発達の過程とその目安をご紹介してきましょう。
喃語変化のポイントは離乳食
赤ちゃんの喉頭の位置が下がってきていても、発音はまだ不明瞭です。しっかり発音するためには口腔や喉の筋肉を鍛える必要がありますが、それには離乳食開始がポイントになります。
離乳食で母乳・ミルクとは違った粘度のあるものや、柔らかい食材をつぶして飲み込むといった動作を行うので、自然と発音に関係する器官が鍛えられるようになります。
喃語の変化 ~生後7ヶ月
生後7ヶ月までの離乳食はまだ喉や舌をしっかり使うものではないので筋肉の発達は弱く、発音も前よりは良くなっていますが、まだまだはっきりしていません。
ただ生後5ヶ月ごろには子音を発音できるようになり、母音だけの時期よりも発する音はどんどん増えていきます。
生後6ヶ月ごろには「まんまんまん」と音をつなげて出せるようになりますが、この時期はマ行の発音が多いため、赤ちゃんが「ママ」と呼んだと勘違いしてしまうお母さんもでてくるのでは。
喃語の変化 ~1歳
離乳食が大人の食事の硬さに近づくにつれ、発音も明瞭になり濁音や最初に口を閉じる破裂音なども発音できるようになります。「パパ」と「ママ」赤ちゃんが最初に呼ぶのはどっち、なんて話が出るのもこの頃でしょう。
また、音を繰り返すこともこれまで以上に上手になっていて、音を区切って発音することも出来るようになります。それから、生後5・6ヶ月を過ぎると声を出す楽しさから奇声を上げる赤ちゃんが出てくるので、お母さんはその声に悩まされるかもしれません。
言葉の変化 ~2歳
1歳前後に「ワンワン」「ブーブー」など、喃語に混ざって意味のある一語文が出てくるようになります。
次第に喃語が減って一語文が増えるようになり、語彙力が増えれば2語文を話始める赤ちゃんも出てきます。もちろん個人差が大きいですから、他の赤ちゃんと比較しないようにしましょう。
クーイングが遅い原因や心配ごと
赤ちゃんからクーイングが出てこないと、何か異常があるのではと心配してしまいますね。ほとんどはマイペースな赤ちゃんでクーイングが遅れているだけです。中には詳しい検査が必要な場合もありますので気になる場合は医師に相談してみると良いでしょう。
クーイングが遅れる赤ちゃん全員に当てはまるわけではありませんが、一度赤ちゃんの様子をチェックしてみましょう。
聴覚障害の可能性はある?ない?
クーイングの仕組みを考えると聴覚とは関係が無いため、聴覚障害がクーイングの遅れの原因であることは考えにくいです。
しかし喃語が出てくると、聴覚障害の赤ちゃんは一語文・二語文にいたるまでの発達が遅れたり、喃語が発達しないと言った状況が見られるようになります。もちろん聴覚に問題なくても喃語を話さない赤ちゃんもいますが、心配な時は耳鼻科で聴覚検査をしてもらうと良いでしょう。
自閉症の可能性はある?ない?
クーイングを言葉と捉えて、言葉が出ない=自閉症ではないかと考え不安になるお母さんも少なくありません。しかし、自閉症の判断は3歳になるまで分からず、クーイングと自閉症の関係は不明ですので、クーイングの遅れは自閉症が原因と決め付けるのは時期尚早です。
自閉症は他にも、強いこだわりや無表情・周りへの関心の無さ・目を合わせない等の症状がありますので、それらをチェックして総合的に判断します。もし気になる時は、クーイング以外のこれらの症状を確認して病院に相談しましょう。
心配な時はどんどん話しかけて
うちの赤ちゃんはクーイングしないな、と心配に思うだけではダメ。音を発するような環境では無いと赤ちゃんが考えているかもしれませんので、赤ちゃんがクーイングをしなくても、お母さんがどんどん赤ちゃんに話しかけましょう。
オムツ替えの時や眠たい時に「すっきりしたねー」「ねむいの」と赤ちゃんに話しかけるだけで、赤ちゃんは自分に答えてくれる人がいる、と分かりますから、そのうちに赤ちゃんもコミュニケーションをとろうとクーイングをするようになるでしょう。
クーイングが始まったら大人の話し方も見直そう
赤ちゃんが楽しく「あー」と言っていたら、お父さんもお母さんもその可愛さについ見とれてしまいますね。しかし、クーイングが始まったと言うことは、どんどん周りを参考にして音を出す練習を始めるということです。
こうなると赤ちゃんは周りの大人の口元をじっと見て真似るようになりますから、お父さんとお母さんは今からきちんとした言葉遣いを始めるべきでしょう。
自覚して気をつけないと、ある日突然赤ちゃんが真似してほしくない言葉をしゃべるなんてことにもなりかねませんから、一度夫婦でどのような話し方をしているか確認すると良いでしょう。
クーイングを記録しよう
クーイングから喃語への移行は思ったよりも早く、クーイングの始まりが生後2・3ヶ月だとすると、喃語の始まりは生後4ヶ月ごろです。生後4ヶ月くらいから気管と食道が分かれている原因であった喉頭の位置が、少しずつ下がってくるようになります。
そうすると母音以外の音をたくさん出せるようになり、赤ちゃんは喃語を発するようになるのです。クーイングする赤ちゃんはとても可愛いですから、思い出に記録に残しておくのも良いですね。あっと言う間にクーイングの時期は終わってしまいますから、チャンスを見逃さずに。
個人差があることを肝に銘じる
赤ちゃんが小さい時はあれが出来るこれが出来ないと、周りの赤ちゃんと比較してしまいがちです。特に話すことに関しては、女の子は早くて男の子は遅いという男女差もありますから、個人差が大きいと重々理解しましょう。
クーイングから始まる言葉の発達目安があっても、クーイングも喃語も出てこない・喃語が少なくすぐ一語文・二語文を話す・話すことが少ないなど赤ちゃんによって非常にさまざまです。
また、兄弟の有無、大家族、核家族など赤ちゃんの周りに人が多くいるかどうかでも、クーイングをする環境が変わってきますから、言葉の発達にやきもきするよりも、赤ちゃんなりの成長を見守りましょう。
ここまでのまとめ
クーイングは、言葉ではなく音を出す練習ですが、赤ちゃんにとっては泣く以外にお母さんとのコミュニケーション方法の一つでもあります。赤ちゃんが声を出し始めたら、答えたり鸚鵡返しをして、赤ちゃんの発達を促すようにしましょう。
もちろんクーイングは個人差がありますから、早くからクーイングしている赤ちゃんもいれば、全くしないという赤ちゃんもいます。どれも赤ちゃんの性格によりますから、あまり周りと比較せず赤ちゃんがこれからも順調に成長できるようにサポートしていきましょう。