妊娠中は、大きくなるお腹に窮屈さを感じたり、腰が痛くなったりと大変な思いをします。出産したら身体も軽くなるし、快適になるだろうと思っている方も多いと思いますが、実は出産後こそ大変な時期となります。
出産は身体にとって大きなダメージを受けるものですし、しばらくの間は安静にしておく必要があるため、元気に動き回ることはできません。また、産後の出血が長引くことに悩み始めるお母さんも増えてくることでしょう。産後の出血は誰にでも起こることではありますが、期間や量などには個人差があります。
妊娠中は、出血に対して敏感になっていたこともあるため、産後の出血が正常かどうか不安になる方もいらっしゃるでしょう。そこで、産後の出血に関するさまざまな情報を詳しくご紹介していきたいと思います。
産後の出血はなぜ起きる?
産後に出血が起きるのは、出産を行うからです。出産を行うと、赤ちゃんと一緒に胎盤や羊水、血液や体液などが出てきますが、一度に全て出尽すわけではありません。
何割かは身体の中に残ってしまうため、時間をかけて身体の外に出していく必要があります。そのため、産後しばらくの間は出血が続くようになるのです。
産後の出血は悪露と呼ばれる
産後に起こる出血は、「悪露(おろ)」と呼ばれます。悪露が出ている期間は、まだ身体が回復していないとみなされるため、出血が止まるまでは基本的に安静が必要です。
悪露が出る期間のことを、産褥期間と言います。産褥期間中は、基本的に横になって安静に過ごす必要がるため、病院を退院した後も自宅でゆっくりしなければなりません。
産後の出血は、入院期間中にある程度落ち着いてはきますが、退院後もしばらくの間は続いていきます。
産後の出血はいつまで続く?
産後の出血がおこる期間には、個人差がありますが、およその目安を知っておくことで安心して産褥期間を過すことができると思いますので、簡単にご紹介しておきましょう。
出血が始まる時期
産後の出血は、分娩した直後からスタートします。基本的に、ほとんどの胎盤や血液などは分娩時に身体の外に出ていきますが、身体の中に一部が残るため、分娩直後から出血が続くようになります。
この時期の悪露は量も多いですし、ハッキリとした赤い色をしているため、ドキッとする方も多いのではないでしょうか。
出血が治まる時期
産後の出血がいつくらいまでに治まるかは、個人差があります。ただ、産褥期間として一般的に平均と言われるのは3週間前後なので、早い方なら産後3週間、遅い方でも産後1ヶ月前後には出血が落ち着いてくるようになるでしょう。
出血の色や量について
産後の出血は、時期によって量や色が全く違います。時期によって、この色の出血があると要注意ということもあるので、時期別に出血の状態を細かくご紹介しておきましょう。
分娩直後の出血の状態
分娩した直後の出血は、量がかなり多く色も鮮やかな赤色をしています。産後の出血が続く期間の中でも、最も量が多くなるため、産褥ショーツでは受け止められないこともしばしばあります。
夜用のナプキンをこまめに取り換えても、漏れが起きてしまうこともあるほど大量ですし、分娩直後は身動きもとれないため、看護師さんに取り換えてもらうこともしばしばあります。
産後1週間までの出血の状態
産後1週間経つまでには、出血の量もだいぶ落ち着いてきます。夜用のナプキンでも充分対処できるくらいの量まで減ってくるでしょう。出血の色は、分娩直後から少しずつ茶色へと変化していきます。これは、血液が酸化することにより変色するからです。
ただ、産後1週間まではまだまだ出血量があるため、ナプキンを交換する時に少し血生臭いニオイがすることがあるでしょう。
産後2週間までの出血の状態
産後2週間経つようになると、さらに出血の量は減ってきます。夜用のナプキンでなくても対処できるくらいになるでしょう。出血の色は、茶色っぽい色から黄色っぽい色へと変化してくるようになります。
全体の出血量が減ることもあるため、産後1週間までに感じた血生臭さは少し和らいでくるようになるでしょう。
産後3週間までの出血の状態
産後3週間経つようになると、出血量はさらに減り、産褥ショーツではなく普通のサニタリーショーツでも過ごせるようになってきます。普通の生理より少ない量になることも多く、早い方だと出血がほとんど確認されなくなることもあるでしょう。
この時期の出血の色は、黄色っぽい色から淡いクリーム色へと変化してきます。血液という感じよりはおりものに近づいてくる感覚です。
産後4週間までの出血の状態
産後4週間経つようになると、出血量はおりものと変わらないくらいまでに減少し、色も淡いクリーム色から透明へと変わってきます。そのため、生理用のナプキンから、おりものシートへと移行する方も多い時期です。
体力も回復してきているので、産褥期間を終了し少しずつ日常生活へと戻る準備を始める方もいらっしゃるでしょう。
出血は身体の回復を表している
産後の出血は、長い期間続きますし久しぶりに生理に似たような状態が続くため、強く不快と感じるようになります。産後はホルモンバランスも急変しやすいため、出血が続くことにイライラしてしまう方もいらっしゃるでしょう。
ただ、産後の出血がどのような状態で進んで行くかで、身体の回復状態を知ることができます。産後の出血は貴重なバロメーターのひとつでもありますので、しっかり観察しておくようにしましょう。
子宮回復のバロメーター
産後の出血は、子宮がどれくらい回復しているかを示すバロメーターでもあります。妊娠すると、子宮はどんどん大きくなり分娩後には風船がしぼむように急速に縮んでいきます。
ただ、一気に元に戻るのではなく、時間をかけて通常の大きさまで戻っていくため、その期間中は出血も続きやすいのです。
出血量が減り、出血の色も落ち着いてくるようになれば、子宮がかなり回復してきていると考えて良いでしょう。
子宮回復=産褥期間の終了
産後の出血は、子宮が今どれくらい回復しているかを知ることができる大切なバロメーターです。出血の量が減り、色もほとんど透明に近い状態になっていれば、ほぼ子宮は通常の状態まで回復してきていると考えられます。
子宮が回復するまでの時間は個人差がありますが、およそ産後3週間~4週間ほどで出血は落ち着いてくるでしょう。産褥期間としても同じくらいの日数を安静に過ごすため、産後の出血が落ち着けば、産褥期間も終了ということになります。
寝る時間が多かった生活を、少しずつ起きている時間を増やしていき、日常生活に身体を慣らしていくことで、産前の体調へと戻していきましょう。
異常か正常かを知りたい
産後の出血は、時期により量や色、ニオイが変化していきます。ただ、自分の出血が正常なのか異常なのかよくわからなくて不安だと感じる方もいらっしゃるでしょう。
基本的に、出血の色は、鮮やかな赤い色から、茶色、黄色、クリーム色、透明へと変化していき、量も減少してニオイも少なくなっていくのが通常です。
しかし、突然鮮やかな赤い色に戻ったり、ニオイがきつく感じられたりするときは、何らかの異常が起きている可能性があると考える必要があります。
血の塊は正常?異常?
産後の出産が続く中で、多くの方をギョッとさせるのが血の塊です。出血の中に混じる血の塊は、体内に残っている組織の一部で、胎盤や剥がれ落ちた子宮内膜などです。分娩直後の出血に混じることが多く、次第に血の塊は減少していきますので、心配する必要はないでしょう。
ただ、腹痛などが伴う時に血の塊が出てきたり、出血が落ち着いてくる産後2週間~3週間くらい経った時期に大きな血の塊が出てきたりしたときは、かかりつけの医師に報告し診察を受けるようにしてください。
痛みが伴うのは、身体の中に残っている組織が充分に出し切れていない可能性が高く、子宮復古不全、晩期出血に発展する可能性があります。そのため、血の塊を安易に軽視しないようにしましょう。
出血のこのニオイは正常?異常?
産後の出血で、ほとんどの方が気になるのがニオイです。特に、分娩直後から1週間くらいまでは出血量が多く、胎盤などの組織が混じることもあるため、血生臭いニオイが発生しやすくなります。
ただ、この時期以外に明らかに異常だと感じるような酸っぱいニオイや鼻をツンとさせる刺激臭などがする場合は、感染症を発症していたり、子宮内にできた傷が膿んでいたりする可能性があります。
血生臭いニオイではなく、異常なニオイを感じたときは、迷わずすぐに先生に相談して診てもらうようにしましょう。
出血が少ないのは正常?異常?
産後の出血量は、分娩後が最も多くそれ以降は徐々に減っていくようになります。ただ、出血量が思ったほど多くない場合や、微量な場合は異常の可能性があると言えるでしょう。
特に気をつけたいのが、分娩直後の出血量が極端に少ない場合です。胎盤や血液などが出てくる出口が、血液が固まって塞がれている可能性があります。そのまま放置していると、不必要な組織や血液が身体の外に排出されず、炎症などを引き起こしてしまうようになるでしょう。
ただ、出産時に何らかの対処で子宮収縮剤を使用した場合、分娩後の出血量は比較的少なくなります。この場合は異常ではありませんので心配する必要はないでしょう。
排尿による痛みは正常?異常?
産後に出血が起きている時期に、排尿すると痛みが伴うことがあります。また、下腹部がシクシクと傷むこともあるでしょう。このような痛みが起きている場合、尿道炎や腎盂炎を引き起こしている可能性があります。
分娩後に導尿したことで細菌に感染してしまった恐れがあるので、ガマンせずすぐに医師に報告し対処してもらうようにしましょう。
熱っぽいのは正常?異常?
産後の出血が起きているときに、熱っぽさを感じたら要注意です。この時期の発熱は産褥熱と言われるもので、子宮内の傷口が細菌で感染し、炎症を引き起こして発熱している可能性があります。
高熱になることが多く、これを放置しておくと感染巣のうが引き起こされ、命の危険に見舞われることもあるので、早めに対処してもらうようにしましょう。
出血期間を短くするためには
産後の出血は、できれば早く終わってほしいと思いますよね。出血が続く期間は子宮の回復と連動しているため、個人差があって当然なのです。しかし、少しでも出血期間を短くする方法はありますので、ご紹介しておきましょう。
とにかく安静にする
産後の出血をより早く終わらせたいなら、とにかく安静に過ごすようにしましょう。安静に過ごすことで子宮の回復は早まり、出血する期間も短くなります。
産後1週間くらい経つと、体力が回復するのが早い方は、簡単な家事なども行えるようになります。しかし、子宮の回復はまだ続いているため、この時期に安静にしていないと後に響いてくるのです。
産後安静に過ごす産褥期間は、最低でも3週間必要だと言われていますから、できるだけ安静にし、家事は周囲の人にサポートしてもらうようにしましょう。
産褥体操を行う
産後の出血をより早く終わらせたいなら、産褥体操を行うようにしましょう。産褥体操は寝ながら行うことができるため、安静にしておかなければならない時期でも安心です。
産褥体操は、脚をグルグル回したりする簡単な体操で、入院中に助産師さんや看護師さんから指導してもらえます。退院後も実践することで、下半身や子宮周辺の血流がスムーズになり、出血も早く終われるようになるでしょう。
まとめ
産後の出血について詳しくご紹介しました。産後の出血は、赤ちゃんを出産した方なら必ず体験することです。しかし、経験がないお母さんにとっては、この出血が正常なのか、異常なのか不安になります。
産後の出血についての知識をあらかじめ深めておくことで、産後不用意に不安になる必要もありませんから、ストレスを溜めずに済みます。産後は育児に追われ気持ちに余裕がなくなることが多いので、知ることで、産後も安心して過ごせるでしょう。
産後の出血が落ち着けば、身体も回復してきているのでより赤ちゃんとの生活を楽しむことができますよ。それまでは、安静に過ごして身体をしっかり休めるようにしてください。