妊娠中は、産まれてくる赤ちゃんのことが楽しみで、あれこれ情報収集してワクワクした気分で待ちますよね。しかし、出産すると生活は一変し、赤ちゃんとの生活を楽しむ余裕すらなくなることがほとんどです。
特に、産後1ヶ月の間はあらゆることが目まぐるしく進んで行くため、身体も気持ちも追いつかないことが多いのではないでしょうか。しかし、だからと言って育児に家事にとがんばり過ぎてはいけません。基本的に産後1ヶ月は安静にする必要があるため、ゆっくり過ごすようにしなければならないからです。
産後1ヶ月の過ごし方で、その後の体調も大きく変わってきてしまいますので大切な時期であることをしっかり理解しておくようにしましょう。そこで、産後1ヶ月の過ごし方について、詳しくご紹介していきたいと思います。
産後1ヶ月は産褥期
産後1ヶ月の間は、「産褥期(さんじょくき)」と言い、安静に過ごさなければなりません。出産により傷つきダメージをおった身体を癒すことと、育児の生活リズムに馴染むために必要だからです。
この時期に無理をしてしまうと、傷の治りが遅くなり常にどこかに不具合があるまま産後の時期を過すことになってしまうでしょう。だからこそ、産後1ヶ月の過ごし方はとても重要になるのです。
産後1ヶ月の過ごし方
産後1ヶ月の間は産褥期と呼ばれ安静に過ごす必要があると言われていますが、具体的にどのように過ごす必要があるのでしょうか。基本的な過ごし方について、ご紹介しておきましょう。
1日中できるだけ横になっていること
産後1ヶ月の過ごし方として、まず基本としていただきたいのが「1日の大半を寝て過ごす」ということです。産後に病院で入院していたように、トイレやシャワー、食事、赤ちゃんのお世話以外は寝ていることが、「安静にする」ということになります。
退院して家に戻ったとしても、産後1ヶ月の間は入院時と同じ生活を心掛けるようにしましょう。
無理をしないようにしよう
産後1ヶ月の過ごし方で、次に心掛けて頂きたいのが「無理をしない」ということです。無理をするということは、家事をしたり、上の子の送り迎えをしたり、外に出かけたりするということです。
産後の身体は疲れ切った状態ですし、出産により身体の中にたくさんの傷も残っているため、無理をすることで傷口が開いたり、治りが遅くなったりしてしまいます。
寝られるときに寝よう
産後1ヶ月の間は、赤ちゃんのお世話に振り回されることになります。赤ちゃんは何時にミルクを飲んで何時に寝るというような規則正しい生活はまだできないため、短い時間ですぐにお母さんを求めるでしょう。自動的にお母さんは十分に睡眠時間を確保できなくなり、1時間おきや2時間おきに起こされることになります。
そのため、赤ちゃんが寝ている時は自分も一緒に寝るようにし、できるだけ睡眠時間を確保できるようにしましょう。
目をできるだけ使わないように
産後1ヶ月の間は、できるだけ目を使わないようにしてください。なぜなら、目を使うことにより身体がより疲れやすくなってしまうからです。新聞や本などの細かい字や、針仕事も行わないようにしましょう。
また、テレビやスマートフォン、パソコンなどを見ると、ブルーライトの光で更に目が疲れやすくなってしまいますので、必要最小限に抑えるようにしてください。
帝王切開された方が気をつけたいこと
様々な方法で出産しても、産後はみな同じような経過をたどるように見えます。しかし、実際は出産方法によって気をつけなければならない事がいくつかあります。特に、帝王切開で出産された方は手術したのと同じことですから、入院日数や安静にする時期が普通分娩よりも長くなります。
また、傷口がふさがるには個人差がありますが数ヶ月かかると言われていますので、産後1ヶ月は出産の疲れに加えて傷口の痛みに悩まされるお母さんも少なくありません。
ですから帝王切開で出産された方は、産後1ヶ月を普通分娩で出産された方よりもゆっくりのペースで過ごすように心がけてください。痛みが強くて辛い時は、我慢せず病院を受診して処置をしてもらってください。
安静に過ごす理由
産後1ヶ月の過ごし方は、安静にしておくことが基本です。では、なぜこうも安静に過ごす必要があるのでしょうか。産後の回復が早い方の場合、じっとしていることが耐えられなくなることもあります。
しかし、たとえ気持ちが元気だと感じていても、産後1ヶ月の間は安静にしておく必要があります。なぜなら、出産により身体には多くのダメージが残っているからです。
悪露が続く
出産すると、しばらくの間は「悪露(おろ)」と呼ばれる出血が続くようになります。悪露は出産時に出しきれなかった胎盤などの組織や、血液のことです。悪露は産後数週間~1ヶ月ほど続くと言われており、子宮回復の目安となっています。
悪露が続いている間は、子宮がまだ縮んでいる途中の段階で、さまざまな組織も回復していないということです。産後に無理をして動き回ると、悪露の量が増え長引く傾向があります。
産後早く活動したいと思っている方も、最低でも悪露が出ている間は安静に過ごすようにしましょう。
骨盤が開く
出産すると、赤ちゃんが通過するために骨盤は大きく開きます。最大限に開いた骨盤は、出産後に閉じていきますがそれには時間が必要です。開いた骨盤は関節がユルユルの状態で不安定になっています。腰や恥骨に痛みを感じる方もいらっしゃるでしょう。
産後1ヶ月の間は特に骨盤は不安定な状態のため、この時期に無理をして動くことで骨盤が歪んだり不安定さが増して痛みが伴ったりすることになります。そのため、安静に過ごす必要があるのです。
内臓が下がる
産後1ヶ月の間安静にする必要があるのは、内臓下垂が起きるからです。内臓下垂とは、その名の通り身体の中にある内臓がどんどん下がってくる現象のことを言います。
妊娠すると、子宮が大きくなるため周辺の胃や膀胱などは圧迫され隅へと追いやられます。しかし、出産すると子宮は縮み元の大きさへと戻っていくため、圧迫されていた臓器は元の位置に戻ろうとするのです。
ただ、多くの臓器は骨盤底筋により支えられているため、骨盤が不安定な時期は臓器がいつもより下へと落ち込みやすくなります。また、無理をして起きている時間が長いと、重力の後押しもあってさらに内臓は下がりやすくなるでしょう。
出産により大きく開いた骨盤の底に内臓が下がってはまってしまうと、骨盤はそれ以上閉まることができなくなるため、開いたままの状態で固定されるようになります。すると、お尻や腰回りが大きくなるだけでなく骨盤底に負担がかかり子宮の病気や尿漏れなど、トラブルが起きやすくなってしまうのです。
ホルモンが不安定になる
産後1ヶ月の間は、睡眠や骨盤だけでなくホルモンバランスも不安定になります。なぜなら出産により女性ホルモンが大幅に少なくなってしまうからです。妊娠すると赤ちゃんを育てるために女性ホルモンが活発に分泌されますが、出産と同時に一気に減少してしまうため、その落差が身体に大きなダメージとなるのです。
ホルモンバランスが不安定なことから、体温を調整できなかったり、イライラしたりすることが増えてきますので、産後の回復にも影響してしまいます。無理をするとさらにホルモンバランスは不安定になるため、産後はできるだけ安静に過ごすようにしましょう。
安静に過ごさないとどうなるのか
産後1ヶ月の間は、基本的に寝たままの状態ですごし安静にする必要があります。しかし、産後の体調は思ったほど悪くないし、大丈夫だろうと安易に動いてしまう方もいらっしゃいます。
この時期に活発に動くことは、身体にどのような影響を与えてしまうのでしょうか。
身体の不具合が続きやすい
産後1ヶ月の安静期間に活発に動いてしまうと、さまざまな身体の不具合が続きやすくなります。腰痛や恥骨痛が改善しなかったり、悪露が出続けたり、尿漏れが続いたり、貧血が改善しなかったりするようになります。
これらは、骨盤が開いたままの状態や、子宮が回復していない時期に動くことで引き起こされます。気持ちは回復していても身体の機能としてはまだまだ回復途中ですので、過信して動きすぎないようにしましょう。
産後鬱やストレスが溜まりやすくなる
産後1ヶ月の間に活発に動いてしまうということは、家事も育児も何とか頑張ろうとしてしまうということです。そのままの状態で突っ走ってしまうと、個人差がありますが産後鬱になる可能性が上がります。
完璧主義者の方に多くみられるもので、産後に育児や家事をうまくできないことがストレスとなり、鬱へと進行してしまうのです。全て1人で抱えてやろうとしてしまうと、このような状態に陥りやすいので、家族や地域の支えを受けて孤独にならないように気をつけましょう。
[噂]将来更年期障害になりやすい?
産後1ヶ月の間に活発に動いてしまうと、その時大丈夫でも将来更年期障害になる可能性が高くなると言われています。
子宮が回復していない時期に活動することで、子宮に負担がかかってしまうことと、骨盤が開いた状態で動くことで子宮が骨盤の中に入り込み、他の臓器に圧迫された状態で骨盤が安定してしまうことが関係しているのではないかと考えられます。
子宮の位置が良くない状態で骨盤が安定すると、血液循環が悪くなるため、その蓄積が閉経後の更年期障害に影響してしまう可能性があると言うことです。
しかし、産後の生活が更年期障害につながる明確な根拠はありませんが、健康な状態に保つためにも、産後1ヶ月の間はできるだけ安静に過ごすようにしましょう。
産後を快適に過ごすために
産後1ヶ月の期間は、身体を休めるために非常に重要な時間となります。さまざまな環境や条件で「ゆっくりなんてしていられない!」という方もいらっしゃるでしょうが、今後の身体の為にも産後1ヶ月は最低でもゆっくり過ごすようにしましょう。ただ、ゆっくり過ごすためにはさまざまな準備も必要ですので、ご紹介しておきます。
家族の役割分担を決めよう
里帰り出産をする方は、身の回りのお世話を全部してもらうことができるため、できる限り甘えるようにしましょう。里帰りができなかったり、親のサポートを受けられなかったりする方は、夫と役割分担を決めるようにしてください。
全てのことを夫1人にやってもらうことは不可能に近いので、洗濯や買い物だけを頼んだりするようにしましょう。食事に関してもレトルトや宅配サービスを頼み、できるだけ調理しなくても済むようにすると気持ちが楽になります。
また、地域のファミリーサポートを頼むことで、家事や育児を手伝ってもらうことも必要です。産前から地域にどんなサービスがあるのかしっかり調べておくと良いでしょう。
産褥期の大切さを知ってもらおう
産後1ヶ月の間、しっかり安静に過ごすためには家族に産褥期の大切さを理解してもらうことも必要です。慣れない家事を手伝い、妻は寝ているままだと思っていると、夫や家族にもストレスが溜まってしまうからです。
産褥期間を安静に過ごすことができれば、その後の回復も早まりますし結果的に家族の負担を軽減することができるようになります。産前から産褥期間について話し合い、しっかりと理解してもらっておくことで安心して過ごすことができるでしょう。
安静以外どうすればいいの?
産後1ヶ月の期間は、安静に過ごす必要があるため、家事をしたり外出したりすることはできません。また、目を使うこともよくないため、本を読んだりスマートフォンをいじったりすることも最低限になります。そうなると、1ヶ月何もできないから暇に感じるのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際は赤ちゃんの育児に追われることが多くなります。産後は1時間~2時間おきに泣いたり、おっぱいを飲ませたりする必要がありますし、少しの時間ができたらお母さんも眠る必要があるため、とても暇には感じないことでしょう。
もし、手のかからない赤ちゃんであっても、その寝顔を見ているだけでも時間はあっという間に過ぎてしまいます。少し暇だと感じる時があれば、赤ちゃんの写真を取ったり、成長記録を書いたりすると良いでしょう。
赤ちゃんとお母さんの1ヶ月健診とは?
産後1ヶ月に近くなると、体力がかなり回復してきてもう普段どおりの生活に戻っていいかな、と考えるお母さんもいらっしゃるでしょう。それでもやはり完全に床上げをするのは、1ヶ月健診を待ってからがおススメです。
1ヶ月健診は赤ちゃんの成長振りを確認するものと思いがちですが、産後1ヶ月のお母さんもしっかり検査を行い、異常がないかを確認します。お母さんの健診内容は、尿検査・内診・血圧検査・血液検査・問診などがありますが、あっという間に終わってしまいますので、何か気になることがある時は前もってメモしておくと質問しやすくなります。
ただ、普段どおりの生活に戻ってよいと言われても、無理をすれば逆戻りしてしまう可能性もありますので、疲れたと思った時は横になるなど、しばらくは様子を見ながら生活していきましょう。
お宮参りはどうする
産後1ヶ月安静に過ごす頃には、お宮参りの話しが上がってくるはずです。お宮参りは生後1ヶ月を過ぎた赤ちゃんと一緒に地元の神社にお参りする儀式のことです。
赤ちゃんにとってもお母さんにとっても初めての外出となりますが、まだ本調子ではない時期に外出することも多いため、あまり無理をしないようにしましょう。生後100日までにお参りを済ませておけば良いので、硬く考えず身体の調子や天候に配慮して良い日を決めるようにしてください。
まとめ
産後1ヶ月の過ごし方について詳しくご紹介しました。産後の過ごし方でその後の身体の調子は大きく変わってきます。気持ちは大丈夫と思っていても、身体は大きなダメージを受けていますので、しっかり安静に過ごすようにしましょう。
産後1ヶ月を快適に過ごすためには、周囲のサポートや理解が必要です。産前から準備をしておくことが大切ですので、家族としっかり話し合っておいてくださいね。