産後の尿漏れについて知っておきたいこと

産後の尿漏れで知っておきたいこと  原因、頻度は?期間は?改善方法は? 産後お母さん

妊娠中はお腹が重いと感じて身動きが取れなかったり、トイレが近かったりと不自由な思いをした方も多いと思います。しかし、出産すれば全て元通りに戻るというわけではありません。出産直後は、育児だけでなくさまざまなトラブルに見舞われやすい時期です。なかなか身体が本調子に戻らないため、焦る気持ちが募ったり不安を感じたりする方も多いのではないでしょうか。

産後に起きる身体の悩みとして、多くのお母さんが経験するのが「尿漏れ」です。尿漏れなんて自分には無関係のことだと思っていたのに、産後に頻繁に起きてショックを受けてしまう方もいらっしゃるでしょう。

産後の尿漏れはなぜ起きてしまうのか、原因を知り対策をきちんと取ることで解決していくことができますので、詳しくご紹介していきましょう。

尿漏れは産前から?

尿漏れは産前から?

産後に尿漏れを経験した方の中には、産前から尿漏れに悩んでいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、妊娠中は子宮が大きくなることにより尿漏れが起きやすい状態が続くため、産前から尿漏れを気にしていた方は多いのです。

妊娠中期~後期にかけて、どんどん大きくなる子宮に膀胱が圧迫されるようになり、窮屈な状態に追いやられた膀胱には、あまりたくさんの尿をためることができなくなります。そのため、少しの量でも尿意を感じやすくなるため、頻尿に陥りやすくなるのです。

また、子宮から圧力を受けていることで、ちょっとした衝撃でも膀胱内の尿が漏れ出やすいため、妊娠中から尿漏れになってしまうこともあります。

産後に尿漏れが起きる原因とは?

産後に尿漏れが起きるのは、妊娠や出産により骨盤が大きく開いてしまうことが原因です。子宮や膀胱などは、骨盤底に支えられているため、骨盤が大きく開くことで、これらを支えきれなくなってしまいます。

骨盤底とは

骨盤底筋

骨盤底とは、骨盤の底にあたる部分のことで筋肉などの繊維で形成されています。この骨盤底は、子宮の底について子宮や膀胱などの内臓を一手に引き受けて支えているのです。

妊娠する前の状態では、骨盤底は丈夫でギュッとしまっているので、しっかりと内臓を支えることができますし、多少の衝撃が影響することもありません。

しかし、妊娠により子宮が大きくなり骨盤が開いてくるようになると、骨盤底が不安定になり内臓を支える力が弱ってくるようになります。そのため、妊娠時から尿漏れを経験してしまう方がいらっしゃるのです。

出産すると、妊娠時よりはるかに骨盤が大きく開くため、骨盤底の力はかなり弱くなってしまいます。そのため、内臓を支えることができず、少しの衝撃でも影響を受けて尿漏れを引き起こしてしまうのです。

尿漏れ体験者の増加について

尿漏れ体験者の増加について

産後に尿漏れを経験するのは、珍しいことではありません。ただ、昔に比べると尿漏れを経験する方は増えてきていると言われています。これは、妊娠する前から骨盤底が弱く、妊娠や出産により大きくダメージを受けてしまうことが影響していると考えられています。

昔と現代を比べると、運動する時間は圧倒的に短くなっていますし、交通網が便利に整っているため歩く距離も短めです。また、階段などを使うこともなくなり、エレベーターやエスカレーターを使うことが当たり前になっているでしょう。

そのため、現代人は昔の人に比べるとはるかに筋力が弱くなっています。骨盤底も筋肉などの組織から成り立っているため、筋力が足りていないということは骨盤底が弱いということでもあり、尿漏れしやすい条件がそろっているということです。

便利な生活の中に身をゆだねていると、産後の尿漏れが長引きやすくなってしまいますので、注意が必要になるでしょう。

尿漏れの頻度はどれくらい?

尿漏れの頻度について

産後に尿漏れが起きるのは、恥ずかしさを感じることでもありますし、なかなか周囲や医師に相談することができない方がほとんどです。

では、実際に産後の尿漏れはどれくらいの頻度で起きてしまうものなのでしょうか。産後のお母さんのほとんどが、「1日に1回~2回ほど尿漏れが起きてしまうことがある」「トイレにいけない状況になって、くしゃみをしたり重い物を持ち上げたりしたら尿漏れしてしまった」と答えることがほとんどです。

つまり、毎回尿意を感じる度に尿漏れが起きているということではありません。尿漏れの量に関しても、ちょっと出てしまう程度のことなので下半身の大部分を濡らしてしまうことは少ないでしょう。

ただ、骨盤底が非常に弱まっていてコントロールが効かなくなってしまった方の中には、自分で尿意をコントロールできずにたくさんの尿漏れをしてしまうこともあります。

産後、しばらくすると徐々に落ち着いてきますが、同じような状況が長引いているようなら、一度きちんと診察を受けて対処するようにしましょう。

尿漏れが起きる期間は?いつまで?

産後に尿漏れが起きるのは、妊娠や出産により骨盤が大きく開き、骨盤底が弱くなってしまうことが原因です。では、実際に尿漏れはどれくらいの期間起きてしまうものなのでしょうか。

子宮の大きさが戻るまで

子宮の大きさが戻るまで

産後の尿漏れが起きる期間は、子宮の大きさが元に戻るまでの期間に影響します。膀胱を圧迫していた子宮は、妊娠してから出産するまで大きく広がり、出産と同時に一気にしぼんでいきます。

ただ、出産するとすぐに元の子宮の大きさに戻るわけではなく、時間をかけて戻っていくため、尿漏れが治まるのにも時間が必要になってくるのです。

子宮の大きさがある程度元の大きさに戻ってくるのは、産後3週間~1ヶ月位だと言われています。この時期は産褥期間と言って安静にしておく必要があるため、しっかり身体を休めることにより、子宮の大きさが戻るのも早くなり、尿漏れが起きにくくなるのも早いでしょう。

骨盤が安定するまで

骨盤が安定するまで

産後の尿漏れが起きる期間は、骨盤が安定するまで続くこともあります。出産により開いた骨盤が元通りに安定するまでには、産後半年ほどの時間が必要です。そのため、尿漏れする可能性は産後半年まで続くこともあると知っておきましょう。

骨盤の歪みをきちんと調整しておけば、尿漏れの心配もなくなりますし、腰痛や生理痛などを改善することもできますので、産褥期間が終わったら骨盤調整を行うようにしましょう。

筋力が強くなるまで

骨盤底筋02

産後の尿漏れが起きる期間は、骨盤が安定する頃には治まっていることがほとんどです。しかし産後1年を過ぎてもなかなか尿漏れが改善しない場合があります。それは、骨盤底の筋力が弱ったままの状態が続いているからです。

骨盤底の筋力が弱いままだと、子宮や膀胱などの内臓を充分に支えることができませんし、少しの衝撃にも影響されてしまいます。妊娠や出産により弱った骨盤底は、自然と元に戻っていくこともできますが、極端な運動不足が続くと弱ったままが持続されてしまいますので、産後ずっと安静にし続けるようなことはしないようにしましょう。

尿漏れが起きやすい人とは?

産後に尿漏れが起きてしまうのは、骨盤底が弱くなってしまうことが影響しています。ただ、産後に尿漏れが起きやすいタイプの人もいらっしゃいますので、ご紹介しておきましょう。

痩せている人

痩せている人

産前から身体が華奢で痩せている人の場合、筋力が乏しいことが多いため産後に尿漏れが起きる可能性が高くなります。運動することがほとんどなく、歩いたり階段をのぼったりする習慣もない場合、かなり筋力が弱い恐れがあるでしょう。

太っている人

太っている人

産前から太っていたり、妊娠を機に急に太りはじめたりした方は、産後に尿漏れが起きやすくなります。赤ちゃんが大きくなるだけでも膀胱を圧迫し骨盤底に負担をかけてしまいますが、太ることでそこに重みがさらにプラスされ、より負担が大きくなってしまうからです。

妊娠中は体重をコントロールすることが大切ですので、太り過ぎには十分注意するようにしましょう。

お産が長引いた人

お産が長引いた人

出産する時にお産が長引いた人は、産後に尿漏れが起きやすくなります。特に、子宮口が開いてから赤ちゃんが産まれるまでの時間が、5時間以上かかった場合、尿漏れが起きる可能性はさらに高くなるでしょう。

長くいきみ続けることにより、骨盤底に大きな負担がかかり産後にほとんど力が入らなくなってしまいます。難産だった方ほど尿漏れは起きやすいですが、しばらくすれば回復してくるのでその時まで安静に過ごすようにしましょう。

赤ちゃんが大きかった人

赤ちゃんが大きかった人

出産した赤ちゃんの身体が大きかった場合も、産後に尿漏れが起きやすくなります。赤ちゃんの平均体重は3000gほどですが、3500g以上の大きな赤ちゃんを出産した場合、骨盤底への負担も大きくなるため、尿漏れが起きやすくなってしまうのです。

大きめの赤ちゃんに育っている場合は、産後の尿漏れ対策も考えておくべきだと言えるでしょう。

尿漏れを改善するには?

産後の尿漏れを改善するには、どのように対処すればよいのでしょうか。産後は産褥期を経て通常の生活へと戻っていきますが、時期によって行うべきことは異なりますので、ご紹介しておきましょう。

産褥期のケア

産褥期のケア

産後の尿漏れを改善する方法として、産後3週間の産褥期はできるだけ安静にして過ごすようにしましょう。この時期に無理をしてしまうと、開いたままの骨盤にさまざまな内臓の重みがダイレクトにのしかかり、さらに骨盤底を弱めてしまうからです。

気持ちの面では問題のないように感じてしまいますが、尿漏れが長引く原因にもなりますので、産褥期はできるだけ安静に過ごし身体の回復に努めるようにしましょう。

産褥期後のケア、トレーニング

産褥期後のケア

産褥期が過ぎたら、少しずつ日常生活への復帰を果たすために、リハビリを行っていけるようになります。最初は軽いストレッチから始め、少しずつ筋力を取り戻していきましょう。

一定時間ウォーキング

一定時間ウォーキング

産褥期後は、できるだけ身体を動かし筋力を回復させていきましょう。ウォーキングなら身体の負担も少ないですし、全身の筋肉を刺激することができるので、骨盤底を早く回復させることができます。

階段を活用しょう

階段を活用しょう

産褥期後は、できるだけ階段をのぼったり降りたりして股関節や骨盤周辺の筋肉を刺激するようにしてください。脚を大きく開くため、骨盤底を鍛えることにも繋がります。呼吸を整えながら、無理のない範囲で階段を使うようにしましょう。

骨盤の開きを直そう

骨盤の開きを直そう

産褥期後は、骨盤の歪みを直して安定させるためにもコルセットやベルトを活用するようにしてください。不安定な骨盤が安定しやすくなりますし、歪んだ骨盤も整えやすくなります。

ただ、産褥期に強いコルセットをまいてしまうと尿漏れを悪化させてしまいますので、必ず産褥期後に使用するようにしてください。

筋力トレーニング、体操を行おう

筋力トレーニングを行おう

産褥期後は、少しずつ筋力トレーニングを行い、弱った骨盤底を回復させていきましょう。骨盤底を意識してキュッと肛門を閉じるように力を入れたり弱めたりするようにしてください。姿勢を選ばないので、寝たままで行ったり、立ったり座ったりしていつでも行うことができます。

腰やお腹に力が入ってしまうと、骨盤底に効いてこないのでトレーニング前に会陰を触り意識しやすくさせるのもひとつのポイントです。

膀胱を膨らませよう

膀胱を膨らませよう

尿意を感じたら少し我慢をすることで、膀胱の許容量を増やすことができますし、骨盤底を鍛えることができます。妊娠中は、膀胱が圧迫されるため、少しの尿意でもトイレに行き腹筋の力を使って排尿することが多くありましたが、この癖が産後も続くと膀胱の許容量がいつまでたっても少なく、骨盤底も鍛えることはできなくなります。

尿漏れが心配な場合はショーツにシートを敷き、強い尿意を感じてからトイレに行くようにしましょう。

尿漏れが中々治らない時は

尿漏れが中々治らない時は

産後の尿漏れは数ヶ月で改善することがほとんどですが、中には1年過ぎても尿漏れに悩まされ続けている方も少なくありません。「このままなのかしら」と悩むよりは、まずは婦人科や泌尿器科に相談しましょう。

長期に続く産後の尿漏れは、出産による骨盤底筋の緩み以外にも筋力低下や加齢など、いくつかの原因が考えられます。原因を見極め効率的に治すにはやはり病院での治療が一番ですから、恥ずかしがらず受診してください。

また膀胱炎による尿漏れなど病気の原因も考えられますので、尿漏れ以外に自覚症状がある時は泌尿器科に相談しましょう。もし異常がなかったとしても、日常生活の指導や骨盤底筋を鍛える運動法などを教えてくれますので、日々の生活を見直す機会かもしれません。

まとめ

産後の尿漏れについて詳しくご紹介しました。産後の尿漏れは出産をした人ならほとんど経験することです。ただ、尿漏れの期間が長引く場合、骨盤底が弱ったままの状態になっている可能性が高いので、回復に努めるようにしましょう。また、妊娠中に太り過ぎたり産後に安静にしすぎたりすることも、尿漏れの原因になりやすいので見直すようにしてください。

産後すぐの時期は悪露も続くため、尿漏れも頻繁に起きやすくなります。しかし生理現象のひとつとして受け止め、やるべきことをしておけば自然と治まっていくようになります。

今後尿漏れが続かないためにも産後のケアをしっかり行い、成長して行く赤ちゃんと飛んだり跳ねたりして楽しい育児を送ってください。