無事に赤ちゃんを出産してホッと一息したとき、産後の悪露(おろ)にビックリされるお母さんも多いのではないでしょうか。悪露は出産した後に出てくるものですが、初めての出産を経験した方の場合、悪露の多さや色などに戸惑うこともあるでしょう。
悪露って何?私の状態は正常?悪露っていつまで続くの?悪露の量や臭いは?などさまざまな疑問がわいてくることと思います。そこで、産後の悪露について詳しい情報を幅広くご紹介していきましょう。
悪露(おろ)とは?
出産をしたお母さんが経験するのが、産後の悪露です。悪露とは、産後に膣から出てくるものの総称を現しています。悪露には、胎盤、卵膜、子宮内膜、血液、リンパ液、その他の組織などが含まれています。
胎盤の残りが悪露として出てくる
赤ちゃんを出産する時に、胎盤も一緒に排出されますが、全てが一度に出しきれるわけではありません。そのため、産後の悪露として残った胎盤は赤ちゃんを出産した後は必要がなくなるため、キレイに出し切る必要があるのです。
卵膜が悪露として出てくる
卵膜は赤ちゃんを守るためにあったものですが、これも出産後は必要ではなくなります。基本的に悪露として早めに出てくることがほとんどですが、稀に子宮内に残って悪露が落ち着いてきた頃に大量の出血と共に出てくることがあります。
子宮内膜が悪露として出てくる
子宮内膜は赤ちゃんを守るために必要だったものです。赤ちゃんを出産する時に排出されることが多いですが、剥がれ落ちた欠片が残ることがあり、それが悪露として出てきます。
血液やリンパ液が悪露として出てくる
血液やリンパ液は、赤ちゃんと共にで切らなかった部分が悪露として後から出てきます。また、子宮が縮むときや、胎盤が剥がれる時などに周辺の組織を傷つけることがありますが、その時に発生した血液やリンパ液も、悪露として排出される仕組みです。
悪露が出るのはいつからいつまで?
悪露は出産により発生するものですが、具体的にいつからいつまで出ることが多いのでしょうか。
悪露が出始める時期
悪露は、出産直後から始まります。出産によりほとんどの胎盤や血液などは出ていきますが、それでも残留する胎盤や組織、血液などは残ってしまうため、悪露として膣から出てくるようになるのです。
出始めたばかりの悪露は量も多く鮮血なことが多いため、ビックリされるお母さんも多いでしょう。
悪露が終わる時期
悪露が終わる時期には、かなりの個人差があります。平均的な期間としては、産後3週間ごろまでにはほとんど治まり、産後1ヶ月を過ぎる頃には悪露は出なくなっていることが多いでしょう。
ただ、悪露が出るペースが遅かったり、何かトラブルがあったりする場合は、産後2ヶ月くらいまで続く場合もあります。
悪露の色や量の変化について
出産後に出てくる悪露ですが、時期によって状態は大きく異なります。出産直後の悪露と、産後3週間の悪露は色も量も違いますので、詳しく見ていきましょう。
産後直後の悪露(悪露が非常に多い)
産後直後の悪露は、出産したばかりということから真っ赤な鮮血であることがほとんどです。量もかなり多く悪露が出る期間の中で最も多くなります。夜用のナプキンを使用しても漏れてしまうこともあるでしょう。
産後直後~1週間の悪露(悪露が多い)
産後直後の悪露は、真っ赤な鮮血で量も多いですが、1週間経つ頃には量も落ち着き夜用のナプキンでも対処できるくらいになります。
色は真っ赤な鮮血から、酸化した茶色っぽい色に変化してくるでしょう。茶色くなるのは血液が酸化しているからで異常ではありません。しかしその代り、血液特有の少し生臭いニオイがすることもあるでしょう。
産後1週間~2週間の悪露(悪露が少なくなる)
産後1週間~2週間経つと、悪露の色は茶色から黄色っぽい色へと変化してくるようになります。黄色っぽい色に変化してくることで、血液特有の生臭いニオイも和らいでくるでしょう。
産後2週間~3週間の悪露(悪露が非常に少なくなる)
産後2週間~3週間経つと、悪露の色はさらに薄くなってきます。黄色っぽい色だった悪露は、淡いクリーム色へと変化してくるでしょう。
この頃には量もかなり減ってくるため、普通のサニタリーショーツでも対応できるようになっています。悪露の量が減り色も変化することで、さらにニオイは少なくなってくるでしょう。
産後3週間~4週間の悪露(悪露の終了)
産後3週間~4週間経つと、悪露の色は淡いクリーム色から透明へと変化していきます。量もおりものと変わらない位に減り、ニオイもしません。ここまでくれば、悪露は終了したと言えるでしょう。
妊娠・出産状態で悪露は変わる
帝王切開の場合
出産に用いる方法によって悪露の状態も変化しています。子宮を切開して赤ちゃんを取り出す帝王切開では、悪露が長引くといわれていますが、それは子宮を開くことによって子宮の収縮を妨げてしまうからです。
悪露は子宮の収縮によって排出されますが、このように収縮を妨げる要因があると、悪露が全て排出され子宮内に無くなるまで時間がかかってしまうのです。自然出産の場合悪露が無くなるのは出産から約1ヶ月ですが、帝王切開の場合は約2ヶ月と大幅に伸びます。
多胎児の場合
多胎児を出産した場合も悪露が長引くと言われていて、この場合は妊娠中に子宮が伸びすぎて筋肉が緩むのが原因です。多胎児を妊娠すると、子宮の長さやお腹回りが単胎児の妊娠よりも大きくなるのに加えて、妊娠中は筋肉量が低下するため、余計に子宮収縮が遅れて悪露の排出にも時間がかかってしまうのです。
また多胎児を妊娠すると、胎児の成長をサポートするために胎盤が大きくなったり、胎児の数に合わせて複数胎盤が作られるようになります。そうすると胎盤に癒着する血管が多くなり悪露の量が増えるので、そういった点からも多胎児出産の場合の悪露は長引きます。
微弱陣痛などの分娩中にトラブル
陣痛の間隔が短くならず弱くなったり止まってしまうのを微弱陣痛と呼びますが、これは子宮が収縮する力が弱いために起こります。何とか分娩が終わっても収縮力は弱いままですから、悪露もしっかり排出されずダラダラ続くようになってしまうケースがあります。
微弱陣痛が長く続いて自然分娩できる体力が無くなってしまうと、最終的には陣痛促進剤や帝王切開での出産に切り替えるケースが多いのですが、そうなると元々機能の鈍かった子宮筋は切開などで更に収縮する力が衰えてしまい、悪露が長引く可能性が出てきます。
微弱陣痛だけでなく、分娩中にトラブルが発生して分娩時間がかかってしまう難産の場合も子宮筋へ負担がかかり、悪露の量が多かったり止まらないといったトラブルが起きやすくなります。
悪露変化は個人差がある
産後の日数によって悪露の色や量の変化があることがお分かりいただけたと思いますが、ご紹介したのはあくまで平均のものであって、あてはまらないからと言って必ずしも病気や異常であるということではありません。
人によって、茶色から黄色へと変化するのに時間がかかることもありますし、おりものと変わらない状態になるまで長引く方もいらっしゃるでしょう。
悪露の色は、鮮血、茶色、黄色、クリーム色、透明の順であれば問題ありませんが、産後2週間~3週間経っているのに、急に鮮血の悪露が出てきた場合はすぐにお医者さんに診てもらうようにしましょう。悪露が落ち着いた後の鮮血は、何かのトラブルが関係している恐れがあるからです。
悪露血の塊について
産後の悪露は、量や色の変化だけでなく気になることもたくさん出てきます。例えば、悪露と一緒に血の塊のようなものが出てくることもあるため、ギョッとしてしまう方もいらっしゃるでしょう。
血の塊は悪露が出てきはじめた産後すぐの時期に頻繁に見られます。悪露の中に混じる血の塊は、胎盤の一部や剥がれ落ちた子宮内膜など、組織の一部であることがほとんどなので、さほど心配する必要はないでしょう。
異常な悪露の見分け方
産後の悪露は、産後をピークに徐々に治まっていくことがほとんどです。しかし、時にさまざまな症状から異常が発見されることもあります。異常な悪露の症状とはどんなことがあるのでしょうか。
大きな血の塊が出てくる時期に注意
産後の悪露には、血の塊がいくつか混じることがありますが、明らかに大きすぎる血の塊が出てきて痛みを伴う場合や、産後2~3週間経った頃に大きな血の塊が出てきたときは注意が必要です。
痛みを伴う大きな血の塊は、胎盤などの組織が残っており除去しきれていない可能性があります。子宮復古不全、晩期出血の可能性があるので、すぐにお医者さんに診てもらうようにしましょう。
悪露が出ていて高熱が出る
産後の悪露が出ているときに高熱がでて出血も多い場合、産褥熱の可能性があります。子宮内の傷口に細菌が侵入して炎症を起こすことから引き起こされるものです。
産褥熱が悪化すると、感染巣のうが発生し最悪の場合命に関わることもあるでしょう。
悪露のニオイが異常にくさい
悪露のニオイは、血液が酸化した生臭い状態のものがほとんどです。しかし、明らかに異臭とみられるニオイの場合は、感染症にかかっていたり、子宮内の傷が膿んでいたりする可能性があるので注意が必要です。
悪露が出ていて下腹部痛や排尿痛
悪露が出ている期間に、下腹部にシクシクと痛みが発生したり、排尿時に痛みが発生したりする場合は、尿道炎や腎盂炎を引き起こしている可能性があります。
出産後の導尿により細菌に感染している恐れがあるため、早めに処置してもらうようにしましょう。
悪露が少ない
悪露の量は、産後をピークに徐々に減少していきます。しかし、出産直後に悪露の量があまりにも少ない場合は注意が必要です。悪露の出口で血液が固まりになって塞いでいる可能性があるため、十分に悪露が出きれず炎症したり可能を引き起こしたりすることがあります。
ただし、出産時に子宮収縮剤を使用すると悪露が出る量は少なくなりますので、異常ではないと言えるでしょう。
悪露は回復のバロメーター
産後の悪露は、不快感が起きやすいですし、最初の頃は量も多いためわずらわしいと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、悪露の状態を見ていくことで子宮や体力の回復を知ることができます。
悪露と子宮が縮むスピード
妊娠により大きくなった子宮は、出産後にある程度小さくなりますが、しぼんだ風船のような状態となっています。
子宮がだんだん小さくなって元のサイズに戻っていくことによって、悪露の量も減ってくるでしょう。子宮に追いやられていた胃や腸などの内臓も元の位置に戻りやすくなります。
床上げの目安
悪露の量や色の変化によって、床上げするタイミングを知ることもできます。
床上げは産後3週間が目安とされていますが、悪露が無色透明になるのもその頃です。しかし、産後3週間を過ぎてもまだ悪露が無色透明になっていない時は、開腹のスピードがやや遅れている可能性があるので、もう少し安静に過ごすようにしましょう。
産褥(さんじょく)ショーツについて
出産を経験すると、出産直後から産後1ヶ月くらいまでは悪露が出続けるようになります。初期の悪露は普通のナプキンでは対処しきれないほど多いため、悪露専用の産褥パッドを使用するのがほとんどです。産院で用意されることがほとんどですが、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。産褥ショーツと併用することで、ラクに産褥パッドを交換することができます。
産褥ショーツについて
産褥ショーツとは、生理用のサニタリーショーツよりも一回り大きく、防水面が広範囲になっているショーツのことです。産褥ショーツの前側にマジックテープがついているため、脱いだり履いたりしなくてもすぐに診察してもらうことができます。
出産直後は帝王切開や会陰切開、出産の疲労などで起き上がれないことも多いですが、産褥ショーツを履いていれば、腰を浮かすことなく産褥パッドを交換してもらうことができるでしょう。
多めに用意すると安心
産褥ショーツは、産後すぐで動きにくい時や、悪露が多くて漏れやすい時期に大活躍します。基本的に必要とされるのは産後の入院期間がメインとなりますが、退院後も自宅で安静にする期間が必要ですので、産褥ショーツは重宝するでしょう。
出産直後は悪露の量も多く頻繁に変える必要がありますし、汚れる可能性が高いため、少し多めに用意しておくと安心です。最低でも産褥ショーツは3枚準備しておき、洗い替えがスムーズにならない可能性を考えれば5枚用意しておくとこまめに取り換えやすくなります。
悪露が出ている期間は清潔さを保とう
悪露が出ている期間は、さまざまな組織や血液、リンパ液が出てくるため長い間産褥パットをつけたままにしておくと、ニオイが発生しやすくなったり、細菌に感染して外陰部が荒れやすくなったりしてしまいます。
こまめに産褥パッドは取り換え、ウォシュレットのビデ機能で洗い流しておくと良いでしょう。またシャワーを浴びるときに丁寧に洗い流しておくのも大切です。
ただ、帝王切開や会陰切開などで傷口がある場合、水で洗うことが刺激になることもあるので、状態を見ながらできるだけ正常な状態を保てるようにしましょう。
悪露の終了は夫婦生活の再開?
悪露が出ている期間は、身体が回復している最中なので安静にしていることが大切です。しかし、悪露が無色透明になって、1ヶ月健診で医師から「通常の生活に戻っても良い」と言われれば、今後悪露が出てくる可能性は低いと言えるでしょう。
悪露が終了し、1ヶ月健診も無事に終えたのなら、夫婦生活も再開できるということになります。ただし、ホルモンバランスの変化により膣の分泌液は減少しやすいですし、母乳を上げている場合性欲も発生しにくくなるので、悪露が終了したからと言って無理に夫婦生活を再開させる必要はありません。
身体の状態は夫婦で共有しあい、心と体が一致したときに初めて再開を試みるようにしましょう。
まとめ
産後の悪露について詳しくご紹介しました。悪露は出産直後から産後1ヶ月くらいまで続くため、わずらわしいと感じる方も多いと思います。
しかし、悪露をしっかり観察することで病気や異常をより早く見つけることができますし、悪露の変化により身体の機能がどれくらい回復しているのかも把握することができます。
産後の悪露は、身体の状態を表してくれる貴重なバロメーターですので、産褥パットやナプキンだけでなくトイレの後にも必ずチェックしておくようにしましょう。また、発熱や腹痛などを伴う場合はすぐに医師に報告して診てもらうようにしてください。悪露について情報を知ることで産後の不安を少しでも払拭し、赤ちゃんとの喜びの時間を大切にしてください。