赤ちゃんのミルクや母乳の吐き戻しで知っておきたいこと

赤ちゃん 食事

離乳食を始めるまでは、母乳あるいはミルクが赤ちゃんの唯一の栄養源。赤ちゃんへの授乳は育児の中でもっとも重要な事項のひとつです。赤ちゃんへの授乳は慎重に気をつけて行っているつもりなのに、赤ちゃんがミルクを吐いてしまう。これは決して珍しいことではなく、赤ちゃんの吐き戻しは健康な赤ちゃんにもよく見られます。

生まれてから数ヶ月間は母乳やミルクを吐きやすいです。これは新生児の体の機能がまだ完全に整っていないため。赤ちゃんの嘔吐はどんなに注意しても多少は仕方ありませんが、お母さんのちょっとした気遣いで、赤ちゃんの嘔吐を防ぐことが可能になります。

赤ちゃんが母乳やミルクを吐くのは珍しいことではありませんが、病気の兆候である可能性もわずかにあります。赤ちゃんの嘔吐には細心の注意を払いましょう。赤ちゃんが母乳やミルクを吐くときに知っておきたい情報をご紹介します。

吐き戻し (溢乳)とは?

吐き戻し (溢乳)とは?

吐き戻し(溢乳)とは赤ちゃんが飲んだばかりの母乳やミルクを吐いてしまうこと。吐き戻しの原因は赤ちゃんの胃の形にあります。大人の胃のように、入り口部分が狭まって締まっていないため、ちょっとしたことで胃の中身が逆流してしまいます。

赤ちゃんが母乳やミルクを飲んだあとに、口からたらたらとミルクをこぼしてしまう。これを吐き戻し(溢乳)と呼んでいます。吐き戻しは赤ちゃんの胃の形状や特徴にその原因があり、完全に防ぐことは出来ません。

しかしだからといって、ミルクや母乳の飲ませ方などにまったく配慮しないと、赤ちゃんの吐き戻しはひどくなります。ミルクや母乳を飲ませる際の注意点について、お母さんがきちんと把握しておくことが大切です。

赤ちゃんがミルクや母乳を吐きやすい原因とは?

赤ちゃんがミルクや母乳を吐きやすい原因とは?

生まれたばかりの赤ちゃんに授乳していたら、赤ちゃんが母乳を吐いてしまった。こんな体験をするお母さんは決して少なくありません。

上の子がいるお母さんなら、第一子のときの経験から適切に対応することも出来ますが、新米のお母さんにとって、赤ちゃんの嘔吐は心配なもの。もしかして病気なのでは?今すぐ病院に行ったほうがいいのでは?と不安な思いに駆られてしまいます。

生まれたばかりの赤ちゃんが母乳やミルクを吐いてしまう原因について詳しく見ていきましょう。

赤ちゃんの胃の状態

赤ちゃんの胃の状態

大人の胃は入り口の部分が締まっていて、胃酸や胃の中身が逆流しにくいように出来ていますが、赤ちゃんの胃はまだ完全な状態ではなく、入り口の部分がきゅっと締まっていません。赤ちゃんの胃の形はとっくり、あるいはひょうたんにたとえられます。

入り口部分が締まっていないため、外部からのちょっとした刺激で、胃の中身が逆流してしまうのが、赤ちゃんの胃の特徴です。

生まれてすぐの赤ちゃんの胃はこのようにまっすぐな状態ですが、大体生後3ヵ月目くらいには、大人の胃のように入り口部分が締まってきますので、生後3ヵ月目くらいまでが赤ちゃんの嘔吐がもっとも多く見られる時期になります。

母乳やミルクの飲ませ過ぎ

母乳やミルクの飲ませ過ぎ

新生児は母乳やミルクを飲む際に、量の加減がうまく出来ません。満腹中枢の機能がまだ完全でない赤ちゃんは、おなかがいっぱいになるまで母乳やミルクを飲んだとしても、おっぱいや哺乳瓶を近づけられると、再び飲み始めてしまいます。

赤ちゃんの胃の形についてはすでに述べたとおりですが、胃の入り口がゆるんでいるため、飲み過ぎてしまうと、そのまま溢れてしまい吐き戻しが起こります。

赤ちゃんの吐き戻しを予防するには、母乳やミルクの飲ませ過ぎに注意しなければなりません。赤ちゃんの様子を観察するだけでは、満腹なのか、それとも飲み足りないのか、判然としないこともあります。

母乳やミルクを飲ませ終わったあとすぐ吐く場合には、飲ませ過ぎの可能性もあります。授乳中・直後は赤ちゃんの様子を注意深く観察しましょう。

飲み込んだ空気がげっぷと一緒に出てしまう

飲み込んだ空気がげっぷとなって出てしまう

母乳やミルクを飲む際に飲み込んでしまった空気によって、胃が膨れてしまい、母乳やミルクを吐いてしまうことがあります。

授乳後は赤ちゃんを縦抱きにし、げっぷが出やすくなるように、軽く背中を叩いてあげましょう。

体に急激な動きを感じたとき

体に急激な動きを感じたとき

授乳後すぐに赤ちゃんの体に強い刺激を与えてしまうと、その衝撃が胃に伝わり、飲んだばかりの母乳やミルクを吐き出してしまいます。

げっぷを出してもらおうと背中を強く叩いてしまうことも、胃腸に衝撃を与える原因になります。授乳後に赤ちゃんの体の向きを急に変えたり、鋭い角度で体勢を入れ替えることも避けましょう。

吐き戻しがなくなるのはいつ頃?

吐き戻しがなくなるのはいつ頃?

赤ちゃんは吐くものと分かっていても、後片付けの面倒さを考えると、早く吐き戻ししなくなって欲しいと思いますね。実際、吐き戻しの回数が少なくなるのは、寝返りやお座りが出来る頃が多いようです。

自分を支えられるよう体の筋肉が順調に発達すると、お母さんが背中をトントン叩いてゲップをさせなくても、自分で自然とお腹に溜まった空気を出せるようになります。ただ、うつ伏せになった時にお腹が押されて飲んだ母乳やミルクを吐いてしまうこともありますので、寝返りの練習などは授乳後ある程度時間を置いてからの方がおススメです。

もちろん個人差がありますので長く続くかもしれませんが、気がついたらとまってた、なんて事も多いですから、あまり不安にならないようにしてください。

赤ちゃんにミルクや母乳を飲ませるときの注意点

赤ちゃんにミルクや母乳を飲ませるときの注意点

赤ちゃんに授乳する際の注意点について、これを機会にもう一度きちんと確認しておくようにしましょう。

赤ちゃんは大人と違い、胃腸の機能や形状が未発達。ミルクや母乳の飲ませ方ひとつで、吐き戻しをある程度予防することが可能です。可愛い赤ちゃんに余計な負担をかけないよう、ミルクや母乳の上手な飲ませ方のポイントを掴んでおきましょう。

必ずげっぷをさせる

必ずげっぷをさせる

赤ちゃんはミルクや母乳と一緒にたくさんの空気を飲み込んでいます。胃の中にたくさんの空気が溜まってしまうと、食道に逆流してしまいますので、ミルクや母乳を飲ませたら必ずげっぷを出させるようにしましょう。

げっぷの出させ方ですが、縦抱きに抱き、肩に赤ちゃんをもたれさせます。このとき吐き戻しがあっても服が汚れないよう、お母さんの肩から背中にかけてガーゼやタオルをかけておくと便利です。

早くげっぷを出させなければ、という思いから背中を強く叩いてしまうことがないように注意してください。ミルクを飲んだばかりのときに体に強い刺激を受けると、胃の中身が逆流して吐き戻しが起こります。あくまでも優しくとんとんと叩くか、背中をさするようにしましょう

ミルクを飲ませたあとすぐに横にしない

ミルクを飲ませたあとすぐに横にしない

ミルクを飲ませたあとすぐに横に寝かせるのはやめましょう。授乳後すぐに寝かせることは吐き戻しに直結します。授乳後だけでなく、授乳するときも縦抱きにしたほうが吐き戻しが起こりにくくなります。

授乳後はげっぷが出るまでは必ず縦抱きにし。その後寝かせる際にも少し頭の位置を高くしてあげると、吐き戻しを防ぐことが出来ます。吐き戻し防止用の枕を利用すると便利です。

一回に飲ませる量をコントロールする

一回に飲ませる量をコントロールする

授乳後もまだなんとなく赤ちゃんが飲み足りなさそうな様子をしているので、つい飲ませ過ぎてしまう。こんなお母さんは要注意。満腹中枢がまだ完全に機能していない赤ちゃんは、自分で飲む量をコントロールすることが出来ません。

吐き戻しの多い赤ちゃんの場合には、一回に飲ませる量を控えめにすることから始めてみましょう。ゆっくりと時間をかけて飲ませることで、飲む量を制限し、ミルクや母乳が逆流することを防ぎます。

授乳中でもげっぷをさせる

授乳中でもげっぷをさせる

吐き戻しの量や回数が多い場合には、授乳中であってもげっぷを出してもらいましょう。一回の授乳に時間をかける場合も同様で、縦抱きで授乳しつつ、赤ちゃんの様子によっては途中で授乳を中断し、肩に抱き上げ、げっぷをさせましょう。

母乳やミルクを飲ませる角度にも注意

母乳やミルクを飲ませる角度にも注意

吐き戻しの防止だけでなく、赤ちゃんが気持ちよくミルクや母乳を飲めるよう、飲ませ方にも注意しましょう。哺乳瓶の乳首は赤ちゃんの口に対して90℃を保つのが基本とされています。

赤ちゃんが口を開いたら、乳首をしっかりと口の奥に入れてあげましょう。乳首と赤ちゃんの口の角度が微妙にずれていると、赤ちゃんは上手にミルクを飲めずに、空気をたくさん吸い込んでしまいます。赤ちゃんが気持ちよくミルクを飲める体勢や角度を見つけるようにしましょう。

赤ちゃんが母乳・ミルクを吐いたときの対処法

母乳・ミルク・混合と育児の形はさまざまですが、いずれの方法でも赤ちゃんが吐いたときの対処法は同じ。

授乳の仕方や注意点などについては、母親教室や出産した病院で助産婦さんからすでに聞いているかと思いますが、ここでもういちどおさらいしておきましょう。

赤ちゃんを平らに寝かせない

赤ちゃんを平らに寝かせない

寝ている赤ちゃんが吐いてしまったら、赤ちゃんの頭を少し起こし、寝かせなおします。しばらくの間、縦に抱き上げて胃の中身が逆流するのを落ち着かせることも効果的です。

横に寝かせたい場合には、顔をまっすぐではなく横向きに向かせ、頭を少し高くしておきます。傾斜の付いた吐き戻し防止枕を利用すると便利です。

吐いたものをきれいに取る

吐いたものをきれいに取る

赤ちゃんの口の中や口の周りに吐いたものが残っていれば、ガーゼできれいにふき取ってあげましょう。口の中や舌の上に吐いたものが残っていないか、念入りにチェックします。

生まれたばかりの赤ちゃんには歯がありませんので、口の中のものをうまく外に押し出すことも出来ません。また耳の中、顎の下、首などにも注意。吐いたものをそのままにしておくのは不潔なだけでなく、匂いが残ってしまう原因になります。

赤ちゃんが吐いたものはその都度きれいにふき取るようにしましょう。吐き戻しの量が多く、吐いたものが服や布団についてしまい、濡れてしまった場合は、着ているものを着替えさせ、清潔にしておきます。

再度げっぷを出させる

再度げっぷを出させる

授乳後にげっぷを出させたつもりでも、実際にはまだげっぷが残っていることもあります。赤ちゃんを抱き上げたら、そのまましばらく縦抱きで様子を見てみましょう。

げっぷはすぐ出ることもあれば、しばらく時間がかかることもあります。急がせずにゆっくりげっぷが出るまで待ちましょう。

病気が原因の可能性も

病気の可能性

赤ちゃんの吐き戻しや嘔吐は必ずしも病気の兆候というわけではありませんが、嘔吐の種類や症状によっては、病気にかかっているおそれもあります。次のような症状がある場合には注意が必要です。

噴水状の嘔吐

授乳後の吐き戻しは、赤ちゃんの口元からたらたらとミルクがこぼれる状態を指しますが、赤ちゃんが噴水状に吐く場合には新生児の幽門狭窄症が疑われます。

肥厚性幽門狭窄症とは?

幽門狭窄症とは胃と十二指腸の間にある幽門という部分が、一時的に厚くなる状態を指します。これは新生児に見られる症状で、幽門の筋肉が分厚くなっているため、母乳やミルクが胃から十二指腸に移動しにくく、胃からあふれて逆流します。噴水状に勢いよくミルクを吐き出す場合には、病院で診察を受けるようにしましょう。

肥厚性幽門狭窄症の嘔吐は、単なる吐き戻しの症状と似ている場合もありますが、違いもあります。肥厚性幽門狭窄症の場合、胃から十二指腸に栄養が移動しないため、体重が増えない、機嫌が悪い、げっぷが多いなどの症状も見られます。おかしいな?と思うことがあれば、早めに専門医の診断を仰ぐようにしましょう。

胆汁性嘔吐

赤ちゃんの吐いたものが緑色をしている場合には、胆汁性嘔吐が疑われます。吐き戻しや消化不良による嘔吐であれば、吐いたものは白色、透色をしています。

胆汁性嘔吐の原因は先天性の腸管閉塞など。胃、食道、十二指腸、小腸などに先天性の閉鎖・狭窄がみられると、腹痛や嘔吐といった症状があらわれます。

緑色、褐色、血が混じっているなど、ミルクや母乳の吐き戻しとは明らかに違う嘔吐があった場合には、即刻病院で診察を受ける必要があります。

細菌やウイルスによる嘔吐性下痢

細菌やウイルスによる嘔吐性下痢

嘔吐だけでなく、下痢の症状が続く場合は、ノロウイルスやロタウイルスといったウイルスに感染している可能性もあります。

嘔吐が激しく、止まらない場合、高熱があるときなど、普段の吐き戻しとはまったく違う症状が生じた場合には、病院で詳しく診察してもらうようにしましょう。

ウイルス以外にもこんなケースも

ウイルスによる感染以外にも、消化不良やミルクが合わないなどの理由によっても、赤ちゃんの嘔吐が生じることがあります。普段の吐き戻しとは違う嘔吐があった場合には、念のため病院に連絡して指示を仰ぎましょう。

まとめ

赤ちゃんが母乳やミルクを吐くときに知っておきたい情報ををご紹介しました。胃の入り口がまだゆるんでいる赤ちゃんは、ミルクや母乳を少し飲みすぎただけで吐き戻してしまいます。赤ちゃんの吐き戻しはある程度避けられないとはいえ、ミルクや母乳の飲み方を心得ていないと、赤ちゃんの吐き戻しが激しくなり、体力を消耗させてしまいます。

赤ちゃんの吐き戻しの予防策や赤ちゃんが吐いてしまったときの対処法についての正しい知識を養い、赤ちゃんに気持ちよく母乳やミルクを飲んでもらいましょう。