最近の調査研究によると子供のメタボリックシンドロームが増加中とのこと※ 赤ちゃんの肥満は稀とはいえ、他の赤ちゃんと比べて太っていると心配になってしまいます。
赤ちゃんの体重が気になって、ついつい他の赤ちゃんと比べてしまうママも多いのでは?よその子に比べるとうちの子は太ってる?と内心思っているときに、健診で「体重が少し多いですね。」といわれると不安になってしまいます。
赤ちゃんがすくすく育ってくれるのは嬉しいことですが、太りすぎるのも心配。赤ちゃんの場合3ヶ月健診の際に少し体重が多くても、ハイハイができるようになる頃にはなおるといわれていますが、ママとしてはやはり不安なもの。母乳をあげすぎなの?ミルクの量を減らすべきでは?など、授乳に関する疑問も沸いてきます。
赤ちゃんの太りすぎや肥満について、その原因、注意点、対処方法など、知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。赤ちゃんの健やかな成長のため、ぜひ参考にしてください。※参照1
赤ちゃんの体重の増え方について
赤ちゃんの太りすぎや肥満について考える前に、まずは赤ちゃんの体重増加についてみていきましょう。赤ちゃんの体重は生後1年間の間になんと約三倍も増加します。
このうちもっとも体重増加のペースが早くのが生後すぐから2ヶ月頃まで。増加のペースは一日30グラムくらい、1ヵ月で1kgほど増加します。
生後2ヶ月間はこのペースで増加しますが、3ヶ月目になると増加のペースが少し落ち、さらに生後半年以降になり赤ちゃんが活発に活動するようになると、一日の増加量は約10グラム程度になります。
赤ちゃんの体重増加には個人差があること
赤ちゃんの体重増加の割合やペースには個人差があり、体重や身長がどのようなペースで発達していくかは一人一人の赤ちゃんによって異なります。
標準的な数値や月齢が同じ他の赤ちゃんと比べて、体重が多い・少ないことだけをもとに、発育に問題があるかどうか判断することはできません。
明らかに体重増加が少ない場合は、1ヵ月健診や3ヶ月健診の際に医師から指摘されますので、それまではあまり心配する必要はありません。※参照2
赤ちゃんの体重評価について
成人の身長体重を評価するのはBMIですが、乳幼児の身長体重の評価はカウプ指数という式により行われます。カウプ指数の数式は体重(g)÷(身長(cm)の2乗)×10で、値が15から19の範囲内であれば標準とされています。
乳児の肥満度を評価する方法は他にもあり、身長を基準に体重がどのくらい標準体重から離れているかを判別する方法もあります。また近年子どもの肥満が増加していることから、カウプ指数などに加えて、成人と同じ肥満度式BMIを乳幼児の頃から記録していくことの重要性も提言されています。※参照3
赤ちゃんの成長曲線について
赤ちゃんの身長と体重を考える上で大切なのが、赤ちゃんの成長曲線。成長曲線とは身長と体重の二つのデータを曲線にあらわしたグラフで、赤ちゃんの身長・体重を評価するのに利用されます。
厚生労働省は10年毎に赤ちゃんの頭囲、胸囲、身長、体重を測定したものを発表しています。成長曲線はこのデータをもとに作成されたもので、赤ちゃんの発育成長をはかる基準として用いられています。
パーセンタイル曲線とは?
パーセンタイルとは測定して得られた身長・体重のデータのうち、数値が小さいほうから数えて何番目かを示すものです。厚生労働省の乳児身体発育曲線では、3、10、25、50、75、97パーセンタイルが示され、これが曲線にあらわされています。
赤ちゃんの身長・体重が成長曲線におさまっている、という言い方をよく聞きます。これは3パーセンタイル曲線と97パーセンタイル曲線の範囲内におさまっていることを意味します。
成長曲線ぎりぎり、成長曲線を上回る・下回る、成長曲線からはみ出す・はみ出さない、という言い方は、このパーセンタイル曲線との関連をあらわしたもの。二つのパーセンタイル曲線の内側に赤ちゃんの体重がおさまっているか・いないかを把握することにより、赤ちゃんの体重を評価します。
パーセンタイル曲線からはみ出す場合の対処法とは?
赤ちゃんの体重がパーセンタイル曲線からはみ出した場合、どのような対処法が取られるのでしょうか?パーセンタイル曲線からはみ出すということは太りすぎなの?と思い不安に駆られるママもいるようですが、たとえパーセントタイル曲線からはみ出してしまっても、それがそのまま異常や疾病につながるとは限りません。
赤ちゃんが太りすぎているかどうかの判断は、身長との兼ね合いや体格、遺伝的な要素や発育のペースなど、すべての要素を考慮に入れた上で総合的に行われます。パーセンタイル曲線ぎりぎり、あるいははみ出しているからといってあまり神経質にならないことが大切です。
乳幼児身体発育曲線はあくまでも統計上の数値。赤ちゃんの身体発育のペースやタイプは、赤ちゃん一人一人異なっていることを理解しましょう。※参照4
子どもの太りすぎと生活習慣病の関連
近年子どもの肥満が増加傾向にあることはすでに述べたとおり。学童期の子どもの肥満は、将来の生活習慣病につながるとの懸念がされており、子どもの頃からの生活習慣病予防対策の重要さが指摘されています。
学童期の子どもの肥満の原因は、欧米化した食習慣や運動不足、不規則な生活習慣や睡眠不足にあるとされています。良くない生活習慣を身につけた子どもは、成人になってもこの生活習慣から抜け出せず、結果としてさまざまな疾病や症状を抱えるリスクが増大します。
子どもの肥満の予防に効果的なこととは、適度な運動を行うことも朝食をしっかり摂り、脂肪を蓄えやすい甘いお菓子や清涼飲料水の過剰摂取を控えること、睡眠時間をたっぷり取り、夜更かしや寝不足を解消することです。
乳児の太りすぎと生活習慣病との関連
学童期の子どもの肥満とは反対に、乳児の肥満に関しては生活習慣病に結びつくことはないとされています。ほとんどの赤ちゃんは生後1年未満の時期に太りすぎていても、一歳になるころから生活活動量が増え、これにつれて体重も適正範囲内におさまってきます。
乳児の体重は標準値を少し上回っていても、授乳の回数を減らす、ミルクを薄める、授乳する時間を減らす、授乳と授乳の時間を置くといったことは通常行いません。
授乳期の赤ちゃんは母乳は赤ちゃんの欲しがるだけ与え、ミルクに関しては医師の指示に従って行うことが基本。ただし子どもの肥満を予防するためにも、赤ちゃんの頃から身体発育に関する意識を高めることが求められています。
離乳食を始めるようになったら
授乳期の赤ちゃんに対しては、赤ちゃんが欲しがるだけ母乳を与えることが基本ですが、離乳食を始めるようになったら、赤ちゃんに与える離乳食やおやつの内容に配慮することが大切です。
離乳食は栄養のバランスの取れたものにし、甘すぎるおやつや飲み物を与えすぎないよう注意しましょう。
赤ちゃんの肥満の対処法とは?
赤ちゃんの太りすぎや肥満は、病気が原因で肥満が生じている以外は、基本的に様子を見ることが対処法とされています。
赤ちゃんの身体発育には遺伝的な要因が関わっていますので、標準よりも少し太りぎみだからといって、ママの自己判断で母乳やミルクの量を減らすことはNG。赤ちゃんへの授乳の回数や量に明らかに問題がある場合には、乳児定期健診の際に必ず指示やアドバイスがあります。
母乳とミルクは赤ちゃんにとって唯一の栄養源。体重が少し多めというだけで授乳量を減らしてしまうと、赤ちゃんの身体成長に必要な栄養が不足してしまいます。
赤ちゃんの体重と授乳に関して疑問があれば、必ず専門知識を要する医師や栄養士さんに相談するようにしましょう。ちなみに、なんらかの疾病が原因で肥満になっている状態は二次性肥満と呼ばれ、医師による適切な治療が必要とされます。
赤ちゃんの太りすぎ・肥満の原因とは?
赤ちゃんの体重が標準よりも多いとき、その原因として真っ先に考えるのが母乳やミルクの与えすぎですが、これは実際にどうなのでしょうか?乳児期の授乳は赤ちゃんが欲しがるだけ与えるようことが基本。
これにしたがって赤ちゃんが欲しがるだけ授乳していたら、赤ちゃんが太ってしまった、というケースも見受けられます。母乳やミルクの飲みすぎで赤ちゃんが太ってしまう状況について詳しくみてみましょう。
赤ちゃんの母乳の飲みがいい場合
母乳の飲みがよい赤ちゃんの場合、赤ちゃんの飲みたいだけあげていると授乳の回数も多くなります。ミルクと違い、母乳は赤ちゃんが一回の授乳でどのくらいの量を飲んでいるのか確認するのが難しく、飲み過ぎに気がつかないママもいるようです。
赤ちゃんは生後3ヶ月になるまでは、満腹中枢のはたらきが十分でなく、満腹になっていることが分からず、どんどん飲み続けてしまうことがあります。吐き戻しが多い、おなかがぱんぱんに膨らんでいる、うんちやおしっこの回数と量が多い。このような症状がある場合には、母乳を飲みすぎている可能性もあります。
母乳の出方が分からない方は、いちど搾乳をして母乳の分泌量を確認する方法があります。たとえば赤ちゃんの体重増加が一日30gを大幅に超過していて、母乳の飲み過ぎが気になる場合、一度搾乳を行い、赤ちゃんが飲んでいる量を把握すると安心です。
もともと体格がよい赤ちゃんの場合
遺伝的に生まれたときから体格のよい赤ちゃんで、母乳の飲みもよい場合、体重増加が標準を上回ることがあります。
体格がよい赤ちゃんの場合、体重増加が多少大きくても肥満とはいえず、成長とともに体重増加のペースも落ち着いてきます。赤ちゃんの身長・体重の増加は母乳やミルクの飲みのよさだけでなく、遺伝的な要因も関わっていますので、体重だけをもとに肥満かどうか判断することはできません。
泣いたらすぐ授乳してしまう
赤ちゃんが泣くとすぐに授乳してしまう方は、母乳やミルクの与えすぎになっている可能性もあります。
赤ちゃんが泣く理由はおなかがすいているだけでなく、おむつが濡れて気持ちが悪い、眠くなった、抱っこしてもらいたい、などいろいろな理由があります。
一日の体重増加が30gを超過し、太りすぎている場合は、泣いてもすぐには授乳せず、他の方法を試してみましょう。授乳後1時間もしないうちに赤ちゃんが頻繁にぐずり泣きをするときは、ママに抱き上げてもらいたいからかも知れません。泣いたらすぐに授乳するのではなく、いったん抱き上げてあやしてみるようにしましょう。
離乳期・幼児期の赤ちゃんの太りすぎ・肥満予防について
離乳期や幼児期から赤ちゃんの太りすぎや肥満予防を考えるのは時期尚早な気がしますが、幼児期から良い食事の習慣を身につけることは、学童期に入ってからの太りすぎや肥満を回避してくれます。
離乳完了期が終わり、食事と食事の間におやつをあげる時期が来たら、与える食べ物や飲み物に十分注意しましょう。
甘いものを与えすぎない
離乳食完了期までは塩分・糖分はごく控えめに離乳食を作ることが大切。離乳期に塩味や甘味を強く感じてしまうと、他の味覚を感じづらくなるだけでなく、虫歯、偏食、肥満につながります。
離乳完了期や幼児期のおやつは甘みの強いものや糖分が多すぎるものを避け、自然な甘みの感じられるおやつを選んであげましょう。飲み物に関しても、糖分の多いものや人口甘味料などを含むものはできるだけ避けるようにします。
戸外で活発に遊ばせる
よちよち歩きが出来るようになったら、ママと一緒にお散歩や買い物に連れ出すようにしましょう。毎日の日課に戸外に出かけることを組み込み、一日中室内にこもることがないよう注意します。
戸外で日光に当たることにより昼夜のリズムもより一層確立され、規則的な生活習慣が身につくとともに、体を動かすことにより運動に必要な筋肉を発達させることが期待できます。
まとめ
赤ちゃんの太りすぎ・肥満に関する疑問を持ったときに知っておきたいさまざまな情報をご紹介しました。授乳期の赤ちゃんの身体発育には個人差があり、活動量の増える時期になると自然に引き締まった体つきに変わっていきますので、不安に感じる必要はありません。
ただし赤ちゃんの体重が成長曲線を大幅に上回っているときや、一日の体重増加量が30gをはるかに超える際には、医師に相談し、授乳の回数や量、ミルクの量をい一度確認しておきましょう。
※参照1 厚生労働省 子どものメタボリックシンドロームが増えている
※参照2 厚生労働省 乳幼児身体発達評価マニュアル
※参照3 日本小児内分泌学会 子どもの肥満
※参照4 厚生労働省 乳幼児身体発育調査の概要
※参照 厚生労働省 母子手帳について
※参考 日本学術会議 出生前・こどものときからの生活習慣病対策