赤ちゃんのアレルギーについて知っておきたいこと

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アレルギー疾患の症状に悩む人の数は近年ますます増加し、三人に一人はなんらかの形でアレルギーを発症しているともいわれています。※1 アレルギーの種類はさまざま。食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎など、一口にアレルギーといっても、その原因や症状は多種多様で、人によっては複数の症状を同時に抱えていることも珍しくありません。

アレルギー疾患は大人だけの問題ではありません。実際のところ、アレルギーの発症は成人よりも乳幼児に多く、適切な対応を取らないと、学童期になってさらに症状が重症化するおそれもあります。

アレルギーの原因、種類、症状から対処法や検査方法まで、ア赤ちゃんのアレルギーで知っておきたいことをご紹介していきます。

赤ちゃんのアレルギーの原因は

赤ちゃんのアレルギーの原因について

近年とくに大人のアレルギーだけでなく、赤ちゃんのアレルギーの発症も増加傾向にあります。アレルギーの増加原因については、食習慣の変化、自然環境の影響、住宅環境の変化などが関係しているといわれています。

アレルギーを引き起こす原因(アレルゲン)とは?

アレルギーを引き起こす原因(アレルゲン)とは?

アレルギー症状を引き起こす物質を含むものをアレルゲンと呼びます。アレルゲンにはいくつかの種類がありますが、代表的なものがハウスダスト、ダニ、花粉、カビ、そして牛乳や卵などの食品。

他にも犬や猫の毛やフケ、大気汚染物質、ゴキブリなどの昆虫、細菌など、アレルゲンとなりうるものは数多くあります。花粉やハウスダストのようなアレルゲンは、吸引性アレルゲンと呼ばれています。

アレルギー物質を含む食べ物とは?

アレルギー物質を含む食べ物とは?

吸引性アレルゲンと並び、もっとも一般的なアレルゲンが食べ物アレルゲン。卵、牛乳、小麦粉、オレンジやキウイフルーツなどの果物、えびやかになどの甲殻類、ピーナッツなどのナッツ類、やまいもなどの野菜、そば、さばやさけなどの魚類などがその代表になります。

小児期にもっとも発症例の多い食品は、鶏卵、牛乳、大豆、小麦、米となり、これらを総称して五大アレルゲンと呼んでいます。

とくに発症例の多い食べ物3品と症状が重篤になりやすい2品目、合計5品目に関しては、厚生労働省の定めにより、微量に混入している場合や添加物として配合されている場合でも、表示が義務付けられています。※参考1

赤ちゃんの食品アレルギーについて

赤ちゃんの食品アレルギーについて

一般的なアレルゲンについて上に挙げてみましたが、赤ちゃんや子供と大人では、食品アレルゲンの種類が違ってきます。食品アレルギー自体は、生後1歳までの赤ちゃんにもっとも発症例が多く、適切な治療を行わずにおくと、食品アレルギーだけでなく、アトピー性皮膚炎にかかってしまうこともあります。

まだ赤ちゃんだからと油断せず、お母さんやお父さんが食品アレルゲンやアレルギー症状に関する正しい知識を身につけておくことが絶対に必要です。新生児から幼児にかけて多い食品アレルゲンについて挙げてみましょう。

生後3歳までに多いアレルゲンとは?

卵と牛乳

食品アレルギーは生後1歳までにもっとも多く生じます。アレルゲンとなる食べ物ですが、生後3歳までの間に発症例がもっとも多い食べ物とは、卵、そして次に牛乳が続きます。

卵と牛乳の二つが全体の約6割以上を占め、残りをえび・かになどの甲殻類、小麦、ピーナッツ、そば、魚類などが占めます。

卵と牛乳の占める割合は年齢が上がるとともに徐々に下がっていき、成人ではえび・かに、卵、魚類、牛乳という順序に変わっていきます。卵と牛乳の占める割合が非常に高いことが、乳幼児のアレルゲンの特徴といえるでしょう。

赤ちゃんの食物アレルギーの症状とは?

赤ちゃんの食物アレルギーの症状とは?

赤ちゃんの食物アレルギーの症状の出方は、じんましんや湿疹などの皮膚の症状としてあらわれる場合と、下痢や腹痛、吐き気などの症状としてあらわれる場合が多いです。

他にも唇の腫れや口内のできもの、咳、喉がぜいぜいとなるぜい鳴など、症状のあらわれ方は様々。症状が重篤になると、アナフィラキシーと呼ばれるショック状態に陥ることもあります。

どんな食べ物がアレルゲンになっているかは、一般的には血液検査やパッチテスト、スクラッチテストによって確定されます。

食物アレルギーと似た症状 乳糖不耐症

食物アレルギーと似たような症状であっても、実際は食物アレルギーが原因ではないことがあります。食物アレルギーと似た病気の中で、この乳糖不耐症は消化機能の未熟な赤ちゃんに多く発生します。

乳糖は母乳・ミルク・乳製品に含まれる糖質ですが、これを分解する消化酵素が元々少なかったり、胃腸炎になった時に消化酵素が減少してしまうと、乳糖を分解できずに下痢を引き起こします。

熱や咳を伴った下痢ならば感染症だと分かりますが、下痢以外の症状が無く1週間以上続く場合は、乳糖不耐症を疑い病院を受診しましょう。母乳やミルクの代わりに乳糖が含まれていないミルクや分解酵素の服用など、赤ちゃんの症状に合った対応をしてくれます。

赤ちゃんのアレルギーの発症について

赤ちゃんのアレルギーの発症について

アレルギー発症の原因となるものについてはすでに挙げたとおりですが、実際に赤ちゃんにアレルギーが発症するかどうかは、赤ちゃん本人にもともと備わった要因も関わっています。

本人の要素とは、両親から受け継いだ遺伝的な体質や免疫機能の発達状態、そしてアレルゲンに対する耐性など。アレルギーの発症にはこのように、赤ちゃん本人の要素とハウスダストや食べ物などの外部要因が複雑に絡み合っています。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎と乳児湿疹の違いとは?

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎と乳児湿疹の違いとは?

2歳までの赤ちゃんに多いアレルギーの症状について見ていきましょう。赤ちゃんのアレルギー症状の代表は、アトピー性皮膚炎。アトピー性皮膚炎の症状の特徴とは、皮膚の乾燥および痒みになりますが、皮膚の乾燥やかゆみは他の原因によっても生じることがあります。

赤ちゃんの頭皮や皮膚に生じる湿疹やぽつぽつとした赤みは、乳児湿疹と呼ばれています。乳児湿疹にはいくつかの原因がありますが、生後半年を過ぎるまでは乳児湿疹の原因を突き止めることが難しく、赤ちゃんの湿疹をまとめて乳児湿疹と呼んでいます。

乳児湿疹について

乳児湿疹について

赤ちゃんの頭皮や皮膚に出る湿疹は乳児湿疹と呼ばれています。乳児湿疹の原因は、あせもや乳児にきび、アトピー性皮膚炎、乾燥性皮膚炎、乳児脂漏性皮膚炎などですが、症状だけでは何が原因となっているのか、なかなか特定できないこともあります。

赤ちゃんは皮膚の角質層が薄く、外部からの刺激に対して弱く、皮膚のバリア機能がまだ十分にはたらいていません。その上赤ちゃんは汗や皮脂の分泌が多く、皮膚のトラブルが起こりやすい状態になっています。頭皮や皮膚に出来たかさぶたや湿疹、赤み、膿みといった症状をもとに、

自己判断でその原因を突き止めることは難しい場合があります。単なるあせもや乳児ニキビとばかり思っていたら、実際にはアトピー性皮膚炎だった、ということもあります。疑問なことや心配なことがあれば、早めに小児科や皮膚科で診察を受けるようにしましょう。

アトピー性皮膚炎の特徴とは?

アトピー性皮膚炎の特徴とは?

アトピー性皮膚炎の特徴や皮膚の乾燥と痒み。湿疹や赤みだけでなく、しつこい痒みやかさかさとした乾燥が継続する場合には、単なる一過性の湿疹ではなく、アトピー性皮膚炎の可能性も疑われます。

アトピー性皮膚炎はハウスダストなどによる吸引性アレルゲンが関わっている場合もあれば、食物アレルギーとの合併も考えられます。食物アレルギーは、痒み、乾燥、湿疹、赤み、じんましん、腫れなどの皮膚のトラブルだけでなく、下痢や腹痛、吐き気といった胃腸のトラブルとなってあらわれます。

赤ちゃんのアレルギーは、ひとつの症状が引き金になり、次から次へと他の症状を併発してしまう「アレルギーマーチ」を起こしてしまうおそれがあります。

アレルギーマーチとは?

アレルギーマーチとは?

アレルギーマーチとは、アレルギーの原因と症状が次から次へと変化していくさまをあらわした表現。

アレルギー疾患をかかえやすい乳幼児は、まず食べ物アレルギーにかかり、次にアトピー性皮膚炎、さらにアレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎と、年齢が上がるにしたがって、次々に他のアレルギー症状を併発していくことがあります。

これが乳幼児のアレルギーマーチと呼ばれるもので、年齢が上がり免疫力がついてくるにしたがって、症状が緩和されていくこともあれば、症状が悪化したり、症状が重篤化することもあります。乳幼児が最初にアレルギーにかかった時点で適切な対応を取ることが必要不可欠です。

赤ちゃんのアレルギーの検査方法とは?

赤ちゃんのアレルギーの検査方法とは?

アレルギーを検査する方法について見ていきましょう。アレルギーの検査方法とは、血液検査による方法と皮膚の検査であるパッチテストやスクラッチテストがあります。赤ちゃんの場合、大人とまったく同じ方法では検査できない場合もあります。

赤ちゃんのアレルギーの検査の時期ですが、症状の度合いなどによっては、離乳食を始める前に検査を行うこともあります。

両親にアレルギー疾患がある、赤ちゃんのアレルギーの症状が重度、他の方法ではアレルゲンの特定が出来ない場合など、医師の判断によっては、母乳授乳中であってもアレルギー検査を行う必要が生じます。

血液検査

血液検査

赤ちゃんの場合、生後4ヵ月から5ヶ月以降にならなければ、血液検査を行うことが出来ませんが、最近では赤ちゃんの指先から血液を採取する方法も取り入れられています。

血液検査では血液中の特異IgE抗体値を測定します。特異IgE抗体はアレルゲンの種類によって異なり、どのIgE抗体があるかによってアレルゲンの特定に役立てられます。

スクラッチテスト・プリックテスト

スクラッチテスト・プリックテスト 子ども

専用のスクラッチ針・プリック針で前腕部分にごくわずかな傷をつけ、ここにアレルゲン物質のエキスを一滴垂らし、皮膚に変化が生じるかどうかを検査します。

パッチテスト

パッチテスト

パッチテストも皮膚検査のひとつですが、スクラッチテストやプリックテストが即時的な反応を見るのに対して、パッチテストはアレルゲンの付着したフィルム(パッチ)を腕に貼り付け、そのまま3日間様子を観察します。パッチテストは金属や石鹸などによる遅延型のアレルギーを特定するのに用いられます。

食物除去試験

食物除去試験

血液検査や皮膚検査の結果、アレルギー症状があると認められた場合、この食物除去試験を行います。アレルギー症状がどの程度改善されるかを観察することがその目的。

アレルゲンの可能性のある複数食べ物を2週間ほど摂取しないことにより、アレルギー症状が実際に改善されるかどうかを確かめます。

食物負荷試験

食物負荷試験

食物除去試験を行った後に、今度は少量ずつ摂取することにより、食べても症状が出ない許容範囲などを確かめるために行われます。この負荷試験を行うことにより、アレルゲンの影響によりどの程度の症状が出ているのかを正確に突き止めることができます。

アナフィラキシーが生じないよう、負荷試験は専門医の監督下で慎重に行う必要があります。負荷試験は今後の治療法を決める上でも重要な役割を果たしまする

離乳食を食べるときの注意

離乳食を食べるときの注意

一般的に食べ物の五大アレルゲンといわれているものは、卵、牛乳、小麦、米、大豆になりますが、乳幼児の場合は卵・牛乳の占める割合が高くなります。

離乳食をあげる際には、これらの食品を一度にすべて盛り込むことは控えたほうが良いでしょう。まずは一品ずつ、赤ちゃんの様子を観察しながら、少しずつ与えるようにします。食べたあとに皮膚に湿疹や痒みがないかどうか確認しましょう。

卵について

卵について

卵は黄身よりも白身のほうがアレルギーの発症が多いので、離乳食に入れる場合にはまず黄身から始めたほうが良いでしょう。

卵そのものだけでなく、卵を使ったお菓子や卵白が成分として入ったものなど、卵製品全般に注意を払うことが必要です。

牛乳について

牛乳について

牛乳だけでなく、チーズやヨーグルトなどの乳製品に対してアレルギー症状を示す赤ちゃんもいますので、離乳食を作る際にはこの点にも注意しましょう。

初めての食べ物は一品ずつ加える

初めて食べる食品をまとめて複数離乳食に混ぜてしまうと、万が一アレルギー症状が出たときに、どの食べ物が原因なのか、特定しにくくなります。赤ちゃんが初めて口にする食べ物は一品ずつ離乳食に加えましょう。

アレルゲンとなる食べ物は少しずつ与える

どんな食べ物でも毎日繰り返したくさん食べさせるのは、栄養バランスの観点からも望ましくありません。

アレルギー予防のためにも、またバランスの取れた食習慣のためにも、アレルゲンとして挙げられている食べ物を頻繁に繰り返し与えるのはやめましょう。

まとめ

赤ちゃんのアレルギーについて知っておきたい事柄をポイントごとにご紹介しました。住環境や食習慣の変化、自然環境による影響により、アレルギー疾患を発症する人の割合は年々増加していますが、これは赤ちゃんの発症率も同じ。乳幼児のアレルギー疾患は大きな問題となっています。

赤ちゃんのアレルギーに対するもっとも効果的な対処法は、早期に発見し、アレルギーの原因を特定すること。赤ちゃんに多い食品アレルギーやアトピー性皮膚炎に関する正しい知識を備えることから始めましょう!

※1参考: 厚生労働省 食品アレルギー 参考2:日本アレルギー学会