泣いている赤ちゃんを抱き上げようすると、「抱き癖がつくからやめたほうがいい。」と年配の人からアドバイスされることがあります。抱き癖がついてしまうと、なかなかこの習慣から抜け出すことが出来ないでは?と心配してしまうお母さんもいるようですが、自分の欲求をまだ言葉で表現できない赤ちゃんにとって、泣くというのは、自分の感情や欲求を表現する唯一の手段です。
赤ちゃんの抱き癖に関してはいろいろな意見があります。抱き癖がつくから、赤ちゃんが泣くたびに抱き上げることはしないほうがいい、という意見もあれば、赤ちゃんを思い切り抱きしめてあげるほうが、早く抱き癖から成長してくれる、という意見もあります。
赤ちゃんの抱き癖は果たして治すべきなのか、それとも自然に治るまで辛抱強く待つほうがいいのか、赤ちゃんの抱き癖について知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
赤ちゃんの抱き癖
泣いている赤ちゃんを見ると、本能的に抱き上げたくなります。これはもはやお母さんやお父さんの本能ともいえる行動。泣いている赤ちゃんをなだめようと、抱っこしたのはいいけれども、泣き止んだあともなかなか腕から降ろすことが出来ない、、、。
抱き癖がつくというのはこのように、泣いたり、ぐずったりしている赤ちゃんをお母さんやお父さんが抱っこしてあやすことにより、泣いたら抱っこしてもらえるという状態に赤ちゃんが慣れきってしまうことを指します。泣いている赤ちゃんをすぐに抱き上げることに対しては二つの相反する意見があります。
一つは抱き癖がつくので、たとえ赤ちゃんが泣いていてもすぐに抱き上げないほうがいい、という考え方、もう一つは泣いている赤ちゃんを抱きしめることにより、赤ちゃんに精神的なサポートを与えるのはお母さんの役目、という考え方です。
抱き癖はつけないほうがいいのか?
泣いている赤ちゃんをすぐに抱き上げるくせがつくと、赤ちゃんのほうがそれに慣れてしまい、抱き癖がついてしまうといわれています。
抱き癖とは、お母さんに抱かれている分には機嫌も良く、すぐに眠ってくれるのに、寝かせたとたんに起きてしまう、あるいは、抱っこしてもらうためだけに、ぐすぐずと泣くなど、お母さんを悩ませる行動に出てしまうことを指します。
抱き癖がつくと、お母さんの身体的な負担が大きくなる、やめさせようと思ってもなかなか治らない、などのデメリットが生じてしまいます。
抱き癖をつけないという意見、育児法
泣き癖が付くので赤ちゃんが泣いても抱き上げないほうがいい、という考え方は、もともとはかなり以前にアメリカで提唱されていた育児法の一つで、この考え方が日本に紹介されるようになり広がりました。
欧米では伝統的に、赤ちゃんの自立性を幼いときから養うことが重要視されてきました。これに加えて女性の社会進出が進んだことにより、赤ちゃんの育児法に関しても、非常に先進的なアプローチが取られるようになりました。
たとえば、新生児のうちから両親とは別のベッドに寝かせる、授乳時間やスキンシップの時間をきちんと守る、必要以上に抱き上げない、などがその典型的な育児方法。「抱き癖がつく」という考え方は、ここから来ているようです。合理的な育児法のように思えますが、問題はこれが赤ちゃんの立場ではなく、大人から見て都合のいい方法だということです。
泣いている赤ちゃんは抱いてあげたほうがいい意見
泣き癖がつくから抱かないほうがいい、というのは古い育児法で、現在では泣いている赤ちゃんに対しては、赤ちゃんが必要なだけ抱いてあげることが大切、という育児法に様変わりしています。
泣いているにも関わらず、お母さんやお父さんから無視され続けると、そのうちに泣くことを諦め、あまり泣かない赤ちゃんになってしまうおそれがあります。
泣かない赤ちゃんは扱いやすく、育児に当たるお母さんにとっては楽ではありますが、情緒発達や感情形成が十分に行われずに、情緒不安定な子供に育つおそれもあるといわれています。
抱っこはお母さんとの大切なスキンシップ
言葉で自分の感情や欲求を説明することの出来ない赤ちゃんにとって、泣くことは唯一のコミュニケーション手段。おなかがすいた、不安なので抱きしめてもらいたい、おむつが濡れて気持ちが悪い、体の具合が悪い、など、すべてを泣くことで表現します。
赤ちゃんの側からの唯一のコミュニケーションに対して、お母さんやお父さんが無反応だと、赤ちゃんの精神状態は落ち着かず、不安定な気持ちを抱えたままになってしまいます。
赤ちゃんの対人関係は、非常に限られています。新生児から幼児期の始まりまでは、お母さんやお父さん、それに兄弟・祖父母といった身近な人が、赤ちゃんの全世界。基本的な人格や感情形成は幼児期の早い段階から行われるもの。
この時期に両親や身近な人から十分な愛情と関心を注がれないと、情緒不安定で感情の起伏の乏しい子供に成長するおそれがあることを心得ておきましょう。
赤ちゃんの抱き癖は治すべき?治すべきではない?
すでに見てきたように、言葉で表現できない赤ちゃんは、泣くことによって自分の感情や要求を表現しています。これを無視することは、赤ちゃんにとっても、またお母さんにとっても非常に辛い経験になります。赤ちゃんの抱き癖を恐れるあまり、スキンシップが不足してしまうと、また別の問題が生じてしまいます。
赤ちゃんの抱き癖はほとんどの場合、そのままにしておいても成長とともに自然に治っていきますので、特別に意識して抱っこをやめる必要はありません。お母さんに抱っこされないと安心できないというのは、赤ちゃんの自然な感情です。
これを押し殺さないように、新生児のときからたっぷりと愛情で包んであげることが、赤ちゃんの精神的な成長につながります。赤ちゃんに抱き癖がつく、というのは嘘とまでは言えませんが、抱き癖もまた赤ちゃんの成長の一過程と捉え、抱っこというスキンシップで赤ちゃんに絶対的な安心感を与えるようにしましょう。
赤ちゃんにも個性がある
抱き癖だと思ってたことは、実は赤ちゃんの個性という可能性もあります。赤ちゃんにはそれぞれ個性があり、眠りのパターンや眠り方にもその個性があらわれます。
あまりぐずらずにすっと眠りに入る赤ちゃんもいれば、寝つきの悪い赤ちゃんもいます。また寝付きはいいけれども、寝起きにぐずる赤ちゃんもいれば、その逆もあります。物音がするだけで泣き出す赤ちゃんもいれば、どんなに周囲がうるさくても、いったん眠りについたらなかなか起きない赤ちゃんもいて、赤ちゃんの眠りのパターンはさまざま。
寝つき・寝起きの悪さ、寝ぐずり、夜泣きは、単なる抱き癖、泣き癖ではなく、赤ちゃんの個性に基づいた行動パターンのあらわれと言えるでしょう。
抱き癖はいつからつくの?
赤ちゃんに抱き癖がつくのは、赤ちゃんに昼夜の区別が付くようになる生後3、4ヶ月目以降になります。生後すぐの赤ちゃんにはまだ昼夜のリズムがなく、眠ることと母乳を飲むことの二つを繰り返すだけですので、この時期については抱き癖のことを考えても、あまり意味がありません。
生後3、4ヶ月から6ヵ月目にかけて徐々に睡眠のパターンが確立され始めますが、この時期の赤ちゃんが泣くのは、感情というよりも、本能的におなかがすいたことなどを知らせているに過ぎません。
赤ちゃんに本格的に抱き癖がつくようになるのは、満1歳を過ぎたころといえるでしょう。この頃から2、3歳になるまでの間が、赤ちゃんの抱き癖がもっとも気になる時期になります。昼夜のリズムが確立されるとともに昼寝の習慣も出来、赤ちゃんの身体機能や行動能力が大きく発達する時期で、お母さんにとってはもっとも育児に疲れる時期といえるでしょう。
抱かないと眠らない赤ちゃんへの対処法
泣いている赤ちゃんを抱き上げると泣き止むけれども、下ろそうとすると再び泣き出す。
赤ちゃんが泣いたり、ぐずったりするのは仕方ないこととはいえ、毎日がこの繰り返しで、体力が続かず、寝不足に陥ってしまうお母さんも多いのが現実。赤ちゃんを抱っこしたままの時間が増え、腱鞘炎にかかるお母さんも大勢います。
抱いていないと眠ってくれない赤ちゃんに対しては、それなりの対策を考えておくことが必要です。
添い寝する
抱いていないと眠ってくれないのは、お母さんの体温を間近に感じていないと不安を覚えるため。抱っこしている間に眠ってしまったので、いざ布団に寝かせそうとするときまってぱっちり目を覚ましてしまう、こんな赤ちゃんに対しては添い寝が有効です。
添い寝もまた悪いくせが付いてしまうと不安に思う方もいるかもしれませんが、赤ちゃんをずっと抱いたままでいるよりは、お母さんも休息が取れて楽になります。
睡眠のリズムを確立させる
赤ちゃんは生後3、4ヶ月になったころから、昼夜の区別が付くようになり、生後半年当たりから夜間にまとまった睡眠が取れるようになります。
その後も赤ちゃんの成長にしたがって、昼夜のリズムはより規則的になっていきます。昼間の活動量が増えるにしたがって、夜間の睡眠の質も向上します。昼間は赤ちゃんを好きなだけ遊ばせるようにすると、眠りにつきやすい環境が出来上がります。
赤ちゃんの抱き癖への対処法
赤ちゃんの抱き癖はいずれは自然に治るもの、抱き癖の効果的な治し方というのは存在しないと考えて間違いありません。
ただし泣く・ぐずる→抱っこする、の繰り返しがあまりにも長期間続くと、お母さんの体力や精神力が試されてしまい、育児に疲れ果ててしまう場合もあるでしょう。抱き癖のついてしまった赤ちゃんへの対処法についていくつか挙げてみましょう。
赤ちゃんに辛抱強く対処する
なかなか泣き止まない赤ちゃんにイライラしてしまうこともありますが、お母さんのほうが先に根負けして怒ってしまっては、赤ちゃんの精神状態はさらに不安定になります。赤ちゃんの様子を常に注意深く観察し、何が原因で泣いているのか、見極めるようにしましょう。
泣いている原因が分かれば、すぐに対応できますが、これといった理由が見当たらないのに、いつまでもぐすぐず泣く赤ちゃんもいます。こんなときもイライラせずに、赤ちゃんに辛抱強く接するようにしましょう。お母さんがイライラすると、赤ちゃんの不安感は増大します。
赤ちゃんとのスキンシップを大切にする
おなかもすいていないし、おむつも替えたばかり、それなのになのに抱っこしていないと、機嫌が悪くなるのは、お母さんとのスキンシップを求めているせいかもしれません。
赤ちゃんに不安な思いをさせないよう、ねだられたら思い切り抱きしめてあげることが大切です。
抱っこひもなどを上手に利用する
赤ちゃんの体重を抱っこで支えていると、腕や腰に負担がかかってしまいます。
自宅で抱っこをする場合には、楽な姿勢を取ることが出来ますが、外出先で立ったまま赤ちゃんを抱くのは非常に辛いもの。抱っこひもやバウンサーなどの育児グッズを用意しておくと、お母さんの負担をいくぶん軽減できます。
お父さんや家族に協力してもらう
育児はお母さん一人で奮闘するものではありません。赤ちゃんがぐずって仕方ないときは、お父さんや上の子供たちの協力を仰ぎましょう。
育児を完璧にこなそうとするあまり、お母さん一人で赤ちゃんに対応しようとすると、育児疲れや精神的な負担が大きくなってしまいます。赤ちゃんの夜泣きやぐずりがひどい場合には、お父さんや家族にお願いして交替で赤ちゃんをあやすようにしましょう。
赤ちゃんの呼びかけに声をかける
家事をしていて、泣いている赤ちゃんをすぐに抱けないときには、まず赤ちゃんに声をかけるようにします。赤ちゃんが泣くのはお母さんに側に来てもらいたいから。泣き声を無視していると、赤ちゃんの情緒をさらに不安定なものにしてしまいます。
ここまでのまとめ
赤ちゃんの抱き癖は治すべきといわれていた時代もありましたが、現在では赤ちゃんを抱いてあやすことは、推奨されています。
お母さんに抱っこされてあやされることにより、赤ちゃんの情緒は安定しますので、抱き癖はかえって赤ちゃんの健全な成長につながるともいえるでしょう。情緒や感情の豊かな子供に育てるためにも、抱っこを通じて赤ちゃんとのスキンシップをたっぷり行うようにしましょう。