赤ちゃんの育児は少しも目を離すことができないほど、大変なものです。しかし、24時間常に赤ちゃんを見守り続けることはできていません。とはいえ、ちょっと目を離したすきに、思わぬトラブルを引き起こしてしまうこともあるので注意が必要です。
赤ちゃんのトラブルとして、最も注意したいのが「誤飲」です。手で物がつかめるようになり、好奇心が旺盛になってくると、なんでも口に入れてしまうため、ヒヤリとした経験のある方も多いのではないでしょうか。
赤ちゃんの誤飲は、軽傷で済むものもあれば重症化するものもあります。赤ちゃんを誤飲から守るためにも、詳しい知識が必要です。そこで、赤ちゃんの誤飲に関するさまざまな情報を幅広くご紹介していきましょう。
赤ちゃんの成長と誤飲
赤ちゃんが誤飲のトラブルを起こしてしまうのは、さまざまなものに興味を示してしまうからです。好奇心旺盛なのは、赤ちゃんの発達を助けることでもあります。
ただ、物を掴むという動作ができるようになったら、とにかく何でも口の中にいれてしまうのは、それが食べ物か危険な物か、見分けがつかないからです。
赤ちゃんは自ら危険を回避することはできませんから、家族がそれを未然に防ぐよう対策をとっておく必要があるのです。
赤ちゃんの口の大きさは
誤飲に気をつけるのはわかっていても、実際にどれくらいの大きさまで赤ちゃんが飲み込んでしまうのかを理解しているお母さんは少ないでしょう。よく言われるのは36ヶ月の赤ちゃんの口の直径はトイレットペーパーの筒サイズ(JIS日本工業規格)と同じ38mm程で、奥行きは51mm程です。
形や素材によっては38mm以上の大きさであっても口の中に入ってしまうものがありますから、やわらかいおもちゃなどは注意しましょう。
もし心配な時は、トイレットペーパーの芯や市販の誤飲チェッカーを使って、赤ちゃんの身の回りのどんなものが誤飲してしまうのかをチェックしましょう。
誤嚥(ごえん)とは? 食べ物も注意が必要
誤飲ではないのですが、食べ物が喉につまり気道をふさいで窒息してしまうのを誤嚥(ごえん)と呼びます。誤嚥は高齢者に多いのですが、赤ちゃんは気管が狭いため誤嚥事故につながるケースが多いのです。
そこで、いくつか誤嚥を防ぐポイントをご紹介しましょう。まずはおもちゃと同様、プチトマトや輪切りのソーセージなど球形または切り口が丸になっている食べ物は、喉につまらないように2つ4つに切って食べさせましょう。
グミのお菓子、飴玉なども注意が必要です。また、豆やピーナツが丸のまま入っているチョコレートやケーキは、取り除くか食べさせないように注意しましょう。赤ちゃんは食事中でもびっくりする行動をとりますから、目を離さないことも大事です。
誤飲を見逃さないようにしよう
赤ちゃんの誤飲は、ちょっと目を離したすきに起きてしまうことが多々あります。そのため、誤飲に気づかずオムツに出てきた異物を見てヒヤリとした経験のある方もいるのではないでしょうか。
赤ちゃんの誤飲を見逃さないためには、ちょっとした変化を見過ごさないことが大切です。
突然の異変
それまで機嫌よく遊んでいたのに、目を離した途端、突然泣き出したり、ぐずりだしたり、吐いたり、呼吸が苦しそうになっていたり、顔色が悪くなったりしている場合、何かを誤飲している可能性が高いと言えます。
突然このような異変が現れたら、口の中をチェックしてみるようにしましょう。
置いていたものがなくなった場合
赤ちゃんの誤飲にいち早く気づくためには、赤ちゃんの周りに何が置いてあったか把握しておくことも大切です。よくある誤飲事故として、お母さんがお化粧をしている間に電話が鳴り、少し部屋を離れたときに、メイク道具のチップや口紅などを飲み込んでしまうケースです。
戻ってくると、明らかに化粧道具が足りない場合や、揃っているはずのカラーがない場合、赤ちゃんが誤飲してしまっている可能性が高いので、すぐに口の中をチェックし、口の周りに化粧品がついていないか確認するようにしましょう。
誤飲の怖さを知ろう
赤ちゃんが誤飲することの怖さは、どんな危険な物でも飲み込んでしまうことです。誤飲してしまったものの中には、人体に影響のないものもありますが、中には中毒症状を引き起こして命に関わる危険性のあるものもあります。
また、とがったものを飲み込んでしまうと、内臓を傷つけたりする可能性もあるため、無事に腸を通過できるか不安になることでしょう。
赤ちゃん誤飲の応急処置 対処方法
赤ちゃんの誤飲が発覚したら、どのように対処するのが良いのでしょうか。すぐに病院へ連れて行くのが良いのか、様子を見た方が良いのか、水を飲ませたり吐かせたりといろんな考えが巡ると思います。
誤飲したものによって対処方法は異なりますので、詳しくご紹介しておきましょう。
応急処置 比較的安全で様子を見るべきもの
赤ちゃんが誤飲したものによっては、すぐに病院に行く必要がないものもあります。毒性が弱く人体の影響が少ないものは、少量なら変わったところがないか様子を見るようにしましょう。
口の中に残っている場合は吐き出させ、飲み込んでいたら量を確認します。大量に誤飲しているようなら、念のため病院で診てもらうようにしましょう。
少量の誤飲で比較的安全とされているのは、紙類、クレヨン、絵具、粘度、砂、土、石鹸、シャンプー、洗剤、化粧品、線香、乾燥剤(シリカゲル)、等です。
洗剤に関しては、中性タイプのものを少量であれば慌てる必要はないでしょう。ただし、濃縮タイプであったり、塩素系であったりする場合は注意が必要です。
応急処置 すぐに吐かせるべきもの
赤ちゃんが誤飲したものとして、すぐに吐き出させる必要があるものもあります。吐かせる時は、赤ちゃんの頭を低くして、喉の奥に指を入れて下を押し下げるようにすると吐きやすいでしょう。その後すぐ病院へ
すぐに吐き出させる必要があるのは、タバコ、ビニール、ホウ酸だんご、防虫剤、大人用の医薬品、香水などです。
タバコ誤飲の対処方法
赤ちゃんがよく誤飲してしまうものとして、最も多いのがタバコです。タバコにはニコチンが含まれていますので中毒症状を引き起こす可能性がありますので、すぐに吐き出させるようにしましょう。タバコの吸い殻が入っているお水を飲んでしまった時や、タバコを誤飲してしまった時は、水を飲ませてすぐに吐かせるようにしてください。
吐き出すことができて、ニコチンの中毒症状が出なければ大丈夫ですが、念のため病院に行っておくと安心でしょう。
ホウ酸団子の誤飲対処方法
赤ちゃんがよく誤飲してしまうものとして、ゴキブリ用のホウ酸団子もあります。台所などをウロウロしているときに誤飲してしまうことが多いようです。
ホウ酸団子などゴキブリ退治用のものは、薬品が含まれていますし毒性もあるため、早急に対処する必要があるでしょう。
大人用の薬の誤飲対処方法
大人の薬は成分も強いため赤ちゃんにとっては有害です。強心剤、降圧剤、精神安定剤は特に危険ですので、すぐに吐かせて病院に行きましょう。風邪薬なども低体温症や肝臓障害を引き起こす可能性があるため危険です。飲んでしまった薬が残っているようなら、それも一緒に病院に持っていくようにしましょう。
香水の誤飲対処方法
香水にはアルコールが含まれているため、赤ちゃんが誤飲することでアルコール中毒を引き起こしてしまう可能性があります。水を飲ませて吐き出させ、大量に飲んでいる場合は病院で診てもらうようにしましょう。
ビニール誤飲の対処方法
赤ちゃんがよく誤飲してしまうものとして、ビニール袋やプラスチック類もあります。食品を包装するのに使われるため、赤ちゃんにご飯やおやつを上げたすきに掴んで誤飲してしまうケースが良くあります。
ビニールは喉に詰まりやすいため、誤飲だと気づいたらすぐに吐き出させるようにしてください。そのままにしておくと窒息してしまう可能性があります。飲み込んだ場合は無理に吐かせなくても便として出てくるので慌てる必要はありません。
応急処置 吐かせてはいけないものすぐ病院へ
赤ちゃんが誤飲したものによっては、吐かせようとすることでかえって危険な状態になることもあります。食道や肺を傷つけたり窒息したりする可能性もあるので、無理に吐かせず速やかに病院で診てもらうようにしましょう。
吐かせてはいけないものとしては、漂白剤、カビ取り剤、殺虫剤、農薬、尖ったもの、灯油、シンナー、農薬、ガソリン、除光液、電池などがあります。
漂白剤、カビ取り剤の誤飲対処方法
赤ちゃんが漂白剤を誤飲してしまった時、無理に吐かせようとすると、泡が発生して気管に入り込み肺炎を引き起こしてしまう可能性があります。誤飲したと気づいたら、水や牛乳で原液を薄めて食道や胃の粘膜を保護するようにしましょう。そのうえで、病院に連れていき状態を見てもらうようにしてください。
殺虫剤、農薬の誤飲対処方法
殺虫剤、農薬を誤飲してしまった場合、何も飲ませず吐かせることもせず、すぐに病院に連れて行くようにしましょう。毒性が強いので注意が必要です。
尖ったもの誤飲対処方法
コルクボードや柱などにつけていたものが自然に落ちて、誤飲してしまうこともあるようです。また、お母さんの髪から取れかかったヘアピンを掴んで誤飲してしまうこともありますし、洗面所や机の周辺に落ちたヘアピンを誤飲してしまうこともあります。
赤ちゃんが、ヘアピンや画鋲、釘など尖ったものを誤飲してしまった場合、無理に履かせようとしないでください。無理に履かせようとすることで、胃や腸などの臓器を傷つけたり、食道に引っかかったりする恐れがあるからです。
誤飲した尖ったものがある場合は、同じものを持参しすぐに病院に向かうようにしましょう。
灯油やシンナー、ガソリン誤飲対処方法
灯油やガソリンなどの石油系の製品を誤飲してしまった場合、何も飲ませず吐かせることもせず、すぐに病院に連れて行くようにしましょう。石油系の製品は、皮膚の粘膜に火傷のような症状を引き起こしてしまうため、吐かせることで粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。
また、水や牛乳で薄めようとすると吸収をよくしてしまうため、何も飲ませず病院に連れて行くようにしてください。
除光液やマニキュア誤飲対処方法
除光液やマニキュアは、毒性が強いため何も飲ませず吐かせることもせず、すぐに病院に連れて行くようにしましょう。吐かせたものが肺に入ると、肺炎を引き起こす可能性があるからです。
ボタン型電池誤飲 対処方法
赤ちゃんがよく誤飲してしまうものとして、ボタン型電池(コイン型電池)も多くあります。玩具に入っていることが多いボタン型電池は小さいですし、赤ちゃんがおもちゃで遊んで触れる可能性もあるため、誤飲事故が良く起こります。
きちんと安全に作られている赤ちゃん用の玩具なら、ネジ止めされていて簡単にボタン型電池が出てこないようになっていますが、赤ちゃん用ではないおもちゃだと、ちょっとした衝撃で電池のカバーが外れ、簡単に取り出せてしまうことがあるので注意しましょう。
特にアルカリ電池は食道や胃に穴をあけてしまいますし、リチウム電池は消火器の壁に潰瘍を作ってしまうほど危険です。
その他の電池も、胃や腸にとどまってしまうことで科学燃傷や組織腐食を引き起こす可能性があるため、何も飲ませず、吐かせることもなく早急に病院で診てもらうようにしましょう。
誤飲は未然に防ごう
赤ちゃんが誤飲をしないためにも、部屋を片づけておく必要があります。赤ちゃんと同じ目線で部屋を徘徊すると、意外と危険なものが多いことに気づくでしょう。
扉を開けたりすることもあるのでロックし、カバンなどの中身をあさられないようクローゼットや高いところにしまうようにしましょう。家族一緒になって取り組むことで、誤飲を未然に防ぐことができるようになります。
病院に行くべきか、処置に迷ったら
係りつけの病院がある場合は、すぐに連絡をとって医師の診断を仰いでください。また中毒110番 (財)日本中毒情報センターでも相談できますので、判断に迷った場合は連絡してみましょう。
中毒110番 (財)日本中毒情報センター
大阪中毒110番 (24時間対応) 072-726-9923
つくば中毒110番(9時~21時対応) 029-852-9999
連絡をする際は慌てずに下記の事項を整理して伝えてください。
1.赤ちゃんの氏名、年齢、体重、性別
2.連絡者と赤ちゃんとの関係、連絡者の電話番号
3.中毒原因物質(正確な商品名、発売会社名、用途)
4.中毒事故の発生状況(摂取量、摂取経路、発生時刻)
5.赤ちゃんの状態
様々な誤飲の事例が記載されています。参考にしてください。
Injury Alert(傷害速報)|公益社団法人 日本小児科学会
ここまでのまとめ
赤ちゃんの誤飲について詳しくご紹介しました。赤ちゃんの誤飲は、未然に防ぐことができるのでもう一度部屋の中を見回してみましょう。
また、誤飲してしまった時は、何を飲み込んだかによって対処方法が異なります。吐かせた方が良いものもあれば、吐かせると危険なものもあるので、対処方法を間違えないようにしましょう。
何を飲み込んだかわからない時や、どう対処したらよいのか迷った時は、何も行わずすぐに救急車を呼んで病院で診てもらうようにしてください。処置を使用として時間が過ぎるより、早くお医者さんに診てもらった方が、安全で確実だからです。さまざまな角度から誤飲についての知識を深め、赤ちゃんを誤飲トラブルから守ってあげてください。