へその緒の処置・風習・保管方法などについて知っておきたいこと

赤ちゃん 生活

赤ちゃんがおなかの中にいる間、お母さんと赤ちゃんをしっかり結んでくれていたへその緒。へその緒は出産後しばらくすると自然に取れますが、取れたへその緒はどのように保管すべきか、その保管方法についてご存知ですか?

赤ちゃんのへその緒を大切に保管するのは日本古来の風習。日本人は古くからへその緒を、赤ちゃんとお母さんを結ぶ絆として大事にしてきました。へその緒を保管するという風習には、赤ちゃんの健やかな成長を祈願する意味が込められています。

へその緒の保管方法に加えて、へその緒にまつわる慣習やへその緒が取れる時期など、赤ちゃんのへその緒の保管方法について知っておきたいさまざまな情報をご紹介します。

赤ちゃんのへその緒について

赤ちゃんのへその緒について

へその緒は臍帯とも呼ばれます。妊娠中のお母さんとおなかの赤ちゃんをつなぐ組織で、2本の動脈と1本の静脈から成り立っています。お母さんの体から赤ちゃんに対して酸素や栄養素が送られ、おなかの赤ちゃんからは老廃物が胎盤に送り返されます。

へその緒の長さや太さには個人差がありますが、平均的な長さは約50cm、太さは直径が1cmから1.5 cm、中には2cmに達することもあります。赤ちゃんが生まれたら、医師や助産婦さんがへその緒を切ってくれます。

出産時のへその緒の処置について

出産時のへその緒の処置について

分娩が終わったら、へその緒は赤ちゃんの側を3cmほど残して切り離されます。出血を防ぐために、臍帯クリップと呼ばれるクリップや紐で縛り、その後へその緒の処置が行われます。

へその緒の処置に関しては、病院や医師の方針や考え方、またへその緒の状態によって若干異なります。一般的なへその緒の処置について以下に挙げてみましょう。

へその緒の処置のやり方

へその緒の処置のやり方

まず最初に感染症を防ぐための消毒が行われ、さらに乾燥剤が散布されます。その後ガーゼで包みテープや絆創膏で固定されますが、最近では消毒のみを行う病院も増えています。

へその緒は最初はジュクジュクと湿っていますので、沐浴のたびに消毒しなければなりませんが、時間が経過するにつれて徐々に乾燥してきます。完全に乾燥してしまったら、消毒の回数を減らす場合もありますので、疑問なことがあれば医師や看護士さんに尋ねて解決しておきましょう。

自宅での赤ちゃんのへその緒のお手入れについて

自宅での赤ちゃんのへその緒のお手入れについて

入院中はへその緒が取れなかった場合、自宅でもへその緒のお手入れをしなければなりません。おむつ替えの際にはへその緒に十分な注意を払い、水分が残っていれば綿棒でしっかりふき取ります。とくにおへそにいちばん近い部分に少しでも水分が残らないように、丁寧にふき取ってあげてください。

おむつをはかせる際にはへその緒を圧迫しないように注意します。へその緒の部分におむつがかからないよう、へその緒の下でおむつを折り返すと安心です。へその緒がこすれるとかぶれや腫れができるおそれがあります。

へその緒は乾燥させることが大切。常に空気に触れるように注意してあげましょう。おむつでこすれたり、圧迫すると蒸れてしまい、乾燥の妨げになります。

医師からの指示があった場合には消毒剤で必ず消毒してあげてください。乾燥してしまえば、特に必要がない限り消毒はする必要がない、という考え方もありますので、退院後のへその緒のお手入れについては入院中に必ず確認しておきましょう。

赤ちゃんのへその緒はいつ取れる?

赤ちゃんのへその緒はいつ取れる?

赤ちゃんのへその緒は通常生後2週間程度、長くても1ヵ月程度で自然に取れてきます。乾燥して自然に取れるまでは無理に引っ張ったりしないようにしましょう。

早い場合には退院前に病院で取れてしまうこともありますが、遅い場合には生後1ヵ月頃に取れることもあります。乳児1ヵ月健診の際にまだ取れていない場合は、念のため医師に相談するようにしましょう。赤ちゃんのへその緒が取れたら、今度はへそのお手入れをしなければなりません。

赤ちゃんのへそのお手入れ

赤ちゃんのへそのお手入れ

へその緒を消毒したのと同様に、へその緒が取れたあとはへそのお手入れをする必要があります。へその緒が取れたばかりのへそには汚れや水分がついていることもありますので、沐浴後などに丁寧にお手入れをしてあげましょう。その際出血や腫れなどの異常が見受けられる場合には、病院に連絡して指示を仰ぎます。

赤ちゃんのへそがじくじくしている場合には、まずコットンで優しくふき取り、その後消毒剤をつけます。へそのお手入れの方法は入院中に詳しく医師や看護士さんから教わっておきましょう。

へその緒の処置同様、乾燥剤を付け、その後ガーゼで包む方法もあれば、消毒だけで済ませる方法もあります。へその緒やへそのお手入れ法は退院前に病院でしっかり教わっておくようにしましょう。

へその緒が取れたあとの異常について

稀にへその緒が取れたあとに異常が生じるケースがあります。臍肉芽腫(さいにくげしゅ)と呼ばれる症状は、へその緒の一部がしこりとなって残り、おへそが赤く盛り上がる状態で、じゅくじゅくと膿み、出血していることもあります。

もうひとつは臍炎と呼ばれる症状で、これはへその緒が取れたあとの部分に感染症が起こり、膿みや腫れが生じる状態を指します。どちらの症状もそのままにしておくと、炎症が進んでしまいますので、おへそに異常がある場合は早急に病院で治療を受けるようにしましょう。※参考1

へその緒が入院中に取れた場合

へその緒が入院中に取れた場合

赤ちゃんのへその緒が入院中に取れた、という場合もあります。この場合は病院によって対応に差がありますので、気になる方は前もって尋ねておくようにしましょう。へその緒を渡すことはできない、という方針の病院もあれば、入院中に取れたへその緒は原則お母さんに渡す、という病院もあります。

また赤ちゃん側のへその緒とは別に、出産時に切り離したほうのへその緒も産婦さんに渡してくれる病院もあります。産院によっては退院時のプレゼントとして、へその緒をおさめたオリジナルの保管箱を用意しているところも。

赤ちゃん側のへその緒にしても、分娩の際に切り離されたへその緒にしても、病院の方針やケアしてくれる看護士さんや助産師さんの体制によって、渡してもらえるか、渡してもらえないか、変わってきます。

赤ちゃんのへその緒にまつわる風習について

赤ちゃんのへその緒に関する基礎的な事柄を挙げてみましたが、今度はへその緒の保管について見ていきましょう。赤ちゃんのへその緒を大切に保管するのは日本伝統の風習ですが、日本を含むごく一部の国や地域を除き、その他の国や地域にはこのような慣習は見られません。

日本では古くから赤ちゃんのへその緒を大切に残す慣習が伝えられてきました。へその緒以外にも乳歯を保管する慣わしもあり、現在でもその慣習は続いています。

へその緒が大切にされてきた理由は、へその緒がおなかの赤ちゃんとお母さんの結びつきを意味するため。古来からへその緒には特別な力があると信じられてきました。

へその緒をなくすと子供の運気が損なわれる、子供が病弱になる、などの言い伝えも。へその緒にまつわる言い伝えは風習は地域によって差があります。以下にへその緒に関する代表的な風習や言い伝えを以下に挙げてみました。

大病の際に煎じて飲ませる

大病に陥ったときに、へその緒を煎じて飲ませると病がなおるという言い習わしがあります。この言い伝えの根拠は、へその緒に強い力が備わっていると信じられていたことにあります。

出産した母親の棺桶に入れる

母親ではなく、本人が死亡した際に棺桶に入れるという地域もあります。

神社でお清めしてもらう

地域によってはへその緒を神社でお清めしてもらい、その後神棚に大事に奉るところもあります。

このようにへその緒にまつわる風習にはいろいろなものがありますが、現在では乳歯と同様、へその緒は大切な赤ちゃんの成長の記念として大事に保管されています。以下にへその緒の保管方法について詳しく見ていきましょう。

赤ちゃんのへその緒の保管方法について

赤ちゃんのへその緒の保管方法

赤ちゃんのへその緒は生まれてから1週間から2週間ほどで自然に取れてきますので、決して無理やりに取らないようにしましょう。へその緒を大切に保管したい方は、赤ちゃんを沐浴させるときや服を着せるときに注意してください。うっかりしていて取れたことに気がつかず、なくしてしまっては残念です。

赤ちゃんのへその緒が取れたら、しっかり乾燥させます。見た感じは乾燥していても、長年保管していくためにはここでしっかりと乾燥させることが必要です。

清潔なガーゼなどの上にのせ、数日間そのまま乾燥させましょう。完全に乾燥したら、保管箱に入れて保管します。へその緒は非常に小さなものですので、不注意な場所に置くと紛失してしまいます。ついうっかりなくしてしまい、後で後悔することのないよう、へその緒の扱いには十分に注意しましょう。

へその緒の保管に適した箱とは?

へその緒の保管に適した箱とは?

へその緒の保管に適した素材は桐箱といわれています。桐箱や桐ダンスは昔から保存用によく用いられてきた日本伝統の高級木材。軽く加工がしやすいと同時に、物の保存に適した特徴を備えています。

桐箱の特性とは?

へその緒の保管に桐箱が適しているとされる原因は、桐の特性にあります。まず桐には湿気に強く、かびにくいという特徴があります。また火にも強く燃えにくい上、変形しにくい特性があり、そのため継ぎ目が広がらず、隙間ができません。虫を寄せつけにくい特性も備えていますので、長期間の保存にぴったりの素材です。

桐箱を利用する際には念のためにさらに乾燥剤を入れ、何が入っているか一目で分かるように、赤ちゃんの名前、日付等を記入しておくようにしましょう。

へその緒専用保管箱を用いる場合

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現在ではへその緒専用の保管箱がたくさん市販されていますので、これを利用すると便利です。へその緒専用の保管箱には脱脂綿や乾燥剤が付いていることが多く、また名前や日付などを書く欄もすでに用意されていますので面倒がなく便利です。

形や素材もいろいろなものがありますので、好みに合わせて出産前に用意しておくといいでしょう。またへその緒だけでなく、乳歯や母子手帳も一緒に保管できる専用ケースも人気です。乳歯を保管することも考えているお母さんやお父さんは、この乳歯も保管できるケースが便利です。

へその緒専用保管ケースのメリット

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へその緒専用保管専用ケースは、へその緒を保管するために特別に作られた特別仕様なので、サイズがぴったりに作られていて便利です。

乾燥剤やへその緒を置く脱脂綿など、必要なものがすでにセットされていることもメリットのひとつ。またいろいろなデザインや形状のものを好みで選ぶことができます。男の子向き・女の子向きのデザイン、誕生月や干支がデザインされたものなど、選ぶ楽しみもあります。赤ちゃんの名前や誕生日も入れられますので、一生の記念品として最適です。

へその緒の保管場所

へその緒の保管場所

へその緒を箱や専用ケースに入れたら、分かりやすい場所に保管しましょう。へその緒は長く保管していきますので、最初は置き場所を覚えていても、時間が経つにつれてどこに保管したのか忘れてしまう方もいるようです。

へその緒とともに赤ちゃんの乳歯も保管している場合は、同じ場所に置くようにするといいでしょう。母子手帳についても同様で、使用している間は紛失するおそれがありませんが、使わなくなるとどこに置いたのか忘れてしまうこともあります。

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無くしてしまうことが心配な方は、へその緒、乳歯、産毛、母子手帳など、赤ちゃんの大切なものすべてを一緒に保管できる専用ケースがお勧めです。

へその緒はいつまで保管する?

へその緒はいつまで保管する?

一生の思い出になるへその緒ですが、これはいつまでお母さんの手元で保管すればいいのでしょうか?へその緒にまつわる慣習としては、お母さんの棺桶に入れる、本人の棺桶に入れるなどがありますが、これは過去の話のようです。

現在では子供が結婚したときに渡す、というケースが多いようです。赤ちゃん本人が成長し、独立した頃がへその緒を本人にわたす頃合といえるでしょう。

まとめ

赤ちゃんのへその緒の保管方法についての情報をポイントごとにご紹介しました。赤ちゃんとお母さんを結ぶ絆の象徴、へその緒。医学が発達する以前には、へその緒を煎じたものを飲ませるとなおると考える人もいたほど、重要視されてきました。

現在のように医学が発達していなかった頃は、赤ちゃんのへその緒を大切に保管しておくことにより、子供の運気を保ち、災いから守ってくれると信じられていましたが、現在では赤ちゃんの成長の記念として大切に保管されています。へその緒はお母さんと赤ちゃんの絆の証し。赤ちゃんの成長を見守りながら大切に保管してあげましょう。

※参考1 日本小児外科学会 臍炎、臍肉芽腫