妊娠・出産・育児に関しての研究が進み、次々と新しい説が発表されています。お母さんが赤ちゃんの頃とは全く違う育児方法も多く提唱されているため、おばあちゃんや親戚・友達それぞれに同じ事を聞いても、育児をしていた時期によっては正反対の答えが出てくることすらありえます。その中でも、お母さんが悩んでしまうものの一つとして、耳掃除が挙げられます。
赤ちゃん時代は耳に関するトラブルも多く発生するため、赤ちゃんのことを大事に考えるあまり耳掃除をすべきか、すべきでないか、余計に意見が分かれてしまうのかも知れません。そこで、耳掃除賛成・反対の意見や、安全な耳掃除の方法など、お母さんが気になることを詳しくご紹介します。
赤ちゃんの耳掃除 した方がよい意見
耳掃除をした方がよい、という意見には、やはり赤ちゃんは新陳代謝が活発で汚れが溜まりやすいということが根底にあるようです。
加えて免疫機能が未熟なため、汚れが溜まりやすい耳もしっかりきれいにしておかないと、と思う方も少なくありません。また、その他の赤ちゃんの耳掃除をした方がよい意見を挙げてみました。
昔からそうだから
赤ちゃんのおばあちゃん世代は、耳掃除をきちんとすべき、という意見が多く見受けられます。その他にも、毎日赤ちゃんに日光浴をさせるなど現代とは少々異なった育児の方法があったようです。
昔は今ほど環境が整備されていませんから、体の弱い赤ちゃんは毎日きちんと清潔な状態を保つ必要があったためと考えられます。おばあちゃんのやり方で今まで子供の耳にトラブルが起きていないから、ということで、その方法を続けているご家族も多いです。
耳の聞こえが悪くなるから
赤ちゃんは新陳代謝が活発ですから、すぐに耳の中に汚れが溜まります。自然に出てくる場合も多いのですが、新陳代謝の高さに加えて、一日中横になっているため、床の細かなホコリなどが耳に入ったり、口からこぼれたミルクやよだれが耳の中に入ってしまうこともあります。
そうすると自然に排出されるよりも溜まるほうが多くなるため、気がついたら耳の中が耳垢で詰まってしまっていた、なんてことも。耳垢が大きくなれば鼓膜がふさがってしまい、耳の聞こえ方にも影響しますし、取る時にも赤ちゃんが痛い思いをしてしまいます。そんな風になってしまうのを避けるため、こまめに耳掃除をすべきという意見があります。
赤ちゃんの耳掃除 しない方がよい意見
赤ちゃんの耳を無理にきれいにする必要は無い、という意見もあります。赤ちゃんの耳はトラブルが多いため、無理に耳掃除をしてトラブルを増やさなくても良い、という理由からです。
大人でも耳掃除のしすぎは避けるよう言われていますし、大人よりも皮膚の弱い赤ちゃんの耳をきれいにすることに固執しすぎると、さらに傷つけてしまう可能性がでてきます。
耳垢は自然に排出されるから
耳には毎日老廃物が溜まりますが、しばらく掃除をしなくても耳の中は耳垢でいっぱいになりませんね。耳には、自然と老廃物を外へ外へと出すような自浄作用があるからです。
赤ちゃんの耳も同様に、無理に耳の中へ器具を入れて取り出さなくても自然にきれいになるため、掃除は必要ないという意見です。実際、沐浴の際にタオルで耳の外側を拭くだけで、十分きれいになることがほとんどだと言われています。
耳の聞こえが悪くなるから
耳をきれいにするのに、なぜ耳の聞こえが悪くなるという意見があるのでしょうか。人間の目では、赤ちゃんの細い耳の穴に耳垢がどれだけ入っているのかを、正確に判断することは出来ません。
耳の穴を綿棒でぐるっと回せばきれいに取れると思っていますが、この際に綿棒で奥にある耳垢をぎゅっと中に押してしまい、鼓膜の前に耳垢が溜まってしまうことがあります。
こんなことが何回も続くと、お母さんはきれいにしているつもりでも、赤ちゃんの耳が聞こえづらくなってしまうのです。何もしなければ外に出てくるので、余計なことはしないほうが良いと考える方もいらっしゃいます。
耳掃除が原因の耳のトラブルに
いくら柔らかい素材で耳掃除をしたとしても、赤ちゃんの柔らかい肌、それも内部の弱い部分をこするわけですから、繰り返すうちに傷がつき、そこから炎症を起こすトラブルも多く発生しています。中でも多いのが、耳の穴を傷つけて感染してしまう外耳炎。
赤く腫れて、触っただけで赤ちゃんが嫌がる、耳だれが出る、赤ちゃんが気にして耳をしょっちゅう触る、こんな状態が見られる場合は外耳炎の疑いがあります。また、お母さんが耳掃除をしている時に赤ちゃんが急に動くと、耳の穴の皮膚を引っかいて出血してしまうこともあります。
赤ちゃんの耳掃除のポイント
赤ちゃんの耳掃除をする、しないの両意見をご紹介しましたが、それでもやはり赤ちゃんの耳の中に何かあるのが見えると、取ってあげたくなります。赤ちゃんが耳を気にしているようなら、なおさらです。しかし、自分にするように、すぐ耳の中に綿棒や耳かきを入れるのは絶対にやめましょう。
絶対にきれいにしようとお母さんが頑張ると、赤ちゃんは緊張してしまい、耳掃除自体を嫌がる可能性が出てきます。出来れば環境を整えて、短時間でサッと終わらせるのがベスト。そこで、どういった環境で赤ちゃんの耳掃除をすればよいか、ポイントをご紹介しましょう。
いつ? お風呂上りがベスト
耳垢が見えたその時点で取るのも良いのですが、なるべくならお風呂上りまで待ちましょう。お風呂上りなら赤ちゃんもリラックスしていますし、耳垢も柔らかくなっているので、赤ちゃんが痛みを感じずきれいに取れるでしょう。
1週間に1回、10日に1回など、入浴後に耳掃除するというルーティーンを決めておけば、次第に赤ちゃんも入浴後→耳掃除という流れに慣れて、耳掃除を嫌がることも少なくなるかもしれません。
お風呂後まで待てない、という場合は綿棒にベビーオイルを含ませて耳の穴の入り口をくるっとなぞります。しばらくするとオイルで耳垢が柔らかくなって取りやすくなります。
どこで? 人のいない環境で
耳垢を取ることばかりに集中してしまいますが、赤ちゃんの耳掃除をする時は、まず人のいない環境を確保しましょう。上の子が遊んでいるそばで耳掃除をすると、上の子がいきなりお母さんにぶつかってきたりしますので、手元が危なくなる恐れがあります。
また、大人であっても、お母さんの後ろから見れば赤ちゃんが隠れて見えないため、知らずお母さんに触れてしまうこともあるでしょう。前もって家族に伝えておいたり、ご主人がいる時は、赤ちゃんの耳掃除をするからと上の子の面倒を見てもらえると、安心ですね。
何を使う? ガーゼ?綿棒?
赤ちゃん用の耳掃除といえば綿棒が一般的ですが、綿棒は耳垢を中へ押し込んでしまいます。それが重なって耳の穴を塞いでしまうほどの状態を耳垢栓塞といい、こうなると病院で処置をしてもらわなければならなくなります。
ですから、なるべくなら綿棒を使う時は耳の穴の入り口付近にとどめたり、触れるだけで耳垢が綿棒に付く粘着性の綿棒を使うのが良いでしょう。赤ちゃんの耳の穴に入れるのが怖い、というお母さんは無理をせず湿らせたガーゼで耳の周りや耳の穴の入り口を拭く程度にしましょう。これでも十分きれいになりますので、まずはお母さんの使いやすい方を選んでください。
耳掃除の注意点
耳掃除をする際のポイントをご紹介しましたが、更に細かいことをいくつか挙げます。まずは、赤ちゃんの耳の穴が良く見えるように、電気の下に移動します。ベビー用の先端が光る耳掃除グッズもありますので、持っている方はぜひ活用してください。
また、綿棒を使う際、どこまで入れていいのかわからないお母さんも多いと思われます。成人の耳の穴の長さは約3cmですから、赤ちゃんは更に短いと考えましょう。分からない時は綿棒に1cmの目印をつけ、それより短く使うことを意識してください。
その他、耳に綿棒を入れられた赤ちゃんは、ビックリして動いてしまうかもしれません。耳の中を傷つけてしまう恐れがありますので、気になる時はまず赤ちゃんをおくるみに包んでから耳掃除を開始すると、不用意に動いてしまうことを抑えられるでしょう。
※参照 聞こえについて 新日本補聴器株式会社 https://mtha-group.com/about_hearing/
耳垢のタイプで耳掃除の仕方も変わる?
人間には乾いた耳垢の乾性耳垢と、ベタッとした耳垢の湿性耳垢の2種類あります。日本人は湿性耳垢よりも乾性耳垢が多いのですが、これは遺伝で決まっており、成長しても変化することはありません。
乾性耳垢の赤ちゃんなら、自然に耳の穴から排出されることが多いのですが、湿性耳垢の赤ちゃんは耳垢がベタベタしているため外に中々出ず、耳の奥に耳垢が溜まりやすい状態です。乾いた耳垢は掃除もしやすいのですが、湿った耳垢は無理に取ろうとすると傷つく恐れがありますので、病院で取ってもらうのが一番です。
耳掃除で不安なこと 気になること
耳掃除をして、耳の中のガサガサが消えてスッキリした赤ちゃんを見ると、お母さんも嬉しくなりますね。耳掃除が習慣になると、ちょっとした赤ちゃんの耳の変化にも気づきやすくなってきます。
普段とは違う赤ちゃんの耳の状態を見ると、病気になった?耳掃除で傷つけた?とお母さんは不安を感じてしまうでしょう。そこで、耳掃除をしている時にお母さんが気になることはどんな事かを、見てみましょう。
耳垢が黒いとき
赤ちゃんの耳の中が黒いと、ギョッとしますね。出血したのかも?!と慌てる前に、もう一度良く観察してみてください。黒い耳垢は新生児に多く見られ、耳の中に残った羊水が固まって黒くなったものと言われています。
無理に取らなくても自然と排出されて、いつの間にかきれいになりますので、あまり気にしないほうが良いでしょう。普通と変わらず沐浴時に耳をガーゼで拭くくらいで十分です。いつまでも残って気になるような時は、病院で取ってもらってください。
耳垢が黄色い・茶色いとき
大人の耳垢は白っぽい色をしていますが、赤ちゃんは新陳代謝が活発なので、耳垢が茶色・黄色になることがあります。耳掃除をするたび同じ色の耳垢が取れ、また赤ちゃんの機嫌がよく、腫れたり痛みがなさそうな場合は特に問題ありません。
ただし、耳から黄色い液体が垂れるような場合、赤ちゃんがずっとグズグズしてしきりと耳を触るような場合は、外耳炎や中耳炎になっている可能性があります。抗生剤での治療が必要ですので、症状が当てはまる場合はすぐに病院を受診しましょう。
耳が臭う
赤ちゃんの耳に顔を近づけた時に、何か変な臭いがすると思った時は、赤ちゃんの様子をよく観察しましょう。耳が臭う大きな理由は外耳炎です。耳の穴に傷が付き、炎症を起こして膿が発生して臭いが発生します。耳の腫れや痛みが現れる赤ちゃんもいれば、何も全く感じない赤ちゃんもいるので、臭いがある時はまずは病院を受診して確認してもらいましょう。
その他に耳の上に穴が開いていれば、先天性耳瘻孔が原因である可能性もあります。先天性耳瘻孔は、胎児の時に耳が形成された時に残ってしまった管の跡といわれており、孔の内部には袋があります。その袋に垢や汗・皮脂などの分泌物が溜まり、外部に出てくる時に臭いを発します。
病院で耳掃除をするメリット
耳掃除をしたいけど怖いというお母さんは、遠慮せず耳の専門家である耳鼻科で赤ちゃんの耳をきれいにしてもらいましょう。耳掃除だけで病院なんて、と思ってしまいがちですが、耳掃除も立派な治療のひとつです。
また、耳掃除の際に耳のチェックがありますから、異常があった時はすぐに的確な治療が受けられます。それから、鼻づまりと耳の異常は深いつながりがあり、鼻づまりをきれいにしただけで中耳炎の予防になったり、耳の圧迫感が軽減したというケースもあります。これを機会に、赤ちゃんに耳の掃除と耳のチェックに慣れてもらいましょう。
まとめ
赤ちゃんの耳掃除は、するかしないかでそれぞれ理由があります。耳は自浄作用があり耳垢も自然と落ちますが、耳掃除をする際は、お母さんと赤ちゃんが落ち着いて耳掃除を出来る環境を整えるようにしてください。
耳掃除が怖い場合は、無理せず耳鼻科の先生にお任せしましょう。定期的に病院で耳掃除をすれば、耳のトラブルを予防できます。耳の痛みがあると、赤ちゃんは一日中不機嫌になってしまいます。赤ちゃんのニコニコ笑顔のためにも、耳のトラブルを早めに治せるよう気をつけてあげてください。