妊娠中は、体重管理や栄養の大切さを指導されることが多いため、食に対する意識が妊娠前よりも強くなる方が多いのではないでしょうか。
しかし、無事に出産すると育児に追われ、あれだけ意識していた食事のことをおろそかにしてしまいやすくなります。産後の食事をおろそかにしてしまうと、母乳だけでなく体型や体調にも影響してしまいます。
妊娠中の食事も大切ですが、産後は医師からの指導を2週間ごとに受けることができないため、その分自分で意識して食事もしっかり管理していかなければなりません。そこで、産後の食事についてさまざまな角度から詳しくご紹介していきましょう。
産後の食事は大切
産後の食事は、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても、家族にとっても大切なことです。産後の食事をどのように考えるかによって、今後のライフスタイルも身体のスタイルも変わってくると言って過言ではありません。だからこそ、産後の食事は大切に考えておく必要があります。
とはいえ、産後思うように身体が動かず、時間が取れないことが多いため、産後の食事準備に悩みを抱えているお母さんは少なくありません。全てのことを完璧にやろうとせず、少し手抜きでラクにできることを優先することで、長続きできる食事管理を身に着けていきましょう。
期間によって異なる食事の優先順位
産後の食事は、時期によって優先することが変わってきます。産後1ヶ月~2ヶ月の産褥期、産後3ヶ月~6ヶ月、産後7ヶ月~12ヶ月で、何をどう優先すべきなのか、ご説明していきましょう。
産後1ヶ月~2ヶ月
産後1ヶ月~2ヶ月の期間は、産褥期と言われ安静に過ごす必要がある時期です。出産による身体のダメージを修復し、体力を回復させ、広がった骨盤を安定させる必要があるからです。
そのため、この時期の食事はできるだけ家族に作ってもらうようにしましょう。里帰り出産の方は、家事は全て家族に任せるようにしてください。それが難しい場合は、地域のファミリーサポートを活用したり、宅配や惣菜を活用したりして、できるだけ自分は作業せずに栄養を補給するようにしましょう。
産後3ヶ月~6ヶ月
産後3ヶ月~6ヶ月くらいになると、産褥期間が終わり、身体が回復してくる時期です。また赤ちゃんのお世話にも少しずつ慣れて生活リズムも掴めるようになってくるでしょう。
とはいえ、出産前と同じように食事を準備することはまだまだ難しい部分もあります。すべてを手作りしようとせず、1品くらいはお惣菜や冷凍食品などに頼るようにして、適度に息抜きするようにしましょう。
産後7ヶ月~12ヶ月
産後7ヶ月~12ヶ月位になると、赤ちゃんは徐々に離乳食を食べるようになります。そのため、母乳を与える回数が徐々に減ってくるでしょう。
そのため、母乳のために食べていた食事量をキープしていると、脂肪となり太ってしまいやすい危険な時期となります。
母乳の回数が減少するにつれて、食事も少しずつ元に戻していくようにしましょう。
産後に摂るべきカロリーについて
産後の食事において、気になるのがどれくらい食べて良いのか?ということではないでしょうか。妊娠中は体重がどれくらい増えているかを基準にしているので管理しやすいですが、産後は母乳育児かミルク育児かによって変わってきます。
母乳育児の場合
産後、赤ちゃんを母乳育児で育てる場合、1日に必要なカロリーは2000キロカロリーから2500キロカロリーです。
これは、産前のBMIの数値が18.5から25.0までの標準体型の場合です。BMI値が18.5以下の痩せ型の方は少しプラスし、BMI値が25.0以上で肥満型の方は少し減らすようにしましょう。
ミルク育児の場合
産後、赤ちゃんをミルク育児で育てる場合、1日に必要なカロリーは1500キロカロリーから2000キロカロリーです。母乳育児に比べると500キロカロリー減らしたくらいがちょうどよくなります。
母乳により奪われるカロリーがないため、妊娠前の食事量に戻すようにしましょう。
食事のポイントをおさえよう
産後の食事は、栄養面やカロリーが気になりますがまずはポイントを押さえておくことが大切です。産後の食事において、基本となるルールを守っておくことで、管理もしやすくなるでしょう。
食事はできるだけ規則正しく
産後の食事は、産前と同じようにできるだけ規則正しく摂るようにしましょう。朝、昼、晩、間食と食べる時間をある程度決めておくことで、何をどれくらい食べているかを把握しやすくなるからです。
産後は、赤ちゃんのお世話により1回で全ての食事を食べきることができない場合もあります。母乳の場合はお母さんしか与えることができませんが、沐浴やおむつ替えなど他の家族ができることなら任せて、できるだけ食事をしっかり摂れるようにしておきましょう。
水分をしっかり摂ろう
産後は何を食べるか、どれくらい食べるかを意識しがちですが、水分補給も重要です。特に母乳で赤ちゃんを育てる方の場合、多くの水分が母乳により排出されていますので、こまめな水分補給を心掛けるようにしましょう。
ペットボトルやマグカップなどに水を準備しておき、いつでも手を伸ばせば飲めるようにしておくと、脱水症状を防ぐことができます。
幅広く食べよう
産後の食事は、同じものを食べ続けるのではなくいろんな食べ物を幅広く食べるようにしましょう。食べ物によって含まれている栄養素やカロリーは異なるため、さまざまな種類を食べることでトータルバランスが良くなるからです。
栄養に優れているからと1つの食材ばかり食べていると、結果的に栄養は偏ってしまいますので注意するようにしましょう。
お菓子は控えよう
産後の栄養は、基本的に「食事」から摂るようにしてください。育児に追われゆっくり食事ができないとなると、つい手軽に手を伸ばすことができるお菓子を口にする機会が増えてしまいます。
スナック菓子や洋菓子などはカロリーも高く油分も多く含まれているため、食べ過ぎると肥満の元になりますし、必要な栄養も補給できません。小腹が空いた時や、間食したい時は、蒸かしたサツマイモや、フルーツなどを食べるようにしましょう。
刺激物・カフェインは控えめに
産後は妊娠中に我慢していたものを食べたい、と思うお母さんも多いですね。ただ、お母さんの食べたものが母乳の味や質に影響する事を考えると、特定のものを一度に沢山食べたり何日も続けて食べるのは止めた方が良いかもしれません。
カレーやキムチなどスパイスや香辛料の効いた料理は辛い味がそのまま母乳に出てくるわけではありませんが、それでも普段の母乳とは味が異なるため、赤ちゃんが飲むのを嫌がってしまう事もあるそうです。
特にコーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるカフェインは、赤ちゃんが興奮したり不機嫌になるなどの症状が現れます。ただ、1杯程度なら大きな影響は無いと言われていますし、ココアやデカフェコーヒーなどカフェインが少ないものを選ぶなど、お母さんも我慢し過ぎないようにしましょう。
食べ過ぎないようにしよう
産後は、膨らんでいたお腹が縮み、圧迫されていた胃も解放されるため、食欲が旺盛になりやすい時期です。そのため、産後に食べ過ぎて太ってしまう方がたくさんいらっしゃいます。毎食お腹がいっぱいになるほど食べていれば、カロリーオーバーしてしまいますので食べすぎには注意するようにしましょう。
また、母乳のために食べなければと思い込んでしまう方もいらっしゃいますが、母乳育児で必要なカロリーは500キロカロリープラスする程度です。必要以上に食べてしまうと、母乳ではなく脂肪の方がどんどん増えてしましますので、気を付けてください。
産後に必要な栄養について
産後の食事は、できるだけ栄養バランスに優れていることが大切です。出産により消耗してしまった体力の回復や、傷ついた子宮の修復、また赤ちゃんに与える母乳の質を上げるためにも気をつけておく必要があります。産後はどのような栄養を特に気をつけるべきなのか、具体的にご紹介しておきましょう。
鉄分を積極的に摂る
産後の食事でまず意識していただきたいのが鉄分です。出産するとたくさんの血液が赤ちゃんと一緒に体外へと排出されてしまいますし、産褥期間中は悪露が続くため、身体の血液が失われやすくなってしまいます。
また、母乳で赤ちゃんを育てる場合、血液から母乳は作られるので、さらに鉄分が必要になってくるでしょう。鉄分が不足すると、貧血気味になったり血流が悪くなったりしやすいので注意が必要です。
鉄分は、赤血球に含まれるヘモグロビンを作るために欠かせない栄養素です。食べ物からだと、牛肉、レバー、あさり、小松菜、ほうれん草がオススメです。
小松菜やほうれん草などに含まれる植物性の鉄分は、非ヘム鉄でそのままでは吸収しにくくなっています。しかし、かつお節などのタンパク質とポン酢などのビタミンを一緒に摂ることでヘム鉄に変わり吸収がよくなりますので、調理方法を工夫するようにしましょう。
カルシウムを積極的に摂る
産後の食事では、カルシウムも意識して摂るようにしましょう。特に母乳で赤ちゃんを育てる場合、多くのカルシウムが奪われてしまいます。カルシウムの摂取量が少ないと、お母さんの身体の骨からカルシウムが溶け出して母乳にあてられるため、授乳期間を終える頃には骨がもろくなり、虫歯や骨粗しょう症のリスクが高くなってしまいます。
カルシウムは、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品や、小魚、ヒジキ、桜えびなどに含まれているので、積極的に摂るようにしましょう。
タンパク質を積極的に摂る
産後の食事では、タンパク質も意識して摂るようにしましょう。タンパク質は母乳にも必要ですが、産後の身体を回復するためにも必要です。
出産により傷ついた身体の修復を早めてくれるため、産後は積極的に摂るようにしましょう。ただ、肉類からタンパク質を摂ろうとすると脂質を摂り過ぎてしまうことがあるため、魚や大豆製品などを取り入れバランスを保てるようにしましょう。
葉酸を積極的に摂る
産後の食事では、葉酸も意識して摂るようにしましょう。葉酸というと妊娠初期に積極的に摂るイメージがあると思いますが、産後も意識して摂る必要があります。
葉酸は、細胞の分裂や赤血球を作るために必要な栄養素です。産後は子宮をはじめあちこちの細胞が傷ついていますから、葉酸を摂取して修復をスムーズにしていきましょう。
もちろん、赤ちゃんの発育の為にも葉酸は必要不可欠な栄養素ですので、母乳でたっぷり与えるようにしてください。葉酸は、肉のレバーや、枝豆、モロヘイヤなどに豊富に含まれています。
亜鉛を積極的に摂る
産後の食事では、亜鉛も意識して摂るようにしましょう。亜鉛には、細胞の分裂やタンパク質を代謝する時に必要不可欠な栄養素です。出産により傷ついた身体の修復や、赤ちゃんの発育に大きく貢献してくれるでしょう。
亜鉛は、タマゴ、牛のヒレ肉や肩ロース、豚のレバーなどに含まれています。
産後のダイエット食について
産後の食事では、ダイエットを意識している方もいらっしゃるでしょう。妊娠中に食事の管理が思うようにできず、かなり体重オーバーしてしまった方ほど、産後のダイエットを重要視しているのではないでしょうか。
確かに、妊娠中と同じような食事を摂っていると元の体形に戻すことはできませんので、どのように行うべきか、ご説明しておきましょう。
産褥期間後にスタートしよう
妊娠中の体重増加をリセットしたり、産後太りを防いだりするために、産後のダイエットはとても大切です。しかし、だからと言って出産直後から厳しいダイエットを行ってしまうと、身体に必要な栄養素が補給されないため、回復が遅れてしまいます。
基本的に、産後のダイエットは産褥期間が終わってからスタートするようにしましょう。産褥期間中は身体の回復期間ですので、しっかり食べて安静にすることが最も重要です。
バランスよく食べよう
産後の食事でダイエットを試みる方は、ひとつの食材を除くのではなく、全体量を抑えるようにしてください。例えば、炭水化物を抜いたり、肉類を一切食べないようにしたりすると、栄養バランスが崩れ体調や母乳に影響が出てしまうからです。
ひとつの食材や栄養にフォーカスしすぎると、結果的にダイエットをやめたときにリバウンドしやすくなります。それを防ぐためにも、産後のダイエットは栄養バランスを崩さないように注意し、全体量を少し減らし、ひと口ずつよく噛んで食べることを意識するようにしましょう。
まとめ
産後の食事について詳しくご紹介しました。産後は身体が思うように動かず、目まぐるしい育児などでつい食事のことは後回しにしやすくなります。
しかし、産後ほどしっかり食事について考えておくことが必要です。1日でも早く身体を元の状態にまで回復させ、質のいい栄養たっぷりの母乳を赤ちゃんに与えるためにも、どの時期にどんな食事を摂るべきか整理しておくようにしましょう。
また、栄養だけでなくお母さんの食事負担を減らすことも大切です。産褥期間以外の時期でも、食事をすべて作ることは大変な負担になりますので、お惣菜や冷凍食品を活用し、できるだけラクに食事を摂れるようにしましょう。さまざまな角度から産後の食事について考えることで、健やかに産後の生活を送れるようにしてください。