赤ちゃんに湯冷ましをあげることには様々な意見があり、一体どれが本当なの?と迷ってしまう新米お母さんも多いようです。授乳中の赤ちゃんに湯冷ましをあげることは、一昔前まではごく一般的に行われていましたが、現在では授乳中の赤ちゃんには必要ない、という意見もあります。
赤ちゃんに湯冷ましは必要なの?いつからいつまであげればいいの?湯冷ましの正しい作り方とは?赤ちゃんに湯冷ましをあげるタイミングはいつ?など、今回は赤ちゃんの湯冷ましについて知っておきたい情報を幅広くご紹介します。
赤ちゃんの湯冷ましとは?
湯冷ましとは、お水を沸騰させたのちに自然に冷ましたもので、赤ちゃんのミルクを作る際に使われます。日本の水道水には厳密な安全基準があり、そのままで飲める飲料水として適していますが、赤ちゃんに対しては一度煮沸してから常温に冷ましたものを使うことが一般的です。
赤ちゃんに湯冷ましを飲ませるのはどんなとき?
湯冷ましのもっとも大切な用途は、ミルクを作るときに使うことですが、他にも湯冷ましを使う場面はあります。たとえば下痢や嘔吐により体の水分を大量に失ったとき、母乳の飲みが悪く水分摂取量が不足しているときなどに、赤ちゃんに湯冷ましを与えます。
さらに離乳を始めた赤ちゃんに対しては、母乳やミルクの摂取量が減るため、水分を補う目的で、湯冷ましや果汁などの水分を与えることが必要になります。
以上のことから、いくつかのシチュエーションにおいては、赤ちゃんの湯冷ましが必要なことが分かりますが、では赤ちゃんに湯冷ましは必要ない、といわれるのはなぜでしょうか?
赤ちゃんに湯冷ましは必要なの?
赤ちゃんに湯冷ましをあげることに関しては賛否両論、様々な意見があります。一昔前の時代に子育てを経験した方にとっては、乳児に対しても湯冷ましをあげることが常識でした。
昔は飲み水として井戸水を利用することがあり、雑菌などを殺菌する目的で煮沸が行われていました。また当時の赤ちゃん用の粉ミルクは、現在のものと違い、牛乳に近い成分構成を持ち、タンパク質やミネラルの割合が高いという特徴がありました。このため、これらの成分を薄めるために、赤ちゃんに湯冷ましを与えていた、というわけです。
授乳中の水分補給は必要ない?
現在では粉ミルクは母乳の成分に限りなく近く作られていますので、湯冷ましをあげて成分を薄める、といった配慮は必要ありません。生後すぐの赤ちゃんに湯冷ましを与えなければならない、というのは過去の時代の話で、現在では医学的な必要がない限り、授乳中は余分な水分を与える必要はない、とされています。※参照1
母乳に含まれる水分量の割合は約88%ですので、十分な量の母乳を飲んでいれば、必要な水分量は確保できています。ミルクの場合も同様で、粉ミルクを湯冷ましで溶いて作りますので、赤ちゃんがきちんとミルクを飲んでさえいれば、余分に水分を与える必要はありません。
ただし、下痢や嘔吐をしているときなど、一時的に水分補給が必要になることもあります。このような場合はまずかかりつけの医師に相談し、指示を仰ぎましょう。
下痢や嘔吐で大量の水を失うと、水分だけでなく電解質も一緒に失い、脱水症状に陥る可能性があります。この場合はお水ではなく、赤ちゃん用の経口補水液を与える必要がありますので、判断に迷ったときは迷わず医師の診察を受けさせましょう。
授乳中に湯冷ましをあげるのはNG?OK?
母乳・ミルクを飲んでいる赤ちゃんに対しては、特別な理由がない限り、湯冷ましをあげる必要はありませんが、湯冷ましを絶対にあげてはいけない、というわけではありません。たとえばミルク栄養の赤ちゃんの場合、入浴後に湯冷ましをあげるお母さんもいます。
ミルク育児の場合
ミルク育児の場合、赤ちゃんの体重や月齢に合わせて、1日に必要なミルクの量を計算します。ミルク育児の場合、1日に飲ませるミルクの量は決まっており、この量を超えてミルクをあげることは、あまり望ましくありません。
母乳は消化がよく、基本的に赤ちゃんが欲しがるときに好きなだけあげていい、とされていますが、これとは反対に消化に時間のかかるミルクは、1日にあげる量が決められており、その上限量を超えてミルクを与えると必要摂取量を上回ってしまいます。
赤ちゃんの胃腸の機能はまだ未発達なので、消化吸収に時間のかかるミルクは、一定の間隔を置いた上で飲ませることが必要です。
ミルク栄養の赤ちゃんに湯冷ましをあげる際のポイント
入浴後や外出から帰宅したあと、赤ちゃんがミルクを欲しがっている、でも今ミルクを飲ませると、1日の上限量を超えてしまう。こんな場合は、ミルクではなく、湯冷ましをあげたほうがいい、と判断するお母さんもいます。
湯冷ましをあげるときは、スプーンで少しずつあげましょう。赤ちゃんが欲しがるからといって、たくさん湯冷ましを飲ませると、ミルクの成分が薄まり、摂取した水分の比重に比べて、栄養価が低くなりすぎるおそれがあります。
ミルクを飲んでいる赤ちゃんに湯冷ましをあげる際には、飲ませる量に注意し、飲ませ過ぎないようにしましょう。赤ちゃんの中には湯冷ましをたくさん飲んでしまい、ミルクの時間になってもなかなか飲んでくれない子もいます。
湯冷ましを飲ませたために、赤ちゃんの唯一の栄養源であるミルクを飲む量が減ってしまうのは本末転倒。ミルクを飲んでいる赤ちゃんに湯冷ましをあげるときには、この点に十分に注意しましょう。また赤ちゃんが嫌がる場合はあげる必要はありません。離乳前の赤ちゃんに湯冷ましをあげるポイントは、たくさん与えすぎないことです。
授乳中の赤ちゃんへの湯冷ましはいつからあげるの?
赤ちゃんへの湯冷ましは、通常生後2、3ヶ月目からあげることが一般的です。生後すぐの赤ちゃんはまだ胃腸の機能が未発達で、母乳やミルク以外のものをあげることは望ましくありません。
生後2、3ヶ月目になり、赤ちゃんの成長が順調で、母乳・ミルクの飲みが良ければ、状況に応じて湯冷ましを少し飲ませてもいいでしょう。
赤ちゃんに湯冷ましをあげるタイミング
赤ちゃんに湯冷ましをあげる絶好のタイミングは、入浴後やたくさん汗をかいたとき。赤ちゃんの体から水分がたくさん失われたときが、湯冷ましをあげて、失った水分を補給してあげなければなりません。
反対にあげないほうがいいのは、授乳前。授乳前に湯冷ましを与えると、授乳時に十分な量のミルクを飲めず、必要な栄養を摂取できません。おなかがすいているときや、授乳時間の直前の湯冷ましはNGです。
離乳中の水分補給
離乳は初期、中期、後期、完了期の4期に分けられます。離乳は少しずつ段階を追って進めるべきものなのです。
離乳初期では、母乳やミルクの量は減らさず、離乳食は1日1回ごく少量を与えますが、離乳中期に入ると離乳食は1日2回になり、さらに後期には1日3回に増やします
。離乳食を食べる量が増えるにつれて、母乳やミルクを飲む量は少なくなってきますので、水分補給が必要になってきます。離乳食を食べたあとは虫歯予防も兼ねて、湯冷ましや麦茶をあげましょう。
湯冷ましの作り方と注意点
湯冷ましは水道水を沸騰させるだけで簡単に作ることができます。ここでは湯冷ましの作り方や注意点について詳しくみていきましょう。
湯冷ましを作る手順について
湯冷ましの作り方は簡単。水道水を5分から10分程度沸騰させ、そのまま常温になるまで冷まします。水道水には殺菌のために塩素やカルキが含まれていますが、沸騰させることで独特のにおいがなくなります。沸騰させたお湯は、そのまま冷まし、その後別の容器に移して保存するか、熱いまま保存容器に移し替えます。
湯冷ましはミネラルウォーターで作ってもいいの?
水道水ではなく、ミネラルウォーターで湯冷ましを作るのはいいのでしょうか?当然ですがミネラルウォーターには、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれています。
カルシウムやマグネシウムは赤ちゃんの未熟な胃腸に負担をかけ、赤ちゃんのおなかの調子を悪くするおそれがあります。ミネラルウォーターに含まれるカルシウムやマグネシウムの割合は、硬度であらわされます。
硬水と軟水について
ミネラルウォーターは含まれているミネラルの比率によって、硬水と軟水の二種類に区別されます。硬水はミネラルの含有率が高く、これは赤ちゃんの飲み水には適しません。
日本のミネラルウォーターはほとんどが軟水ですが、海外産のミネラルウォーターの中には硬水が多く、その中でもさらに硬度の高いタイプも売られています。赤ちゃん用に購入する際には、この点に十分注意しなければなりません。赤ちゃんにミネラルウォーターをあげたい場合は軟水を選びましょう。
湯冷ましの保存容器について
保存容器として適しているのは、殺菌消毒のできるもの。プラスチックのボトルは雑菌が繁殖しやすく、容器をそのまま煮沸消毒することができません。プラスチックのボトルを利用する場合には、煮沸の必要のない、つけおきタイプの洗剤で消毒するなどの工夫が必要です。
耐熱性のガラス容器、抗菌効果のあるベビー用哺乳瓶、魔法瓶など、湯冷ましの保存に使用する容器は、各家庭によってさまざまです。
湯冷ましの保存に適した容器とは、殺菌消毒をしやすいこと、雑菌が繁殖しにくい素材で出来ていること、パーツが少なく洗いやすいことなど。湯冷ましは赤ちゃんのミルクに使う大切なお水。保存をする際には、雑菌が繁殖しないようにくれぐれも注意しましょう。
湯冷ましの保存期間について
湯冷ましは作ったその日に使い切りましょう。水道水は沸騰させることにより、塩素やカルキのにおいがなくなり、赤ちゃんの胃腸への負担は減りますが、その代わり殺菌作用のある塩素の効果がなくなります。
このため長時間保存すると、雑菌が繁殖する可能性がありますので、湯冷ましは作ったその日限定で使用し、余った場合は処分し、新しく作りなおしましょう。
まとめ
赤ちゃんの湯冷ましについて知っておきたい情報を幅広くご紹介しました。湯冷ましは母乳やミルクを飲んでいる間は原則的には必要ありませんが、離乳期からは与える機会がぐっと増えます。
水分補給として、また虫歯予防として、湯冷ましは赤ちゃんの生活に欠かせない大切なもの。湯冷ましの作り方や保存方法を今一度確認し、赤ちゃんの水分補給に役立てましょう。
※参照1 厚生労働省 授乳・離乳支援ガイド