赤ちゃんのダウン症について知っておきたいこと

ダウン症の赤ちゃんについて知っておきたいこと 赤ちゃん 生活

初めての妊娠に戸惑い、出産で奮闘し、産まれたばかりの赤ちゃんと対面すると、ほっと一安心しますよね。しかし、赤ちゃんと過ごすようになってから、ふと他の子とは違う点が気になってくることがあります。中には「もしかしたらダウン症では?」と感じることもあるでしょう。

ただ、ダウン症という言葉は聞いたことはあるけれど、よくわからないという方も多いと思います。そこで、ダウン症の特徴、赤ちゃんがダウン症を持っているかどうか、またダウン症の場合はどう対処していくべきかについて考えていきましょう。

ダウン症について

ダウン症について

そもそもダウン症とはどのようなことを指すのでしょうか。病気や異常などさまざまな言われ方をしていますが、正式にはダウン症候群といい、大きな原因は染色体の数が異なって生まれてくることが関係しています。

人間の身体には22対の常染色体と、性別を決定する2本の染色体があります。通常なら、合計46本の染色体をもって産まれてきますが、ダウン症の場合21番目の染色体が1本多く、3本になっています。

染色体の数が増える理由

ダウン症は、21番目の染色体が1本多く、3本になることから引き起こされるものです。では、染色体の数が1本増える原因としては、何があるのでしょうか。

主な原因とされているのは、精子や卵子がつくられる時に染色体の分離が滞り、染色体異常を引き起こすことが大きな要素とされています。染色体異常は、誰かのせいで起きるものではなく、偶然起きてしまうものです。割合としては、800人~1000人に1人、ダウン症が起きると言われています。

昔は、ダウン症の赤ちゃんが生まれると母親が責められる傾向にありましたが、今はだれの責任でもないと考えられるようになりました。

ダウン症は妊娠中からわかる?

ダウン症は妊娠中からわかる

赤ちゃんがダウン症かどうかは、実は生まれる前から知ることができます。出生前診断として、話題になったのでご存知の方も多いかもしれませんが、簡単に説明しておきましょう。

検査では、妊娠15週〜16週あたりから行うことができ、超音波診断、羊水検査、じゅう毛検査、トリプルマーカーテスト、臍帯血検査などで診断することができます。この段階でダウン症だと判明した場合、妊娠を継続するか中絶するかで考え方が大きく異なるようです。

産まれる前にダウン症かどうかを判断することは、命の倫理面から意見が大きく分かれるため、検査を実施していない病院も多くあります。安易に検査を受けてしまうと、思わぬ結果を突き付けられ、悩み苦しむこともあるかもしれませんので、よく考えたうえで実行するようにしましょう。

高齢出産とダウン症との関係

高齢出産とダウン症

ダウン症の赤ちゃんが生まれる割合は、800人~1000人に1人とご紹介しました。一般的に、高齢出産になるとダウン症の確率が上がると言われていますが、実は確かな根拠は報告されていないのです。

高齢出産になると、排卵のリズムが不規則になったり、流産してしまったりする可能性が上がることはありますが、若いお母さんからもダウン症の赤ちゃんが産まれることもあるため、高齢出産だからダウン症の確率が上がるということはないのです。ただ、そもそも高齢出産する女性が少ないため、統計的にはダウン症の赤ちゃんを出産する割合が高い結果となってしまいます。

18歳のお母さんが100人出産している場合の数値と、38歳のお母さんが10人出産している場合の数値では、公平に比較することはできないと言えるでしょう。このことからダウン症の赤ちゃんは、若いお母さんからも高齢出産のお母さんからも、平等に産まれてくる確率があると言えるのです。

ダウン症赤ちゃんの特徴について

ダウン症の特徴について

ダウン症の赤ちゃんが生まれてくる確率は、800人~1000人に1人とご紹介しました。では、具体的にダウン症の赤ちゃんにはどのような特徴があるのでしょうか。

ダウン症赤ちゃん顔

まず、ダウン症と言えば顔に独特の特徴がみられます。パーツごとの特徴としては、鼻が低い、切れ長の短い目をしている、目尻が斜め上につり上がっている、上まぶたと下まぶたに厚みがあり、ぱっちりとした二重をしている、舌が長い、口が開いている、耳が小さくて目のラインよりも低い位置についている、後頭部が絶壁になっている、などがあります。

全体的に平坦な顔立ちで、一目でダウン症とわかりやすいことが多いため、顔の特徴はダウン症と判断される主要な材料にもなっています。

身体的な特徴について

ダウン症の赤ちゃんの特徴として、顔を取り上げましたが、次は身体的な特徴もご紹介しておきましょう。まず、身体の特徴として猿線があります。

猿線とは、手のひらのシワのことで、人差し指の下あたりから、小指の下にかけて横にまっすぐ1本太いシワが刻まれているのが特徴です。

ダウン症の赤ちゃんの手のひらに現れることが多いですが、ダウン症ではない赤ちゃんにもある場合があります。また、小指の骨が一つ足りないことから曲がっていたり、親指と人さし指のあいだが少し開いていたり、全体的に指が短いのも特徴だと言えるでしょう。
また、ダウン症の赤ちゃんの首は太く、短くて腫れぼったい様子であることが多く、シワが深く刻まれています。

発育のスピード

発育のスピード

ダウン症を持って生まれてきた赤ちゃんは、低体重であることが多く発育のスピードも緩やかになります。特に、筋肉が発達するスピードが緩やかなため、授乳のときに吸う力が弱かったり、歩き始めるのが2歳を過ぎたりすることがあるようです。

知的な発達も緩やかで、他の赤ちゃんの平均が100としたら、知能指数は30~59、社会生活能力指数は60~70になることが多いです。

病院でダウン症の赤ちゃん用に、成長グラフも教えてもらえるので、そちらを参考にすると発育に不安を感じることは少なくなるでしょう。また、ダウン症の赤ちゃんはあまりに泣くことがないため、育児としては手がかからないことが多いようです。

ダウン症の赤ちゃんは人見知りしない?

ダウン症の赤ちゃんは人見知りしない?

赤ちゃんは抱っこされるだけでは好奇心が発達しません。寝返りやハイハイなど自分の身体を動かして世界を広げていくのが、心身の成長にはとても大事なのです。

ダウン症の赤ちゃんの場合は首のすわりや寝返りなど全てにおいてスローペースで成長し、また手のかからない大人しい赤ちゃんが多いため他人との係わり合いが少ないのも影響して、そのような気持ちが小さいと言われています。

外に向かう気持ちが小さいために、全くの他人でも泣かずに抱かれ人見知りを全くしないダウン症の赤ちゃんも多いです。しかしゆっくり成長するにつれて人見知りをするようになってくるので、その時は赤ちゃんが外の世界を広げられるようしっかり見守ってあげてください。

病気に合併症ついて

病気に合併症ついて

ダウン症を持って生まれてきた赤ちゃんは、短命で病気にもかかりやすいと言われてきました。しかしそれは昔のことで、医学の進歩により寿命は延び、病気にもかかりにくくなってきています。

心疾患や糖尿病、近視などさまざまな合併症が確認されていますが、全てのダウン症を持つ赤ちゃんにそれが起きるというわけではありません。中には病気にかからず成長していく場合もありますし、ダウン症の子には喘息や癌が発生しにくいという報告もあるのです。

ダウン症ということで、病気に対して過敏になる必要はありませんが、他の赤ちゃんと同じようにさまざまな体調の変化はきちんと観察しておく必要があるでしょう。

ダウン症の程度による特徴の違い

ダウン症にも程度によって違いが現れます。染色体のつき方によって程度が異なる場合と、医師が提示するIQテストなどを行い知能で程度を分ける場合で、社会的能力においてはこのテストを受けた8割弱のダウン症患者が軽度となっています。

また軽度の方はダウン症の特徴が顔に現れず、合併症の発症もありません。周りも自身も気づかないまま成長し、高校・大学・社会などで身体能力・知識などの遅れが目立つため検査をしたらダウン症だと発覚した、というパターンもあります。

赤ちゃんがダウン症と聞くとショックを受ける方がほとんどですが、このようなケースも少なくないと覚えておきましょう。

ダウン症の種類

ダウン症の種類

ダウン症の特徴として、さまざまなことをご紹介してきましたが、ダウン症にも種類があることをご存知でしょうか。

ダウン症のほとんどが「標準トリソミー型」と呼ばれるもので、顔や身体に共通の特徴が現れます。ダウン症を持って生まれる赤ちゃんの、ほとんどが、この「標準トリソミー型」です。最初にご説明した通り、染色体の数が1本多いことから発生します。

これ以外のダウン症としては「転座型」というものがあります。標準トリソミー型の場合は21番目の染色体の数が1本多いことで発生していますが、転座型の場合は21番目の染色体が他の染色体とくっついた状態により発生します。

最後に、わずかな割合として「モザイク型」もご紹介しておきましょう。非常に珍しいタイプのダウン症です。

通常の細胞と一緒に、染色体異常のものが混ざっている状態になっており、全体において染色体異常の割合が低いほど、ダウン症の症状は軽いとされています。

ダウン症は遺伝する?

ダウン症の赤ちゃんが生まれると、次の赤ちゃんもダウン症になるのではと考えてしまいます。しかし、多くのダウン症の赤ちゃんが標準トリソミー型なので、偶然ダウン症になってしまったことがほとんどです。

ただ、生まれた赤ちゃんが転座型のダウン症だった場合、両親の染色体異常が関係しているため、次の赤ちゃんにもダウン症が発生する可能性があります。

数パーセントの割合ではありますが、ゼロではありませんので、一度検査で両親の染色体を調べてみると良いでしょう。

ダウン症は個性

ダウン症は個性!

ダウン症で生まれた赤ちゃんに対する治療法はありません。しかし、さまざまな個性を伸ばすためのサポートを受けることはできます。

ダウン症を病気だと思う方も多いですが、生まれながらにして授かった個性と捉えるべきでしょう。スポーツ万能な赤ちゃんもいれば、食べるのが大好きな赤ちゃんや、音楽が得意な赤ちゃんもいるでしょう。さまざまな個性がある中のひとつとして、ダウン症を捉えることができれば、のびのびと成長させてあげることができるのではないでしょうか。

実際に、ダウン症を持って生まれている人でも、芸術や研究などの分野で才能を発揮している人たちはたくさんいます。ダウン症だからできないと決めつけるのではなく、さまざまな個性や可能性を広げてあげるようにしましょう。

支援制度を活用する

支援制度を活用する

ダウン症の赤ちゃんはすぐに体調を崩しやすいので、定期検査や時によっては入院・手術など、時として大きな出費になる事があります。

しかし国や自治体の手当てや補助は充実していますので、居住している自治体のサービスなどをしっかり確認して受け取れるようにしましょう。

生後20日から申請できる療育手帳は程度によって3つに区分されていますが、ダウン症の赤ちゃんに対する相談や支援を受けるためには必要不可欠なものですので、きちんと申請しましょう。

また、特別児童扶養手当や医療費助成など金銭面で大きなサポートとなる制度がありますので、将来に対して不安にならずにきちんと情報を集めてください。

まとめ

ダウン症に関するさまざまな情報を幅広くご紹介しました。知っているようで知らないこともたくさんあったのではないでしょうか。

ダウン症の特徴を知ることで、赤ちゃんがダウン症かどうか見た目で判断することはできますが、自分で判断して決めつけてしまわないようにしましょう。ダウン症の可能性があると感じたときは、病院にいって診断してもらうようにしてください。

ダウン症だと診断されたとしても、きちんとサポートをしていけばのびのびと健やかに育っていきますし、いろんな分野で才能を発揮することも可能です。ダウン症という言葉に捕らわれず、赤ちゃんの可愛さに正面から向き合うことが、何よりも大切ではないでしょうか。