赤ちゃんの呼吸が荒いときに知っておきたいこと

赤ちゃんの呼吸が荒い・苦しそうなときに知っておきたいこと 原因 特徴 注意点 対処方法 など 赤ちゃん 仕草

赤ちゃんの呼吸が荒く、苦しそうな様子をしている。風邪を引いたのか、それとも心臓や肺に問題があるのか、側で見ているお母さんにとっては非常に心配な状態です。

赤ちゃんの呼吸は大人よりも回数が多く、また風邪や鼻づまりなどにより、呼吸が少し荒くなることがあります。鼻づまり程度であればさほど心配はありませんが、呼吸困難や喘息の症状によるものであれば、自己判断はせずに病院で診察を受けたほうが安心です。

赤ちゃんの呼吸の特徴から、呼吸が荒くなる原因、注意点、そして対処法など、いろいろな情報を詳しくご紹介していきたいと思います。

赤ちゃんの呼吸について

赤ちゃんの呼吸について

大人の呼吸の回数は一分間に12回から18回程度ですが、新生児の呼吸の回数は大人の約2.5倍、40回から50回程度が標準的で、場合によってはもう少し回数が多いこともあります。

赤ちゃんの呼吸の回数は成長とともに徐々に少なくなり、幼児期に入ると一分間に20回から30回程度に減っていきます。

赤ちゃんの呼吸回数が多い理由とは?

赤ちゃんの呼吸回数が多い理由とは?

生まれたばかりの赤ちゃんの肺の機能はまだ完全に整っていません。一回の呼吸の換気量が非常に少ないために、呼吸の回数を増やすことで必要な酸素を取り入れています。

一回の呼吸の換気量が少なく呼吸の回数が多いため、赤ちゃんの呼吸は浅く・短いという特徴であらわせます。大人からみると赤ちゃんの呼吸は速すぎるように感じられますが、赤ちゃんの呼吸の回数が多いのは普通のことで、これだけをもとに呼吸困難と自己判断を下すことはできません。

赤ちゃんの呼吸に異常が発生しているかどうかを見極めるには、普段から赤ちゃんの呼吸の仕方や回数などについてしっかりと観察しておくことが重要です。

赤ちゃんの呼吸が荒いのは鼻づまりが原因?

赤ちゃんの呼吸が荒いのは鼻づまりが原因?

生まれたばかりの赤ちゃんはまだ口から呼吸することができません。赤ちゃんがお母さんのおっぱいや哺乳瓶から口を離さずに飲み続けることができるのは、赤ちゃんが上手に鼻呼吸を行っているから。つまりなんらかの原因により鼻づまりになると、うまく呼吸が出来ずに、呼吸が荒くなったり、苦しそうにします。

赤ちゃんの呼吸が荒く、苦しそうな素振りをしたり、鼻をフガフガさせているときは、まず鼻づまりをおこしていないか確認してあげましょう。授乳中にミルクを飲みにくそうにしていたり、ミルクの飲みが悪い場合にも鼻づまりが疑われます。

赤ちゃんの鼻づまりの原因とは?

赤ちゃんの鼻づまりの原因とは?

赤ちゃんの鼻は小さく、空気の汚れや乾燥に対して非常に敏感に反応します。鼻水の役割は鼻腔内を加湿し、外部からの異物をシャットアウトすること。風邪を引くと鼻水の分泌が増えるのは、鼻水と一緒に風邪のウイルスや体内に入ると望ましくないものを排出させるため。

鼻水に一定の役割があるのは確かですが、鼻水がだらだら出るをそのままにしておくと、炎症が起こり鼻づまりになることがあります。※参考2

赤ちゃんの鼻づまり対策とは?

赤ちゃんの鼻づまり対策とは?

赤ちゃんの呼吸が普段よりも荒く、苦しそうにしているときは、まず鼻づまりがないかどうか確認してあげしょう。

鼻づまりがある場合には、赤ちゃん専用の鼻水吸引器ややわらかく小さなコットンで優しく取ってあげるようにします。このとき無理に取るのは絶対にやめましょう。固くなった鼻腔内の汚れを無理に出そうとすると、鼻の中を逆に傷つけてしまいます。

この方法で取れない場合には、お風呂に入れてやわらかくするといいでしょう。温かく蒸したタオルやガーゼを赤ちゃんの鼻に当てる方法もあります。

ゲップが出ないことが原因の場合も

ゲップが出ないことが原因の場合も

母乳やミルクを飲ませた後は、きちんとゲップをさせていますか?ある程度抱っこして背中をポンポンしてもゲップしないと、大丈夫と判断して寝かせてしまうかもしれません。

中々ゲップが上手くできない赤ちゃんもいて、ゲップをさせないまま寝かせてしまうと、母乳やミルクと一緒に飲み込んだ空気が圧迫して、呼吸の上手でない赤ちゃんは苦しくなって呼吸が荒くなってしまうことがあります。更に、沢山飲んでゲップをさせないと、寝たまま吐いてしまうこともあります。

赤ちゃんの呼吸困難の症状について

赤ちゃんの呼吸困難の症状について

赤ちゃんの呼吸の仕方が普段とは明らかに異なり、異常な場合は、できるだけ早く専門医に相談するほうが安心です。赤ちゃんの呼吸困難の症状とはどのようなものか、きちんと把握しておくようにしましょう。

赤ちゃんの呼吸の回数が、大人に比べるとはるかに多いことはすでに述べたとおり。呼吸の回数が大人よりも多いのは問題ありませんが、それと呼吸困難の症状とは根本的に異なります。

赤ちゃんの呼吸困難の症状についてみてみましょう。

多呼吸

多呼吸とは呼吸の回数が著しく多い状態を指します。赤ちゃんの場合、一分間に60回以上、幼児の場合は40回以上になった場合を多呼吸とよびます。いざというときに多呼吸かどうかすぐに判断できるように、普段から赤ちゃんの呼吸の様子や回数などについて把握しておくことが大切です。

肩呼吸

肩呼吸とは走ったあとのように、肩を動かし呼吸をしている状態を指します。

陥没呼吸

陥没呼吸とは息を吸うときに胸が膨らまず、みぞおちや肋骨の間、鎖骨の上の部分、のどの下部分がへこむ状態を指します。

シーソー呼吸

正常な呼吸では息を吸うときに、胸とおなかの両方が膨らみ、息を吐くときにへこみますが、シーソー呼吸では息を吐いたときに胸がくぼみ、おなかがふくらみます。

鼻翼呼吸

鼻翼呼吸とは呼吸につれて、鼻の穴がぴくぴくと動く状態を指します。

その他の症状について

以上に挙げたのが主な呼吸困難の症状になりますが、これに加えて咳が激しく、眠ることもできない、顔色が悪くぐったりしている、唇や爪の先が青白くなるチアノーゼ、喉がゼイゼイ、ヒューヒューしている場合、高熱があり、呼吸が荒いなど、普段とは明らかに異なる症状があらわれた場合には、自己判断せず専門医の判断を仰ぐことが必要です。※参考1、2、3

時間外でも病院に行ったほうがいいかどうかの判断

時間外でも病院に行ったほうがいいかどうかの判断

夜間や早朝の病院の診療時間外に赤ちゃんの呼吸が苦しそう。いますぐ病院に行ったほうがいいのか、それとも翌朝まで待って大丈夫なのか、お母さんとお父さんにとっては大きな決断を迫られる問題です。

赤ちゃんの呼吸が荒く、ぐったりしていて、上に挙げた呼吸困難の兆候が見られる場合には、時間外であっても診察を受けたほうが安心です。また高熱が出ている、咳がひどく眠れない、唇や顔色が青白い、時々呼吸が止まるなどの場合にも、その場で病院に連絡するようにしましょう。

赤ちゃんの呼吸に異常があったときに即座に気がつくようにするには、普段から赤ちゃんの呼吸の回数や様子についてじっくり観察しておくことが絶対に必要。

かかりつけの病院の夜間の連絡先や、お住まいの地域の24時間体制の救急連絡センターや小児救急相談の電話番号など、緊急の際に役立つ連絡先を日ごろから見やすい場所にメモしておくことも大切です。また赤ちゃんの呼吸に関してなにか気になることがあれば、かかりつけの小児科医に尋ね、正確な知識を得ておくようにしましょう。※参考4

赤ちゃんの呼吸が荒い時に疑われる病気とは?

赤ちゃんの呼吸が荒い時に疑われる病気とは?

風邪や鼻づまり、痰づまりといった単純な原因以外にも、赤ちゃんの呼吸が荒い・苦しそうになる原因があります。赤ちゃんの呼吸が荒い・苦しそうなときに疑われる病気や症状について挙げてみましょう。

喘鳴(ぜんめい)とその原因について

喘鳴とは呼吸がゼイゼイ、ヒューヒューと苦しそうな状態を指します。喘鳴は急激に気温が変化する季節や時刻に起こりやすい症状で、なんらかの原因により気道が狭まることにより生じます。

赤ちゃんは大人に比べると気道が狭く、ちょっとしたことで喘鳴が起こりやすくなっています。喘鳴の原因は気管支炎、喘息、細気管支炎、クループなど。喘鳴の症状だけをもとに自己判断で原因を特定することはできませんので、専門医に詳しく診察してもらうようにしましょう。

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症とは、RSウイルスにより気道に感染が生じるもので、感染が起こった場所によって呼び名が異なります。気管支で起こったら気管支炎・細気管支炎、咽頭で起こった場合はクループ、肺の場合は肺炎と呼ばれます。

大人の方もRSウイルスに感染しますが、赤ちゃんの場合重症化することも多く、早めに治療を受けることが必要です。参照5、6

小児喘息について

喘息とは外部からのさまざまな刺激により、気管支や気管が過敏な反応を示し、気道が狭くなる症状を指します。気管支や気管の粘膜が腫れ、痰も増えます。

症状としては、呼吸がゼイゼイする喘鳴、咳、喘鳴以外の呼吸困難の症状、痰などで、喘息はアレルギーによっても生じます。赤ちゃんの喘息はアレルギーとの関連も強く、風邪だと思っていたら、実はアレルギー性喘息だった、というパターンも見受けられますので、咳や喘鳴が続く場合は必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

新生児の呼吸窮迫症候群について

呼吸窮迫症候群とは早産で生まれた低体重の赤ちゃんによく見られる症状で、肺サーファクタント(肺表面活性物質)が不足することにより起こります。

肺サーファクタントは肺の内部にある肺胞を拡張した状態に保つ物質で、妊娠32週目ころから作られます。早産で妊娠32週目以前に生まれた赤ちゃんには、この肺サーファクタントの量が十分でなく、このため赤ちゃんがうまく呼吸できない状況が生じます。

新生児の呼吸窮迫症候群の症状について

呼吸窮迫症候群の症状は、呼吸がはやくなる多呼吸、顔色や唇が青白くなるチアノーゼ、陥没呼吸などになります。※参考7

新生児の一過性多呼吸について

新生児の一過性多呼吸は肺の中に過剰な液体があるために、呼吸が正常に行われずに呼吸困難になる症状を指します。

症状としては多呼吸、息を吸う際に胸がへこむ陥没呼吸、チアノーゼ、息を吐く際にうめくなどになります。治療の基本は酸素投与ですが、一過性の症状ですのでほとんどの場合、数日間以内に症状が無くなります。※参考8

赤ちゃんの呼吸が睡眠中に荒くなる場合

赤ちゃんの呼吸が睡眠中に荒くなる場合

赤ちゃんの呼吸が睡眠中に荒くなり、いびきをかいている。こんな場合の注意点はまず呼吸困難の兆候がないかどうか確認することです。多呼吸、陥没呼吸、シーソー呼吸といった兆候がある場合には、できるだけ早く専門医に相談することが必要です。

このような症状がなく、単なる鼻づまりや痰がつまっている場合であれば、上記に挙げたように蒸しタオルで鼻をあたためる、鼻水吸引器で鼻水を優しく吸い取ってあげるようにしましょう。

赤ちゃんの環境づくりをする

赤ちゃんは鼻が小さく、鼻づまりになりやすいので、普段から赤ちゃんのいる部屋の気温や湿度に注意することが大切です。赤ちゃんに快適に過ごしてもらう上での注意点や対処法について挙げてみました。

部屋の加湿を行う

部屋の加湿を行う

部屋の空気の乾燥は赤ちゃんの喉を痛め、鼻づまりを起こす原因のひとつ。そればかりでなくアレルギー発症の原因にもなりますので、普段から赤ちゃんのいる部屋の湿度に配慮してあげましょう。

赤ちゃんにとって快適な湿度は40%から60%程度。空気が乾いてくる冬の季節や、冷房・暖房を入れている部屋はとくに注意。乾燥は皮膚のかゆみやかぶれなどのトラブルの原因にもなります。加湿器を利用する、エアコンの湿度調整機能を使う、濡れたタオルなどを室内に干すなど、部屋が乾燥しないよう、十分配慮しましょう。

部屋の換気を行う

部屋の換気を行う

加湿だけでなく、部屋の換気もこまめに行うようにしましょう。部屋の換気を行うことにより、よどんだ空気を排出し、新鮮な空気を取り込むことができます。

部屋の掃除をこまめに行う

部屋の掃除をこまめに行う

目に見えない埃やダニの死骸はアレルギーの原因になります。部屋の掃除もこまめに行い、アレルゲンとなる可能性のあるものを赤ちゃんの側からできるだけ排除するようにしましょう。

アレルゲンの原因になるのはダニやノミ、埃、ペットの毛、カビ、花粉など。部屋の床だけでなく、赤ちゃんの布団やおもちゃなどにも十分注意しましょう。

まとめ

赤ちゃんの呼吸が荒く、苦しそうなときに知っておきたいいろいろな情報をあげてみました。赤ちゃんの呼吸は大人よりも回数が多いことが特徴。月齢が上がるにしたがって徐々に一回の呼吸の換気量が増え、呼吸の回数は減っていきます。

赤ちゃんの呼吸の回数の標準は40回から50回程度、この範囲内におさまっていて、他に異常な点がなければ不安に思う必要はありません。ただし赤ちゃんの呼吸が荒く、苦しそうなときに考えられるトラブルや病気はさまざまです。呼吸困難の症状が見られる場合には、できるだけ早めに専門医の診断を受けることが必要です。

参考1 日本小児感染症学会 小児呼吸器感染症ガイドライン小児
参考2 日本医師会 白クマ先生のこども診療所
参考3 恵那地域小児緊急支援体制検討会 こどもの救急ガイドブック
参考4 横浜市小児科医会 小児救急のかかりかた ハンドブック
参考5 日本医師会 白クマ先生のこども診療所 RSウイルス感染症
参考6 日本小児科学会 RSウイルス感染症について
参考7 国立感染症研究所 RSウイルス感染症とは
参考8 MSDマニュアル家庭版 呼吸窮迫症候群