赤ちゃんを育てるなら、やっぱり母乳で育てたい!と考えている方は多いのではないでしょうか。母乳を与えることができるのはお母さんの特権ですし、母乳にはたくさん良いことが含まれているので、率先して母乳育児にしたいと考える方も多いと思います。
しかし、母乳育児を開始すると、さまざまな苦労にビックリされることも多いでしょう。母乳が出にくかったり、赤ちゃんが上手く吸えなかったりいろんなトラブルがありますが、特に心配なのが乳腺炎です。
乳腺炎とはいったいどのようなものなのでしょうか。そこで、乳腺炎の症状や、対処方法、乳腺炎にならないための予防など幅広くご紹介していきたいと思います。
母乳育児の宿命?乳腺炎
乳腺炎になる原因はさまざまですが、母乳を与えている限り乳腺炎になる可能性は誰にでもあります。母乳育児を志すお母さんにとっては、乳腺炎は宿命の症状だと言えるでしょう。
ただ、乳腺炎の仕組みを理解し、適切に対処し、予防していけば防ぐことは可能なものです。まずは乳腺炎とはどのような症状なのか、具体的に見ていきましょう。
いつから乳腺炎に注意するべきか?
乳腺炎には気をつけるようにと言われますが、一体いつから気をつけるべきなのでしょうか?妊娠中から初乳が出ていた方でも、本格的に母乳が出始めるのは出産後2日~5日と言われています。
ちょうど入院期間に当たるこの時期に、胸の張りに伴う授乳のタイミングなどを指導してもらうと、乳腺炎になっても早めの対応ができます。
母乳量が安定するのは生後3ヶ月ごろなので乳腺炎も落ち着く方が多いですが、母乳量が多い方や一度に沢山飲めない小さな赤ちゃんの場合はそれ以降でも乳腺炎にかかる事があります。何度でも乳腺炎を発症する可能性があるので、一度乳腺炎になった方は注意が必要です。
乳腺炎の症状 対処法
乳腺炎とは具体的にどのような症状のことを言うのでしょうか。初期の乳腺炎では、まずおっぱいに「しこり」ができます。いつもとは違うしこりを感じ、触ると少し痛みや熱を感じることもあるでしょう。
初期の乳腺炎は「うつ乳」と呼ばれており、乳汁の流れが滞ることにより引き起こされます。乳管が閉塞することにより、腺房内に乳汁が貯留し、痛みを伴うしこりへと変化していくのです。
このうつ乳を改善するためには、乳管の閉塞を開通させることができれば和らいできます。では、うつ乳を改善させる乳管の開通は、どのようにすると良いのでしょうか。
うつ乳改善のマッサージ
乳腺炎の初期症状である「うつ乳」は、乳管が閉塞し、乳汁が腺房内にたまることから引き起こされるものです。これを放置しておくと乳腺炎へと悪化してしまうので、早めに乳管を開通しておく必要があります。
乳管を開通するには、マッサージが効果的です。手のひらで乳房を優しくマッサージしたり、乳頭を指でつまんで少し引っ張ったりする方法がありますが、自分で行う場合は痛みを伴わないことが大前提となります。
できれば、母乳指導を行っている施設で、プロにマッサージをしてもらうのが安心でしょう。マッサージを受けると、うつ乳の特徴である乳房のしこりが取れ、柔らかくなり、母乳の出もよくなります。
うつ乳が悪化したら
乳腺炎の初期症状である「うつ乳」では、おっぱいにしこりが生じますが、マッサージで改善することが可能です。しかし、進行が早かったり、マッサージが強すぎたりして不適切な場合は悪化してしまう恐れもあるので注意が必要です。
細菌やウィルスに感染してうつ乳が悪化し、乳腺炎になるとどのような症状が出てくるのでしょうか。まず、うつ乳の特徴であるしこりに加え、おっぱい全体赤みを帯びてきます。
おっぱいを押さえたり、マッサージをしようとしたりすると痛みが走り、赤ちゃんを抱っこできない場合もあるでしょう。母乳の色は、半透明や白い色から、黄色よりの色に変化してきます。そして、最終的には頭痛や関節痛が起き、寒気が走って38度以上の高熱が出てくるのです。
授乳はどうする?
乳腺炎の症状が確認されたら、まずは病院に行き、治療してもらうことが大切です。しかし、病院が休診日であったり、夜遅い時間帯だったりする場合もあるでしょう。
その時、悩んでしまうのが授乳すべきかどうかということです。
乳腺炎は、乳管に乳汁が詰まることにより引き起こされ、悪化するものですから、赤ちゃんにどんどん飲んでもらって乳管を開いていくことが大切になります。できるだけ同じリズムで授乳を続け、積極的に母乳を出すようにしましょう。
乳腺炎は冷やして対処
乳腺炎の症状が出ているのに、すぐに病院にいけない時は、授乳を続けながら次の対処をしていきましょう。乳腺炎は、炎症が起きたことにより引き起こされていますから、温めてしまうと悪化させてしまいます。
保冷剤、氷のう、アイスノンや冷却ジェルシートなどでおっぱいを冷やし、熱を除去していくことが大切です。
ただ、重症の乳腺炎になると皮膚がただれてしまうこともあるので、皮膚に密着しないようガーゼでアイスノンを包みあてるようにしましょう。
どうしても薬が必要な場合
乳腺炎の症状が出ているにもかかわらず、病院に行くことができない場合は、自分で対処する必要があります。冷却しても症状が治まらない場合は、市販の薬を服用することも必要になるでしょう。授乳中だと、赤ちゃんへの影響が心配されるため、できるだけ安全性が高いと言われているものを選ぶことが大切になります。
鎮痛剤として使われているアセトアミノフェン、イブプロフェンは、授乳中でも服用できると言われています。漢方薬なら葛根湯が免疫力を上げてくれるのでオススメです。しかし、これらの薬は緊急用ですが、病院の先生や薬剤師に相談してから飲むようにしてください。
しかし、いくら影響が少ないと言っても、連続して何日も服用を繰り返してしまうと、赤ちゃんに影響が出てしまう恐れもあります。あくまで病院へ行く前の処置として服用し、必ず適切な治療を受けるようにしましょう。
乳腺炎の原因 予防法
乳腺炎になると、熱が出たりおっぱいが痛くなったりして大変です。適切な処置を病院で受けることが大切ですが、そもそもなぜ乳腺炎は起きてしまうのでしょうか。
乳腺炎は、乳汁が乳管につまり、細菌に感染して引き起こされるものです。乳汁が乳管につまるのは、授乳、搾乳の頻度に原因があると言えるでしょう。どのようなことが乳腺炎を引き起こしてしまうのか、具体的に見ていきましょう。
定期的な授乳、搾乳が一番大切
乳腺炎を予防する方法として、もうひとつ搾乳もご紹介しておきましょう。赤ちゃんが違う角度で授乳するのを嫌がったり、授乳間隔がまだ定まっていなかったりする場合、長い時間授乳しない時に搾乳しておくと、乳腺炎を防ぐことができます。
産まれたての赤ちゃんの場合、まだおっぱいを飲むのに慣れていないため、授乳する量や間隔が頻繁に変わります。しかし、お母さんのおっぱいからは次々と母乳が作られるため、放置しておくと詰まってしまうのです。
そんな時、定期的に搾乳しておくと乳腺を詰まらせることもありませんし、常に新鮮な母乳を赤ちゃんに与えることができます。授乳間隔が3時間以上開く場合は、必ず1度搾乳しておくと安心でしょう。
搾乳のやり方は、産婦人科で教えてもらうことができますし、便利なグッズもたくさん出ているので、自分でも簡単に行うことができます。初めてでうまくできない場合は、指導を受けながら試してみるようにしましょう。
赤ちゃんの抱き方えを変える
赤ちゃんの抱き方も、乳腺炎を引き起こす原因になります。いつも同じおっぱいで母乳を上げている場合、決まった方向からしか吸わないため、頻繁に使う乳腺と、あまり使わない乳腺が出てきてしまいます。
乳腺は乳首を中心に放射状に広がっているので、決まった方向からしか吸わないでいると、他の乳腺に乳汁が残ってしまい、詰まりやすくなります。乳腺炎は、乳汁のつまりにより引き起こされるため、できるだけいろんな角度で抱っこして、母乳を上げるようにしましょう。
一番楽な格好で多くのお母さんが行っているのは横抱きですが、赤ちゃんを向き合うようにして授乳する縦抱きや、ボールを抱えるように抱くフットボール抱きなどを加えるようにしてください。1日の授乳のうち、最低でも1~2回は抱き方を変えると良いでしょう。
また、片方のおっぱいで授乳したら、次はもう片方のおっぱいにするなど、使用するおっぱいも変えるようにしてください。お母さんのおっぱいからは、同じ量が均等に出てくるため、左右交互に使うことは非常に大切なのです。
バランスの良い食事を考える
乳腺炎を引き起こす原因のひとつとして食事が考えられますが、はっきりとした根拠はありません。(※1)
あまり気にしすぎてお母さんの体調を崩してしまう場合もありますから注意が必要です。
できるだけバランスの良い食事を心がけてください。たんぱく質や食物繊維、ビタミンなど栄養バランスが取りやすい和食は最適ですから、和食中心のメニューを心掛けるようにしましょう。 ※1参考:日本助産師会
ストレスをためない工夫
育児中は、何かとストレスに見舞われやすく、短時間の睡眠で少しのことでイライラしてしまいがちです。慣れない育児に戸惑うことも多いため、ひとりですべてを抱え込もうとせずに、周りのサポートをできる限り受けるようにしましょう。
真面目に育児をしようとするほど、気持ちは焦り、空回りしてストレスが溜まってしまいます。楽しく育児をするためには、周りの協力が欠かせないことを覚えておきましょう。
断乳・卒乳後の乳腺炎
乳腺炎とは無縁の母乳育児のお母さんでも、意外な時に乳腺炎を患ってしまう事があります。それは断乳や卒乳後で、赤ちゃんが母乳を飲まなくなってもお母さんの身体は授乳時間に合わせて母乳を作り始めます。
通常の乳腺炎なら赤ちゃんに飲んでもらう事で治りますが、もう用済みとなってしまったためどんどん溜まってしまい炎症を起こすのです。搾乳すれば再びその分増えてしまうので、この場合はなるべく刺激を与えずに冷やして胸の張りを抑えるようにしてみましょう。
どうしてもダメな場合のみ一回に全部搾乳するようにして、回数を減らしていきましょう。また断乳・卒乳のスケジュールにあわせて少しずつ授乳回数を減らしていけば、乳腺炎を防ぐ事ができます。
ここまでのまとめ
乳腺炎の原因や、その対処方法、そして予防策について幅広くご紹介しました。乳腺炎は、初期の段階ならマッサージや冷却で改善することが可能ですが、症状が変わらない場合やひどくなってきたときは、すぐに病院で診てもらうようにしましょう。
また、日頃から乳腺炎にならないためのケアをしておくことで、予防することができます。母乳から栄養を摂っている赤ちゃんのためにも、規則正しく健康的な生活と食事を心がけることが大切です。
そしてストレスをためず、楽しく育児を続けていくことで、乳腺炎知らずの健やかな授乳期間を過ごしてください。