出産は女性にとって大きな出来事のひとつです。そして、出産後に始まる育児も戸惑うことがたくさんあって、あっという間に時間が過ぎていくように感じることでしょう。
出産からひと段落つけるようになると、次に気になりはじめるのが夫婦の関係性についてです。産後にセックスレスになる夫婦は多く、なかなか夫婦生活を再開できない方が多いのが現状です。
妊娠前はあんなに仲が良かったのに、出産したとたん急に旦那さんに距離を感じてしまい、悩みを抱えているお母さんはたくさんいらっしゃいます。そこで、産後のセックスレスについてさまざまな角度から詳しくご紹介していきましょう。
産後のセックスレスが起きる原因
産後にセックスレスになりやすいのは、まず産後は女性にとってとても大変な時期になるということが挙げられるでしょう。身体的にも精神的にもギリギリの状態になることが多いため、夫婦間のセックスについて考える余裕がなくなってしまうのです。
産後の身体のダメージ
出産を経験したことは、身体に大きな負担となります。自然分娩の場合、骨盤が大きく開くため関節は不安定で痛みも出やすいですし、会陰切開などをした方は傷口がいつまでも痛くなることがあるでしょう。さらに、分娩後に数週間続く悪露が長引き、不快感が伴いやすい方もいらっしゃいます。
また、帝王切開の方も開腹手術を受けているため、傷口が癒えるまでは絶対安静が必要です。
このように、出産を経験した女性の身体は疲れ切った状態になっているため、産後しばらくの間は、さまざまな機能を回復するためにも、安静に過ごす必要があり、セックスまで考えが及ばなくなってしまいます。
育児が大変!
産後は、出産でダメージを受けた身体を回復するために安静に過ごす必要があります。しかし、自分の身体を回復するだけに集中することは難しく、ほとんどのお母さんが赤ちゃんのお世話に追われます。
身体がまだ本調子ではないのに、短い睡眠で赤ちゃんのお世話をするため、肉体的な疲労感だけでなく精神的にもどんどん余裕がなくなっていってしまうのです。
産後しばらくの間は、赤ちゃんは短時間しか眠り続けることができないため、お世話をするお母さんも1時間~2時間ほどで起こされてしまいます。
そのような状態で夫からセックスを求められても、応えられなくて当然の状態だと言えるでしょう。
ホルモンの変化による性欲の消失
産後にセックスレスが起きやすいのは、産後にホルモンのバランスが変わってしまうことも関係しています。ホルモンの作用は、妊娠や出産だけでなく性欲にも影響してしまうのです。
妊娠中に分泌されるホルモン
妊娠中は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)が活発に分泌されるようになります。もともと、排卵や月経を引き起こすホルモンですが、妊娠するとお腹にいる赤ちゃんを無事に育てていくために急激に増えていくのです。出産前までにピークを迎え、無事に出産すると同時に急激に減少していきます。
急激に女性ホルモンが減少することで、子宮周辺だけでなく身体の調子も変化するため、身体の疲労が抜けにくくイライラしやすくなってしまうようになります。そのため、精神的にも肉体的にも余裕がなくなりやすくなってしまうのです。
授乳で分泌されるホルモン
産後にセックスレスが起きやすいのは、ミルク育児の方よりも圧倒的に母乳育児の方に起こりやすいと言われています。なぜなら、授乳により分泌される「プロラクチン」というホルモンが性欲に影響するからです。
プロラクチンは、卵巣の機能を抑制して母乳を出すことを優先するホルモンで、母性を強く引き出すと言われています。そのため、産後に母乳育児をしている方は、母性が強くなり女性や妻といった認識が薄れてしまいやすくなるのです。
身体が疲れ切っている中で、短時間の睡眠であっても赤ちゃんのお世話ができるのは、このプロラクチンによる母性のおかげだとも言われています。しかし、このプロラクチンは母性を強くする代わりに性欲を抑える働きもあるため、夫婦間のセックスレスは続きやすくなってしまうのです。
夫への攻撃性
産後にセックスレスになりやすいのは、ホルモンや育児による影響だけではありません。産後の育児を夫が手伝ってくれないことにイライラし、次第に気持ちが冷めてしまうケースが良くあります。赤ちゃんが産まれたのに遅くまで飲み歩いたり、家事をほとんど手伝ってくれなかったりすることで、不満が募り愛情が薄れていってしまいます。
産後は、女性ホルモンが急減し、プロラクチンの分泌により赤ちゃんを強く守ろうとする気持ちが強まるため、夫に対して攻撃的に見えてしまう部分もあるため、少しのイライラが大きな嫌悪感へと発展しやすくなります。
夫とのすれ違い
産後のセックスレスは、女性側のホルモンバランスの変化などによりなりやすい部分があります。しかし、夫側からの心境の変化や戸惑いから、セックスレスがさらに深刻化するケースもあるのでご紹介しておきましょう。
妻として見られなくなった
産後にセックスレスになってしまう原因として、夫側が妻を母親としてしか見られなくなってしまったことがあります。赤ちゃんにおっぱいを上げて頑張って育児をしている姿を見ていると、妻としての顔がどんな風だったのかすっかりわからなくなってしまい、性欲が湧いてこなくなってしまいます。
立ち会い出産の衝撃
産後にセックスレスになってしまう原因として、立ち会い出産が衝撃的でトラウマになってしまったケースもあるようです。立ち会い出産は、赤ちゃんが産まれてくる感動を共有できる大切なものですが、男性によっては刺激が強すぎることがあります。男性は生理が来ないため血液を見ることに慣れていませんから、立ち会い出産でたくさんの血液を見ることはショックを受けるようです。
実際に、立ち会い出産に挑んで気分が悪くなったり気を失ってしまったりする経験をする男性は少なくありません。そのため、繊細な夫の場合、立ち会い出産ではない方が産後のセックスレスを防ぐことができるかもしれません。
拒否による自信の喪失
産後にセックスレスに陥ってしまう原因として、何度も妻に拒否をされることで自信を無くしてしまうことが関係しています。夫は、妻の身体がどれくらい回復しているか把握していないことが多いため、そろそろ大丈夫かな?と安易な気持ちで近寄ってきてしまいます。
そんな時に、妻から強く拒否をされたり、何度も拒否が続いたりすることで、次第にセックスに対して積極性が失われてしまいます。男性はデリケートな面もあるため、何度も拒否をされることで自信を失ってしまい、自分からは誘えなくなってしまうのです。
母乳の影響
産後にセックスレスに陥ってしまう原因として、性行為中に母乳が出てしまうことも関係しています。授乳中にセックスを試みようとすると、少しの刺激で母乳が出てしまうことがあるため、それにより中断され気持ちも萎えてしまうことが多いようです。
今まで通りのセックスを望んでいた夫にとって、母乳が出るということはショックでもあり母親になった身体という認識に変わってしまうため、少しずつセックスレスへと移行していってしまうのです。
産後クライシスに注意
産後のセックスレスに陥ると、産後クライシスへと発展していってしまう可能性があります。産後クライシスとは、産後2年以内に夫婦の愛情が急速に失われてしまう状態のことを言います。最悪の場合、離婚に至るケースも多く、近年このような夫婦は増加傾向にあると言います。
産後クライシスの引き金は、産後のセックスレスによる気持ちの擦れ違いから生じることが多いため、産後の過ごし方が今後の夫婦関係に大きく影響していることがわかります。
産後クライシスを防ぐためにも、産後のセックスレスから問題を解決していく必要があるでしょう。
セックスレスを解決するには
産後のセックスレスを防ぐためには、夫婦間でたくさんのことを共有しておく必要がります。夫は妻の身体がいまどのような状態かわかりませんし、妻も夫がどんな気持ちでいるのかがわかりません。産後は赤ちゃんのことで手一杯になるため、意識して話さなければ情報は共有できないことをよく覚えておきましょう。
そのうえで、さまざまな情報を共有し、産後のセックス再開の時期を計画していくのがオススメです。
二人だけの時間を作ってみては!
男性は女性のように赤ちゃんが生まれたからと、すぐに夫からお父さんという立場に切り替えることができません。どうしても恋人や夫としての意識が残っていますから、今までと同じように妻に接して嫌がられてしまう、というケースもとても多いのです。
育児の疲れでそこまでフォローできない、夫婦だから赤ちゃんの話題は当然、というお母さんもいらっしゃいますが、たまには赤ちゃんが寝た時間に二人でテレビを見たり、赤ちゃん以外の話題を振ってみてはいかがでしょうか。
また、「パパ」「ママ」という呼び方をやめて、今までのように名前を呼び合うのも新婚に戻ったようでご主人も新鮮に感じてくれるかもしれません。
身体の変化を伝えよう
夫婦間で情報を共有する上で、まず知らせておきたいのが産後の身体の状態です。出産により1ヶ月は安静にする必要があり、胎盤などが出てくる悪露が続くため、セックスはできないこと。
骨盤が不安定で産後6ヶ月くらいまでは腰痛が起きやすいこと。産後はホルモンバランスが急変するため、気が短くなってイライラしたり、夫に対して攻撃的になりやすかったりすること。これらの情報を伝えるだけでも、夫側の認識が変わってくるようになります。
優先順位は睡眠欲
夫婦間でもうひとつ共有しておきたいのが、欲求の優先順位です。人間の3大欲求として、食欲、性欲、睡眠欲とありますが、その中でも性欲は最も優先順位が低く設定されています。産後は赤ちゃんのお世話で睡眠時間が大幅に削られてしまうため、性欲よりも睡眠欲を優先したくなるのは、生理現象として当然のことと言えます。
そのため、たとえ疲れていて拒否をしたとしても今は睡眠欲モードになっていると理解してもらうようにしましょう。
同じようにセックスはできない
夫婦間でさらに具体的に共有しておきたいのが、妊娠前のセックスと、出産後のセックスは大きく違うということです。産後により会陰が大きく開くため、しばらくの間、少し緩い状態になります。
また、ホルモンバランスの変化により分泌液が出にくくなるため、摩擦などで痛みが生じやすくなるでしょう。妊娠前と同じようにセックスしようとして戸惑うことも多いため、無理な挿入は試みずスキンシップを大切にするように心がけましょう。
再開のめどについて
産後のセックスレスを防ぐためにも、ある程度の期間が経過したら夫婦生活の再開の時期を計画するようにしましょう。あまり具体的に決めてしまうと、窮屈になってしまいますので、大体で構いません。産後半年ぐらいたったらチャレンジしてみようと考えたり、身体が本調子に戻ってからにしたりするのもひとつの方法です。
ただ、産後1年以上過ぎるとセックスレスが当たり前になり、今度は再開しにくくなる傾向がありますので、できれば産後1年以内の再開を目指すようにしましょう。
スキンシップでコミュニケーション
産後のセックスレスを防ぐためには、心身共に万全の状態に整っていることが大切です。無理にセックスをしようとすると気持ちにすれ違いが生じやすいので、気をつけましょう。
大切なのは、挿入行為ではなくスキンシップですので、それをメインにお互いを労わるようにしてください。しっかりと相手を大切に思っている気持ちが通じ合えば、最後までできなくても気持ちは満足することができます。
実際に、産後のセックスレスを乗り越えた夫婦は、その時の状況に合わせてスキンシップを優先するようにしています。ちょっと手をつなぐだけでも良いですし、ハグや軽めのキスも充分なスキンシップのひとつです。
赤ちゃんのことばかりに気持ちが行ってしまいやすいですが、少し気持ちに余裕が出てきたときは、できるだけ夫とスキンシップを取るように心がけましょう。
まとめ
産後のセックスレスについて詳しくご紹介しました。出産を経験すると、女性の身体にはさまざまな変化が生じますし、ダメージも大きいためしばらくは性欲が出てこないのが通常です。ただ、その状況を夫側が理解しないことで、気持ちにすれ違いが生じセックスレスへと発展してしまうケースが多々あります。
産後は赤ちゃんのことばかりが中心になり、夫婦関係にまで気が回らないのが当たり前ですが、だからこそさまざまな情報は共有しておくようにしましょう。
母性が溢れる産後は、赤ちゃんが可愛くて仕方がなく、夫のことはイライラしやすいですが、可愛い赤ちゃんは夫と愛し合って産まれています。そのことをしっかりと心に刻み、夫婦二人で支えあいながら育児を乗り越えていくことで、産後のセックスレスも自然と解消していくことができるでしょう。