産後の子宮収縮について知っておきたいこと

産後の子宮収縮について知っておきたいこと 産後お母さん

産後の身体は、思った以上にボロボロです。こんなに辛いものとは知らなかった・・と驚かれている方も多いのではないでしょうか。

産後は、傷ついたボロボロの身体を元に戻すために安静が必要になります。さまざまな修復が行われている中で、とても重要になるのが「産後の子宮収縮」です。

赤ちゃんを育てるために大きく広がった子宮が元の大きさに戻るまでには、時間がかかりますし、痛みが伴うこともあるでしょう。

産後の子宮収縮は、身体の回復を示すバロメーターでもあるので、とても重要なものです。どれくらいの期間続くのか、どれくらいの痛みなのか、さまざまな情報を詳しくご紹介していきましょう。

産後の子宮収縮の始まりについて

産後の子宮収縮の始まりについて

産後の子宮収縮は「後陣痛」とも言われています。出産してひと段落したと思ったら、陣痛のようなお腹の痛みに「まだ続くの?」とガックリしてしまう方も多いのではないでしょうか。

実は、後陣痛と呼ばれる子宮収縮は、出産前から始まっています。陣痛が始まるのは子宮が収縮し始めるからで、子宮が収縮することで、中にいる赤ちゃんを外へと押し出そうとする力が働くようになるのです。

赤ちゃんを出産しても、まだ胎盤や卵膜が残っていますから、それらを出し切るために産後も子宮収縮がつづくメカニズムになっているのです。

産後の子宮収縮の終わりについて

産後の子宮収縮の終わりについて

産後の子宮収縮は、いつくらいまで続くのでしょうか。子宮収縮が終わる時期には、かなりの個人差がありますが、産後1ヶ月くらいするとほぼ終わることが多いようです。

子宮収縮のスピードは、赤ちゃんの大きさや、お母さんの回復スピード、また産後の過ごし方によって大きく異なるため、長い人だと2ヶ月以上子宮収縮が続く場合もあるでしょう。

子宮収縮の痛みについて

子宮収縮の痛みについて

産後の子宮収縮が起こる際、痛みが生じることがあります。「後陣痛」と呼ばれるのはそのためです。痛みの程度には個人差があり、陣痛並に痛いと感じることもあれば、陣痛よりマシだけど痛い、ほとんど痛みを感じないなどさまざまです。

痛みの感じ方も、チクチクと針を刺すような痛みに感じる場合もあれば、ズキズキと鈍い痛みを感じる場合もあります。

分娩方法で子宮収縮の痛みの違いはあるの?

自然分娩以外の、陣痛が起きる前に赤ちゃんを取り出す帝王切開や分娩の痛みを軽減する無痛分娩の場合、子宮収縮の痛みは起こるのでしょうか。

分娩時の痛みが少ない分、子宮収縮の痛みも少ないように思えるかもしれませんが、子宮収縮は赤ちゃんの成長に伴って伸びた子宮が元の大きさに戻る状態のことですから、分娩方法に限らず、出産された方は必ず子宮収縮が起きます。

むしろ、帝王切開で出産された方は、傷の痛みと子宮収縮の痛みが重なって辛いこともあるようです。また、無痛分娩の方は陣痛が軽かった分、子宮収縮の痛みを強く感じることがあるかもしれません。その場合は無理せずゆっくり休むようにしてください。

子宮はどれくらい収縮するのか

子宮はどれくらい収縮するのか

産後の子宮収縮が続く期間は、子宮が元の大きさに戻るまで続きます。では、子宮はどれくらいの大きさまで膨らんでいたのでしょうか。

妊娠中の子宮の大きさ

妊娠中の子宮の大きさ

妊娠前の通常モードの子宮は、長さが約7cmの大きさです。ちょうどLサイズのニワトリの卵と同じくらいになるでしょう。

妊娠すると、子宮は赤ちゃんの成長に合わせてどんどん大きく広がっていきます。妊娠後期に差し掛かると、子宮の長さは30cm~35cmまでになるのです。子宮の長さは、子宮底長として計測されることもあるため、耳にした方も多いのではないでしょうか。

子宮の許容量に関しては、通常モードの子宮に比べるとかなり広がり、臨月の頃には胃のすぐ下のみぞおち辺りまで子宮が迫っている状態になるでしょう。

出産直後の子宮の大きさ

出産直後の子宮の大きさ

妊娠中はどんどん大きくなる子宮ですが、出産と同時に一気に収縮し始めます。出産直後の子宮は、みぞおちくらいの高さから、一気におヘソの高さくらいまで収縮します。出産と同時に一気に子宮は収縮するため、痛みが生じやすくなるのです。

その後、子宮は時間をかけて収縮し、元のニワトリの卵くらいの大きさへと戻っていきます。

子宮収縮と産褥期間

子宮収縮と産褥期間

子宮収縮は、出産前から始まり出産後も続きます。では、子宮が元の大きさに戻るまでは、どれくらいの期間が必要になるのでしょうか。

子宮が収縮して元の大きさに戻るのには、産後4週間~8週間が必要だと言われています。この期間は「産褥期間」と呼ばれ、安静に過ごす必要がるとされている時期です。

産褥期間について

産褥期間について

産褥期間とは、出産後~産後6週間~8週間までの期間のことを言います。この期間は、子宮収縮をはじめさまざまな身体の修復が行われている時期なので、安静に過ごす必要があります。

出産は、交通事故にあった時と同じくらいの衝撃や傷が身体に残されていると言われています。そのため、産院を退院した後もしっかり身体を休めて身体を回復させやすい状況を作るようにしましょう。

無理をするとどうなるか

無理をするとどうなるか

産褥期間は、基本的に安静にしなければなりません。安静にするということは、トイレや食事、赤ちゃんのお世話以外はベッドに横になっている状況のことです。

この時期に無理をして家事をしたり、外に買い物に出かけたりしてしまうと、身体の負担が増えて子宮収縮のスピードが遅れやすくなってしまいます。また、出産により傷ついた組織の修復も遅れますし、骨盤が不安定なまま活動するのでギックリ腰などの危険性もあります。

産褥期に無理をしていいことなどひとつもありませんので、必ず安静に過ごせるように環境を整えておきましょう。

痛みのピークについて

痛みのピークについて

子宮収縮の痛みには、時期によって違いがあります。子宮収縮の痛みのピークは、分娩直後が最も高くその後緩やかに減少していきます。多くの方が、出産直後~3日のうちに大体の子宮収縮の痛みは治まり、後は対応できるくらいの痛みや違和感へと変わってきます。

痛みの強弱は個人差がありますが、中には鎮痛剤を処方してもらうほど強く痛みが出る場合もあります。その場合は無理をせず服用し、穏やかな状態で安静に過ごせるようにしましょう。

子宮収縮と悪露の関係について

子宮収縮と悪露の関係について

産後の子宮収縮は、いつまで続くのかと憂鬱な気分になりますが、子宮収縮の目安となるものがあります。それが「悪露(おろ)」です。

悪露は、出産時にわずかに残った胎盤や卵膜、血液や体液などが混ざり合ったものです。生理のように膣から出てきます。この悪露は、子宮が収縮していくことにより排出されるため、悪露の状態を見ることで子宮の回復具合を知ることができます。

悪露の量について

子宮収縮の目安として、悪露の量に注目してみましょう。悪露の量は産後が最も多く、産褥ショーツが汚れるほど大量に出てきます。夜用ナプキンを2枚重ねても足りない位の量です。

それが、1週間経つと徐々に量は減っていき、産後2週間経つと生理用の夜用ナプキンでも対処できるようになってきます。産後4週間も経てば、昼用のナプキンでも十分対応ができますし、早い方だと悪露は終了することもあります。悪露の量がだんだん減ってきているということは、子宮収縮が順調に進み、子宮の中もキレイにお掃除されているということです。

もし、産後直後の量が多い時期に、悪露があまり出ないようなら子宮の出口が詰まっていたり、炎症が引き起こされていたりする可能性があるでしょう。

悪露の色について

悪露の色について

子宮収縮の目安として、悪露の色にも注目してみましょう。悪露の色は、産後鮮血の状態ですが、次第に茶色へと変わり、黄色っぽいクリーム色、白色、透明へと変化していきます。

もし、ほぼ透明に変わってきている頃に再び鮮血が出始めているようなら、子宮収縮に何らかのトラブルが発生している可能性があるでしょう。

悪露のニオイについて

子宮収縮の目安として、悪露のニオイにも注目してみましょう。悪露のニオイは、最初は血生臭いニオイが強いですが、量が減ってくると同時にニオイも減ってきます。最終的に透明になる頃には、ほとんどニオイを感じなくなっているでしょう。

ただ、悪露から悪臭がしたりする場合、細菌に感染している可能性があります。発熱を伴う場合は速やかに医師に報告し対処してもらうようにしましょう。

悪露のかたまりについて

悪露のかたまりについて

子宮収縮の目安として、悪露と一緒に出てくる血のかたまりにも注目してみましょう。血の塊は、胎盤や卵膜の一部であることが多く、通常は産後間もない時期に排出されるものです。

しかし、産後3週間~4週間経っても血の塊が出てくるようなら、子宮収縮がスムーズに行っていない可能性があるので、医師に相談するようにしましょう。

子宮復古不全について

子宮復古不全について

悪露の状態が悪く、子宮収縮も順調ではない場合、子宮復古不全となっている可能性があります。子宮復古不全とは、子宮収縮がスムーズにいかず、胎盤や卵膜が残った状態になり、子宮の回復ができていない状態のことです。

陣痛が弱くてお産が長引き子宮が過度に疲労している場合や、巨大児を出産した場合、多胎児妊娠の場合、子宮筋腫や子宮後屈など子宮に異常がある場合に起きやすいと言われています。

子宮復古不全になると、細菌に感染しやすくなり炎症を起こして産褥熱を発症する恐れがあります。産褥熱は38℃~40℃と高熱の状態が2日以上続くため、体力も奪われますし、身体の回復にも支障をきたします。

また、最悪の場合命に関わる可能性もあるため、悪露の状態が異常だと感じたら、すぐに医師に相談して対処してもらうようにしてください。

子宮収縮をスムーズにするためには

産後の子宮収縮は、スムーズに経過していくことで安定する時期も早まってきます。では、子宮収縮をスムーズにするためには、どのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。

できるだけ安静に過ごす

できるだけ安静に過ごす

産後の子宮収縮は、とにかく安静に過ごすことでスムーズに進んで行きます。産後6週間~8週間の間は産褥期間と呼ばれ、安静に過ごす必要があると昔から言われています。

この時期に安静に過ごすことで、身体への負担を最小限にし、子宮の収縮や回復を早めることが大切ですので、無理をしないようにしましょう。

母乳が出る方はたくさんあげる

母乳が出る方はたくさんあげる

産後の子宮収縮をスムーズにするには、赤ちゃんに母乳をたくさんあげるようにしましょう。赤ちゃんが母乳を飲もうと乳頭をくわえると、その刺激でお母さんの身体にプロラクチンというホルモンが分泌され母乳が作られます。

作られた母乳は分泌されたオキシトシンというホルモンにより押し出され乳頭から出てくるのですが、その時、子宮を収縮させる働きがあるのです。

出産直後~産後1週間に与える母乳は「初乳」と呼ばれ、栄養や免疫がたっぷり詰まっています。子宮収縮を助けるだけでなく赤ちゃんの健康を守るためにも、たっぷりと母乳を与えてあげるようにしましょう。ミルク育児を考えている方も、最初の1週間~10日は初乳を与えるようにするのがオススメです。

トイレはガマンしない

トイレはガマンしない

産後の子宮収縮をスムーズにするには、トイレを我慢しないことも大切です。産後は、会陰切開や帝王切開などの痛みを怖れ、トイレを我慢してしまう方がいらっしゃいますが、トイレを我慢することで、膀胱や腸が膨らみ子宮を圧迫してしまいます。子宮収縮の妨げにもなりやすいので、トイレはガマンしないようにしましょう。

便秘が気になる方は、授乳中でも飲める便秘薬を医師に処方してもらい、できるだけ子宮を圧迫させないようにしてください。

産褥体操を行う

産褥体操を行う

産後の子宮収縮をスムーズにするには、産褥体操を行うのがオススメです。産褥体操は、産後しばらくしてから行える身体に負担の少ない体操のことで、寝ながら行うことができます。

身体を優しく動かすことで、血行を促進することができるため、子宮収縮の助けになってくれるでしょう。

栄養と睡眠はしっかり取ろう

栄養と睡眠はしっかり取ろう

産後の子宮収縮をスムーズにするには、栄養と睡眠をしっかり確保しておくことが大切です。産後は母指同室にする方も多いですが、赤ちゃんが気になって眠れない時は母子別室にしてもらい、しっかり睡眠が取れるようにしましょう。

退院すると、母子別室になることは少ないため、産後直後の時期は無理をせず身体を休めることを優先することが大切です。

また、退院後もできるだけ家族にサポートしてもらい、睡眠をしっかりとって休むことで子宮の収縮と回復を促していきましょう。

まとめ

産後の子宮収縮について詳しくご紹介しました。後陣痛と言われるため、痛みが強く出ることもありますが、赤ちゃんに母乳をあげたり、安静にして栄養と睡眠をしっかり取ったりしているうちに、次第に治まってきます。

子宮収縮は、子宮が今どれくらい回復しているかを示すバロメーターでもありますので、悪露の状態をチェックしておくようにしましょう。悪露の状態が悪いと子宮の回復が遅れるだけでなく、産褥熱などさまざまな症状を引き起こす可能性があるため、すぐに医師に診てもらうようにしてください。

産後の子宮収縮や悪露は疲れるものですが、子宮が収縮して元に戻るためにはとても大切で必要なことです。できるだけ短い期間で終えるためにも、産褥期間は安静に過ごせるようにしてください。