乳児突然死症候群(SIDS)について知っておきたいこと

乳児突然死症候群(SIDS)について知っておきたいこと 赤ちゃん体調不良

産まれたばかりの赤ちゃんは、とてもデリケートな状態です。お母さんは、自分が行っている育児の方法が正しいかどうか気になることも多いのではないでしょうか。

赤ちゃんの健康を守るのは、お母さんをはじめ家族の大切な仕事のひとつです。健康にスクスク成長して行くためには、日頃からさまざまな部分に気を配っておく必要があります。

赤ちゃんを育てていくうえで、発熱や下痢などさまざまな症状に戸惑うことも多いと思いますが、中でも怖いのが「乳幼児突然死症候群」です。突然赤ちゃんが亡くなってしまい、原因は不明となっているため、いつどんな赤ちゃんに発生するのかわからない恐ろしさがあります。

そこで、赤ちゃんを健康で無事に大きく育てていくためにも、乳幼児突然死症候群の予防や対策などについて、詳しい情報を幅広くご紹介していきましょう。

乳幼児突然死症候群とは?

乳幼児突然死症候群とは?

乳幼児突然死症候群とは、それまで元気だった赤ちゃんが、寝ている間に突然亡くなってしまう状態のことを言います。事故や窒息ではなく原因不明であることから、未だに未解明の病とされています。

乳幼児突然死症候群は、英語だとSudden Infant Death Syndromeと表記され、SIDS(シッズ)という略称で呼ばれることもあります。

日本の乳幼児突然死症候群の発症率

乳幼児突然死症候群は、ある日突然赤ちゃんが亡くなってしまう怖い病気です。では、日本ではどれくらいの頻度で発症しているのでしょうか。

現在の乳幼児突然死症候群の発症頻度は、赤ちゃんが6000人~7000人いるうち、1人に発症すると言われています。平成27年度の厚生労働省の調査では、全国で96人の赤ちゃんが乳幼児突然死症候群により命を落としています。

さまざまな対策が取られてきたことから、発症頻度は年々下がってはきていますが、未だに赤ちゃんが亡くなる原因はハッキリしていません。
参考: 乳幼児突然死症候群(SIDS)について|厚生労働省

乳幼児突然死症候群にかかる時期は

夏 冬

乳幼児突然死症候群は、生後2ヶ月を過ぎたころから発生する頻度が高まり、生後6か月までの期間が最も多いと言われています。そのため、生後2ヶ月~6ヶ月の間は、特に乳幼児突然死症候群に注意する必要があると言えるでしょう。

また、病気にかかりやすい時期として、統計的に寒い時期の方が、発症頻度が高いと言われています。7月や8月など気温が高い時期に、乳幼児突然死症候群で亡くなった赤ちゃんよりも、1月の気温が低い時期に亡くなった赤ちゃんの方が、2倍も多いのです。

そのため、生後2ヶ月~6ヶ月の期間が寒い時期にあたる方は、より乳幼児突然死症候群の対策に慎重になるべきと言えるでしょう。

気になる乳幼児突然死症候群の兆候は

気になる乳幼児突然死症候群の兆候は

乳幼児突然死症候群を何とか防ぎたい方にとって、発症する前にどのような兆候があるのか知りたいという方も多いのではないでしょうか。

実は、乳幼児突然死症候群には発症する前の兆候がないと言われています。つい数時間前まで元気におっぱいを飲んだり遊んだりしていた赤ちゃんが、何の前触れもなく寝ている間に突然亡くなってしまうため、お母さんや家族のショックは大きなものになります。

何かの持病を持っていたり、顔色に変化があったりするわけではないため、前兆をとらえることは難しいと言えるでしょう。

乳幼児突然死症候群の原因

乳幼児突然死症候群の原因

乳幼児突然死症候群は、6000人~7000人のうち1人に発症し、日本でも毎年発生しています。では、乳幼児突然死症候群は何故引き起こされてしまうのでしょうか。

乳幼児突然死症候群は、日本だけでなく世界各国で発症している病気ですが、どこの国もこの病気の原因を特定できていない状況です。窒息死や心疾患と思われることもありますが、どこの医療も乳幼児突然死症候群の原因を突き止めきれていないのです。

乳幼児突然死症候群が起きやすい条件や原因とは

乳幼児突然死症候群は、原因がわからないとされてきましたが、これまで発症してきた赤ちゃんのケースをひとつひとつ見ていくと、ある傾向があることがわかってきました。乳幼児突然死症候群を発症しやすい条件を、ご紹介しておきましょう。

赤ちゃんの条件や原因

赤ちゃんの条件や原因

乳幼児突然死症候群は、男の子の赤ちゃん、早産で産まれた赤ちゃん、ミルク(人工栄養)で育てられている赤ちゃん、出生時の体重が低体重だった赤ちゃんに発症する確率が高いと言われています。

状況の条件や原因

夫婦たばこ

乳幼児突然死症候群は、赤ちゃんがうつぶせ寝をしていたり、添い寝をしていたり、両親に喫煙習慣があったりする場合、それをしていない赤ちゃんよりも発症する確率が高くなっています。

時間や季節の条件や原因

時間や季節の条件や原因

乳幼児突然死症候群は、寒い季節に発症しやすく、時間帯においては1日の中で早朝~午前中にかけてが、最も発症率が高くなっています。そのため、朝起きて赤ちゃんが亡くなっていることに気づくケースがとても多いのです。

乳幼児突然死症候群を予防するには

乳幼児突然死症候群の原因は、未だにハッキリとわかっていません。しかし、乳幼児突然死症候群を発症した赤ちゃんの条件を見ることで、それらを予防できるよう対策を取ることはできます。

亡くなった赤ちゃんの条件から、どのような点に気をつけて予防するべきか、詳しくご紹介していきましょう。

できるだけ母乳で育てる

できるだけ母乳で育てる

乳幼児突然死症候群は、ミルク(人工栄養)により育てられた赤ちゃんに起きやすいと言われています。そのため、母乳で育てることで赤ちゃんが乳幼児突然死症候群を発症する確率を抑えていきましょう。

母乳には、赤ちゃんに必要な栄養だけでなく免疫もたっぷり詰まっています。特に出産直後に分泌される初乳には、濃密な栄養とたくさんの免疫が詰まっているため、初乳を飲むことで赤ちゃんは何ヶ月も細菌やウィルスに対抗する力を養えるとも言われているのです。

また、母乳は赤ちゃんの状態に合わせて、自動的に成分を変えたり量を調整したりすることができるため、いつでも赤ちゃんにとってベストな状態の母乳を与えることができます。

さらに、母乳を飲むためには赤ちゃんはしっかり下やアゴを使わなければならないため、それらの筋肉が鍛えられ呼吸も安定しやすくなると言われており、乳幼児突然死症候群の予防に役立つのではと考えられています。

このような点からも、ミルクで育てるよりも母乳で育てることを優先した方が安心と言えるでしょう。

赤ちゃんのそばで喫煙しない 禁煙

赤ちゃんのそばで喫煙しない 禁煙

乳幼児突然死症候群を予防するには、赤ちゃんのそばで喫煙しないようにしてください。両親に喫煙習慣がある場合、喫煙習慣がない場合と比べると、約4.7倍も乳幼児突然死症候群が発症しているというデータが出ています。同じ部屋で吸うことはもちろん、同じ建物内でも喫煙すべきではありません。

また、出産後だけでなく妊娠中からもタバコの煙をできるだけ吸わないようにすることで、早産や低体重などを防ぐことができるでしょう。

うつぶせ寝をさせない

うつぶせ寝をさせない

乳幼児突然死症候群を予防するには、赤ちゃんをうつぶせで寝させないようにしましょう。うつぶせ寝は、あおむけ寝の場合に比べると乳幼児突然死症候群の発症率が高いとされています。

うつぶせ寝の状態で深い眠りに入っていくと、発達途中の未熟な呼吸中枢が影響を受けて無呼吸状態に陥り、酸素が十分に得られない状態が続きます。

すると、そのまま状態が進行し心肺停止に陥り乳幼児突然死症候群が引き起こされると考えられているからです。しかし、まだ乳幼児突然死症候群の原因とはされておらず、直接的な原因にはなっていません。

うつぶせ寝は、頭の形が良くなると推奨されることもありますが、医学的にうつぶせ寝で寝かせるように指示を受けない限り、あおむけ寝で寝かせるようにしましょう。

フカフカの寝具を使わない

フカフカの寝具を使わない

乳幼児突然死症候群を予防するには、フカフカの寝具で寝かせないようにしましょう。柔らかいマットレスやウォーターベッド、ふんわりと柔らかい羽毛布団などを使用すると、赤ちゃんの顔をうずめ呼吸困難に陥らせてしまう可能性があるからです。

赤ちゃんが脚をバタバタさせてしまうと、かけられていた軽い羽毛布団がずり上がっていき、顔の上にかかりやすくなってしまいます。まだ手の発育が充分ではない赤ちゃんは、自分で顔にかかった布団を取り除くことができません。

このようなことから、敷布団やマットレスは固めのものを選び、掛布団も薄めのものを選ぶようにしましょう。また、掛布団はお腹から下にかけるようにし、端を敷布団やマットレスにしっかり挟み込んでおくことで、赤ちゃんが動いても顔にかかる心配がなくなります。

添い寝は注意が必要、できればしない

添い寝は注意が必要、できればしない

乳幼児突然死症候群を予防するには、添い寝をしないようにしましょう。添い寝をすることで、お父さんやお母さんの布団が赤ちゃんにかかってしまう可能性がありますし、手が赤ちゃんのお腹の上にのって圧迫してしまう恐れもあります。

赤ちゃんをできるだけ安全な状態で寝かせるためにも、添い寝をせずに赤ちゃん専用のベビーベッドで寝かせるようにすると良いでしょう。

赤ちゃんの足回りに空間を空けない

赤ちゃんの足回りに空間を空けない

乳幼児突然死症候群を予防するには、赤ちゃんの足回りに空間を空けないようにしましょう。ベビーベッドで寝かせる時は足裏がベッドの柵につくようにし、お布団で寝かせる時も、足元ギリギリまで下げて掛布団を織り込んでそれ以上下がれないようにしましょう。

足回りに空間を空けないように寝かせることで、赤ちゃんが動いて掛布団の中に潜っていくことを防ぐことができます。足元の空間がしっかり埋まっていれば、どんなに動いても掛布団の中に潜り込んでしまう心配はないでしょう。

赤ちゃんの頭周りに物を置かない

赤ちゃんの頭周りに物を置かない

乳幼児突然死症候群を予防するには、赤ちゃんの頭の周りに物を置かないようにしましょう。枕やぬいぐるみ、カーテンのヒモなど、何かものがあるとそれが赤ちゃんに絡まったり圧迫させたりしてしまう可能性があるからです。

赤ちゃんは自分の顔にかかったものを取り除くことができないため、動いているうちに絡まってそれが死因となってしまう可能性もあります。頭の形を良くしようと枕を使う方もいらっしゃいますが、お昼寝ならともかく夜寝るときは外しておくようにしましょう。

室温や体温を上げすぎない

室温や体温を上げすぎない

乳幼児突然死症候群を予防するには、室温や体温を上げすぎないようにしましょう。赤ちゃんの体温は大人よりも高いため、少し薄着ぐらいでちょうど良いくらいです。赤ちゃんは体温調整機能がまだ発達していないため、体温が上がり過ぎてもうまくコントロールすることができません。

風邪を引いているときに無理に厚着をさせたり、室温を高くしすぎたりすると身体の負担となりますので、温めすぎないように気をつけましょう。また、お風呂の温度が熱いのも良くないので、毎回温度計でしっかり計測するようにしましょう。

おしゃぶりで予防

おしゃぶりで予防

乳幼児突然死症候群を予防するには、おしゃぶりが効果的だと言われています。おしゃぶりが乳幼児突然死症候群の発症率を下げるメカニズムは解明されていませんが、発症の確率は抑えられると言われています。

出産直後におしゃぶりを使用すると、乳頭混乱を起こしてしまうため、生後2ヶ月以降から使用してみるようにしてください。寝ている間におしゃぶりが外れてし合った時は、無理に口に戻さず外したままにしておくようにしましょう。

おしゃぶりは、歯が生えてくると歯並びが乱れやすくなるなど、賛否両論ありますが、乳幼児突然死症候群を予防するという面では役に立つ可能性が高いと言えます。

SIDSとチアノーゼの違い

赤ちゃんの呼吸が止まると、乳幼児突然死症候群と結び付けてしまいますが、実はSIDSの他にもチアノーゼという症状があります。

乳幼児突然死症候群とチアノーゼの違いは明確で、チアノーゼは身体に酸素がいきわたらなくなり、手足の指先から唇・体と次第に肌が青白く変化するのが特徴です。

泣きすぎや鼻の穴のつまり、また心臓や呼吸系の病気が原因と言われています。このように原因がはっきりしているチアノーゼの反面、SIDSは特にこれまでと違った症状が現れず突然起こるのが最大の特徴です。

まとめ

乳幼児突然死症候群について詳しくご紹介しました。毎年発症し亡くなっている赤ちゃんがいるにもかかわらず、まだ原因が解明されていない恐ろしい病気です。しかし、乳幼児突然死症候群で亡くなった赤ちゃんの特徴や条件を知ることで、未然に防ぐための対策をとることができます。

対策として、さまざまな方法がありますが、お母さんだけが神経質になり過ぎるとストレスになって産後鬱になる可能性もあるので、家族みんなで気をつけるようにしましょう。

また、ミルク育児よりも母乳育児が対策に効果的と言われていますが、母乳が出なかったり、さまざまな状況でミルク育児を選択しなければならなかったりする場合もあります。その場合は、あまり神経質になり過ぎず、赤ちゃんが喜んで飲んでいるか、元気な様子かだけを気にするようにしましょう。

乳幼児突然死症候群は、いつどの赤ちゃんに発症するかわからないものです。しかし、さまざまな対策をとることで発症する確率を抑え、赤ちゃんの元気な成長を見守っていけるようにしてくださいね。