シャフリングベビー(いざりっ子)という言葉を聞いたことがありますか?シャフリングベビーとは他の赤ちゃんがハイハイをする時期になっても、ハイハイをする気配がなく、座ったまま移動することを好む赤ちゃんのことを指します。
シャフリングとは英語のシャフル(shuffle)から派生した言葉で、日本語では他に「いざり」「いざりっ子」と呼ばれることもあります。月齢の同じ赤ちゃんが上手に伝わり立ちやハイハイをしていると、うちの子だけどうしてできないの?と焦るお母さんもいるようです。
うちの子は他の子に比べると、ハイハイやつかまり立ちをするのが遅いと心配?乳幼児期の後半になってもハイハイをしたがらないシャフリングベビーについて、その原因や特徴、注意点や対処法など知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
シャフリングベビーとは?
シャフリングベビーとはお座りをしたままの状態で、ずりずりと前に移動する赤ちゃんを指します。この腰座りのまま前や横にずりずりと移動する行動は、ある時期どんな赤ちゃんにも見られるものですが、シャフリングベビーの場合、シャフリングをする期間が他の赤ちゃんよりも長い、うつぶせ寝を嫌う、ハイハイをしたがらないという特徴があります。
シャフリングベビーのうち、身体機能の異常や神経系に問題があるのはごくごく稀なケースですので、ハイハイをしたがらないという理由だけで不安に感じる必要はありません。
お座りのままシャフリングする赤ちゃんの数は少なく、ユニークな例でありますが、異常なことではありませんので、温かく見守ってあげるようにしましょう。
シャフリングベビーの特徴や行動について
シャフリングベビーに関しては、日本ではまだその実態や原因などの研究が十分になされていません。
シャフリングベビーの統計に関しても同様で、地域ごとに行われた統計調査はいくつかありますが、全国で大々的に行われたものはほとんどなく、これからの調査・研究が期待されます。シャフリングベビーの特徴について、とりあえず現時点で分かっていることをまとめてみましょう。※参考1
シャフリングベビーの特徴について
シャフリングベビーとは、身体機能の発達の一段階として見られる稀な症状。シャフリングをする赤ちゃんのほとんどは1歳半から2歳までの間に一人歩きができるようになるといわれています。シャフリングをする赤ちゃんの典型的な特徴を下にいくつか挙げてみましょう。
お座りができるまでの成長発達は他の赤ちゃんと変わらない
シャフリングベビーは、お座りまでは他の赤ちゃんと同じように発達が進んでいきます。寝返りを打たない、首が座らないといった症状はまったく見られず、お座りまでは他の赤ちゃんと同じように身体機能が順々に発達していきます。
赤ちゃんの身体機能の発達順序について
ここで赤ちゃんの身体機能の発達プロセスをおさらいしておきましょう。赤ちゃんの身体機能は上から下、つまり頭から始まり、足先へと順々に進んでいきます。
赤ちゃんの一人歩きまでのプロセスは通常、首すわり、寝返り、お座り、ずりばい、ハイハイ、伝わり立ち、伝わり歩き、一人歩きという段階を通過していきます。
発達のスピードや時期については、赤ちゃん一人一人の運動機能や身体の成長、個性、環境などによって違ってきます。
うつぶせになることを嫌う傾向
お座りができた赤ちゃんは、次はうつぶせの体勢でずりばいしたり、腕と足で体を支えてハイハイしますが、シャフリングべビーはお座りしたままの状態でずりずりと移動することを好みます。
寝返りをするのが遅れる
寝返りをしたがらない、あるいは寝返りを始める時期が遅れる傾向が見られます。これはやろうとしてもできないのではなく、どちらかというと寝返りが少ない傾向にあることを意味します。
足を床につけたがらない
お座りの姿勢のまま、赤ちゃんを抱きかかえても、両足を床につけようとしない傾向がみられます。足に力を入れることを嫌い、足をつっぱらろうとしない赤ちゃんが多いといわれています。
つたわり立ち・つかまり立ちを嫌う
ハイハイをしたがりませんので、ものを支えにつたわり立ちをすることも好みません。シャフリングベビーの場合、お座りまでの発達は他の赤ちゃんとあまり変わりませんが、お座り以降の発達が遅れる傾向にあります。
ハイハイをしない
ハイハイをせずにお座りの姿勢のまま、ずりずりと前に横に移動することを好みます。移動したい場合にはハイハイではなく、座ったままの状態で動きます。
兄弟姉妹やお父さん・お母さんもシャフリングベビー?
これは愛知県の乳幼児健診の追跡調査から明らかになった特徴で、シャフリングベビーのうち、その四割は兄弟姉妹や両親にシャフリングをしていた人がいたということです。※参考2
シャフリングベビーの統計や調査に関しては、いまだ地域ごとの試みの統計ですので、これらの特徴はあくまでも傾向と捉えるようにしましょう。
実際にシャフリングをする赤ちゃんの中には、数ヶ月間シャフリングが見られたものの、その後標準的なスピードで発達が進み、1歳半で一人歩きができるようになる子もいます。神経質にならずに赤ちゃんの個性を大事にし、落ち着いて見守ることが大切です。
赤ちゃんがシャフリングする原因とは?
上述したように統計によると、シャフリングベビーには本人の兄弟姉妹や両親もシャフリングをしていた確率が四割近くありますが、これはあくまでも一地域の統計であって、シャフリングと遺伝要素との関連が医学的に立証されているわけではありません。
シャフリングベビーは下半身の筋肉量が若干少なく、筋肉のはりが弱いことも統計調査から指摘されていますが、これに関してもすべての事例に当てはまるという証拠はありません。住環境や生活様式は赤ちゃんの成長発達になんらかの影響を及ぼすとされています。
シャフリングがこのケースに当てはまるかどうかに関しては、医学的な根拠はありませんが、まったく無関係と断言することもできません。赤ちゃんのシャフリングについて気になる点があれば、自己判断せずに専門知識を要する小児科医に相談するようにしましょう。
発達障害や疾病に起因するシャフリング
現在のところ確実に分かっているのは、発達の一段階としてシャフリングをする赤ちゃんが少数ながらいるということ、そしてその大多数が2歳ごろまでには歩行を始めること。つまり、ダウン症や脳性まひなどの発達障害や機能障害によりシャフリングが生じるのは非常に稀な事例といえます。
このような場合にはシャフリングだけでなく、首が座らない、手指の発達が弱い、ミルクの飲みが悪い、言葉の理解が遅い、などの他の症状も見られますので、シャフリングだけを根拠に赤ちゃんに発達障害があるとはいえません。シャフリングとともに以下のような点が見られたら、小児科医に相談することをお勧めします。
1、首の座りが悪い
赤ちゃんの首が座らない、抱っこすると首や頭がぐらぐらする、体全体に筋肉の張りが感じられないなど。
2、ミルクをうまく飲めない
3、泣き方が弱い、ほとんど泣かない
4、手指に力を入れることがない、手指の発達がみられない
5、表情に変化が感じられない、表情が乏しい
6、言葉を理解している様子がみられない、言葉を理解しようとしないなど
赤ちゃんがシャフリングをする場合の注意点として、まず上記のような点が見られるかどうかじっくり観察するようにしましょう。ただしこのような症状のすべてが発達障害・機能障害・疾病に起因しているとは限りません。
神経障害や身体の機能障害については、専門医の診察に基づいて精密な検査を行わなければ診断を下すことはできません。たとえ小児科医であっても、視診だけで診断を下すことはできませんので、心配なことがあれば自宅でひとりで悩まず、乳幼児定期健診の際にでも相談するようにしましょう。※参考2
赤ちゃんがシャフリングする際の注意点とは?
月齢が同じ赤ちゃんが活発にハイハイをしているのに、うちの子だけハイハイをまったくしない、と不安に駆られるお母さんは大勢います。
どこか悪いところがあるのでは?足の筋肉に問題があるのでは?と考えてしまう方もいるようですが、シャフリングベビーの大多数は2歳ごろにはちゃんと立って歩けるようになります。
お母さんが側で常に不安に感じていると、赤ちゃんにその不安な気持ちが伝わってしまいます。赤ちゃんのシャフリングも個性のひとつ、発達過程の一段階とおおらかに受けいれることが必要。叱ったり、無理やり立たせようとするのはかえって赤ちゃんの意欲をそぐ結果に終わります。赤ちゃんがシャフリングする際の注意点をいくつか挙げてみましょう。
無理やり立たせようとしない
赤ちゃんがハイハイをしたがらないといって、無理やり歩行器に長時間のせることはお勧めできません。どんな赤ちゃんでも身体と心の準備ができたら、自分から自然に歩くようになります。
立つ練習をさせようと歩行器に入れてしまうと、つま先立ちで立つことを覚えてしまいます。一人歩きができるようになるには、足腰の筋肉を鍛え、身体全体でバランスを取る平衡感覚も必要です。
歩行器も上手に利用すると便利なアイテムになりますが、シャフリングをしている赤ちゃんには適していませんので注意しましょう。
赤ちゃんをうつぶせにして遊ばせる
シャフリングベビーはうつぶせになることを嫌いますが、お母さんやお父さんが側で支えてあげるようにして、うつ伏せ寝のままで遊ぶ練習を行ってみましょう。そのまま床にうつぶせにすると嫌がる場合には、お母さんやお父さんが仰向けになり、おなかの上に赤ちゃんをうつぶせに乗せてみましょう。
赤ちゃんが嫌がる場合にはやめますが、そのままうつぶせの体勢でいてくれる場合には、赤ちゃん自身に自分でバランスを取る練習をしてもらいましょう。おなかの上で赤ちゃんを前後左右に揺らす、赤ちゃんに飛行機のように自分で動いてもらうなどの動きを通して、身体の筋肉を動かす練習ができます。
ハイハイしやすい環境を整える
赤ちゃんがいる部屋をもう一度確認し、赤ちゃんがハイハイできる環境にしてあげましょう。床をきれいにし、ハイハイできるだけのスペースを作るようにします。床に邪魔なものを置かないよう注意。誤飲や怪我を防ぐため、赤ちゃんが触ったり、口に入れると危険なものはすべて排除します。
布団の上では足をとられてしまい、ハイハイもしずらくなります。ハイハイの練習をする際には平坦な床やフロアマットに座ってもらい、それからハイハイに挑戦してもらいましょう。
遊びをとおして身体機能を発達させる
赤ちゃんに無理強いは禁物。どんな運動や練習でも、楽しくなければすぐに飽きてしまいます。遊びの中で赤ちゃんが自然に筋肉の動かし方やバランス感覚を養えるように工夫してみましょう。
テーブルや椅子・ソファ越しに、赤ちゃんに呼びかけるようにするのもひとつの方法。狙いは赤ちゃんに腰を浮かしてもらうこと。赤ちゃんがお座りをした位置よりも高い場所から、赤ちゃんに呼びかける。
赤ちゃんが立ちあがらなければ取れない位置におもちゃを置く、布団によじのぼってもらう、お母さんやお父さんの体を乗り越える遊びを考える、赤ちゃんのすぐ前ではなく、左右や背中側に大好きなおもちゃを置くなど、赤ちゃんが遊びの中で、思わず中腰になってしまうシチュエーションをたくさん作ってあげましょう。
他の赤ちゃんと遊ぶ機会をつくる
他の赤ちゃんと遊ぶ機会を積極的につくってあげましょう。ハイハイや伝わり歩きをしている赤ちゃんと直接触れ合うことにより、知らず知らずに他の子の真似をすることがあります。
リハビリ・療育は必要?
シャフリングベビーは、足の筋肉が平均よりも少々弱いのが原因で起こると言われていますが、足自体に問題があるわけではないため、少し時間はかかるかもしれませんが問題なく歩けるようになります。そのため定期健診などではもう少し様子を見ましょう、とのみアドバイスする事がほとんどです。
しかし、中には関節や筋肉のスムーズな動きを促し足の正常な動きを赤ちゃんに早く覚えてもらうために、リハビリ・療育を勧める専門家もいます。
リハビリをするかしないかは家族の判断次第ですが、もし勧められた場合は病院までの距離や、通いやすいスケジュールかどうか、赤ちゃんが嫌がらず続けられそうか、といった点も考慮して決定するようにしてください。
まとめ
シャフリングベビーについて、その特徴や注意点など気になるポイントをご紹介しました。お座りのままずりずりと移動する赤ちゃんの姿はとっても可愛いものですが、親としては一日も早くハイハイや伝わり歩きをしてしほしい!と願ってしまいます。
他の赤ちゃんはもうハイハイしているのに、うちの子はどうしてできないの?と不安に感じる方も多いようですが、シャフリングベビーの大多数は2歳ごろまでには歩けるようになりますので、あまり神経質にならず、赤ちゃんの発達成長を側で温かく見守ってあげましょう。
赤ちゃんの成長発達のプロセスは百人百様。シャフリングも赤ちゃんの個性と受け入れ、そのユニークな成長ぶりを側でサポートしてあげることが求められています。
※参照1 1歳6カ月児健診におけるshuffling baby の疫学的調査
※参照2 愛知小児保険医療総合センター 乳幼児健診の実際