赤ちゃんを抱こうとすると背中をぴんと反らしてしまい、抱きにくく困ってしまった。こんな経験をされたことはありませんか?抱っこしているときや授乳中、おむつかえや沐浴のときなどに、赤ちゃんが急に反り返ると、どこか体の調子が悪いのでは?脳性まひでは?筋肉の病気では?と不安に感じてしまいます。
しかし赤ちゃんの反り返りが病気の兆候というのはごく稀で、そのほとんどは、赤ちゃんの自然な身体の動き。生後1年を過ぎると収まってくるといわれています。
赤ちゃんの反り返りについて、その原因、対処法、症状、病気との関係など、注意が必要なのはどんな反り返りか、どんな場合は心配ないのかなどをご紹介します。
赤ちゃんの反り返りとは?
赤ちゃんの反り返りとは赤ちゃんが背中を反り返すこと。えび反りとも呼びますが、頭から足先までまっすぐに伸ばしたり、背中を反り返すように湾曲させることもあります。抱っこしているときや授乳のときに、赤ちゃんが急に反り返り、驚いてしまうお母さんも多いようです。
赤ちゃんの反り返りはほとんどの場合、赤ちゃんの自然な反応でそのままにしておいても問題はありませんが、症状が非常に強い場合や、症状の出方しだいでは脳性まひの可能性も捨て切れません。どんな場合に注意が必要なのか、赤ちゃんの反り返りについて詳しくみていきましょう。
赤ちゃんの反り返りはいつ起こる?
赤ちゃんの反り返りは早い場合には、生後一ヶ月目くらいから見られます。反り返りだけでなく、手足や体の一部がぴくぴくと痙攣することもあります。
反り返りに関しては個人差があり、あまりしない赤ちゃんもいれば、反り返りが好きな赤ちゃんもいますが、傾向としては生後2、3ヵ月目から始まり、生後1年目頃になるとなくなるようです。
赤ちゃんの反り返りの原因とは?
赤ちゃんの反り返りの原因は大きく分けて二つ。ひとつは脳性まひや破傷風などの病気、もう一つは赤ちゃんの成長や身体機能の発達により自然に起こるもの。
赤ちゃんの成長に伴い起こる反り返りに関しては、そのままにしておいても心配ありませんが、病気の兆候である場合には専門的な知識を要する医師の診察を受ける必要があります。
心配の要らない反り返り
病気の兆候としての反り返りはごく稀なケースで、多くは赤ちゃんの体や運動機能の発達に伴う自然な動きになります。反り返りに隠れた病気については下記にいくつか紹介しますので、まずは今度は心配のいらない反り返りについてみていきましょう。
抱き方が悪い
赤ちゃんの反り返りはお母さんやお父さんの抱っこの仕方が悪いせいかも知れません。初めての赤ちゃんで、まだよく抱き方が分からない方は、これを機に赤ちゃんの抱き方についてよく勉強するようにしましょう。
良い抱き方とは、縦抱きでも横抱きでも抱いたときに、赤ちゃんの体にねじれが生じないようにすること。首の座っていない赤ちゃんを抱くときに、頭や首を支えることに神経が集中してしまい、足がだらっと垂れ下がっていることがありますが、これはNGです。
赤ちゃんの体全体をしっかり受け止めるように抱いて上げましょう。抱くと必ず嫌がり、反り返る場合には、抱き方に問題がある可能性があります。
体を動かしている
赤ちゃんの体は毎日成長を続け、それとともに運動機能も日々発達を続けています。乳幼児の運動能力の発達は目覚しく、昨日までは出来なかったことが今日は容易く出来るようになることも珍しくありません。
赤ちゃんが自分の手足を動かせるのは、運動能力が順調に発達しているため。指を口元にもっていく、手足をばたばたさせる、寝返りをうとうとするなど、赤ちゃんは自分が出来る動作を繰りかえすことで、運動能力をさらに向上させていきます。背中をぴんと伸ばしてて後ろに反らす動きもそのひとつと考えることができます。
気持ちが悪い・不快に感じている
汗をかいて気持ちが悪い、もっと遊びたいのに抱かれてしまった、まだ眠くないなど、自分の意思に反して何かをされたときにも、赤ちゃんは反り返りをします。
遊んでいる最中にお母さんやお父さんに抱かれた、あることに気をとられている最中に抱かれてしまい、駄々をこねる。このようにお母さんやお父さんに嫌なことをされたとき、反り返りをすることで、赤ちゃんなりの嫌だという気持ちを表示をしていると言えるでしょう。
生後半年くらいになると、赤ちゃんに自我が芽生えますので、自分の嫌いなこと、したくないことをさせられると、体を動かしてその気持ちを表現できるようになります。反り返りの原因を探るには、赤ちゃんの様子をじっくり観察することが必要不可欠です。
寝返りの練習
生後4ヵ月頃からの赤ちゃんの反り返りは、寝返りの練習をしている可能性もあります。寝返りが出来るようになる時期に関しては個人差があり、早い赤ちゃんは生後3ヵ月目くらいから出来るようになりますが、標準的には生後4、5ヶ月から8ヵ月目までに出来るようになります。
赤ちゃんの反り返りは、寝返りをしようと、赤ちゃんが頑張って背中を反らしているためかもしれません。生後4、5ヶ月目の赤ちゃんで、抱いているときではなく、寝ている体勢で反り返りをすることが多かったら、赤ちゃんの寝返りの練習をそっとサポートしてあげましょう。
寝返りの練習をサポート
赤ちゃんが寝返りをしようとしていたら、側についてサポートしてあげましょう。赤ちゃんは寝返りをする際にまず腰をひねり、そのあと上半身を回転させます。腰の動きがうまくいっているようであれば、背中や肩を軽く支え、押してあげるとくるりと寝返りが出来るようになります。
赤ちゃんが寝返りの練習をするようになったら、特別な注意を払わなければなりません。あおむけから反り返りでうつぶせになることは出来ても、もう一度あお向けになることが出来ない赤ちゃんもいます。うつぶせのまま眠ってしまうと、窒息のリスクがあります。赤ちゃんが寝返りをするようになったら、注意深く見守るようにしましょう。
赤ちゃんの反り返りと背骨の関係
赤ちゃんと大人の背骨の形は異なります。大人の背骨はS字ですが、赤ちゃんは生まれた時はCの形をしていて、首が据わったりハイハイ・歩く等、発達の段階を経て段々とS字になっていきます。
反り返りは赤ちゃんの背骨がCからSへ変化していく途中に良く見られる動作ですが、その程度が強すぎると、首周りの筋肉が緊張して硬くなったり、変化している背骨に負担をかけてしまうのです。その気持ち悪さから、体調に問題はないのにいつも不機嫌だったり、よく泣く傾向が強くなります。
赤ちゃんの反り返りの対処法とは?
抱いているときや授乳中に赤ちゃんが反り返りをすると、抱き方が不安定になり、赤ちゃんを落としてしまうのではないか、と不安になります。
赤ちゃんにも個性やくせがあり、中には反り返るという運動自体が好きな赤ちゃんもいます。いきなり赤ちゃんに体を動かされると、どうして良いか分からず、困ってしまうお母さんも多いようです。赤ちゃんの反り返りにはどのように対応すればいいのでしょうか?
抱き方を見直す
抱いているときに反り返りの多い赤ちゃんは、赤ちゃんのせいではなく、お母さんやお父さんの抱き方が悪いせいかも知れません。抱き方をもう一度見直してみましょう。
赤ちゃんの体は柔らかく、ふっくらとしています。刺激に敏感な赤ちゃんの中には、お母さんやお父さんの手の関節や指輪などが背中に当たるのを嫌がる子もいます。
抱かれるのを嫌がる赤ちゃんに対しては、やわらかく肌触りのよいタオルやブランケットで赤ちゃんをくるむようにしてみるのもいい考え方です。横抱きだけでなく、縦抱きも覚え、赤ちゃんに心地よく感じてもらえる抱き方を工夫しましょう。
汗かき対策
まだ体の機能が十分に備わっていない赤ちゃんは、発汗することで体温の調節を行います。大人に比べると赤ちゃんが汗をかきやすいのはこのため。
まだお座りの出来ない赤ちゃんは、24時間布団に寝ていますので、汗をかいたままそのままにしておくと、体を冷やしてしまいます。
また吸湿性・通気性の悪い寝具に寝かせられていると、背中と布団の間に熱がこもってしまい、これが原因で背中が気持ち悪く感じられるようです。寝汗対策にも注意を払い、赤ちゃんが快適に過ごせる環境を作ってあげるようにしましょう。
赤ちゃんの反り返りと病気の関係とは?
赤ちゃんの反り返りに対して不安な思いを抱くお父さんやお母さんが多いのは、赤ちゃんの反り返りは脳性まひの兆候、という話を聞いているためではないでしょうか。
確かに赤ちゃんの反り返りは脳性まひの症状のひとつとして挙げられていますが、これだけをもとに脳性まひかどうか診断することは出来ません。
また反り返りは脳性まひだけでなく、破傷風、急性脳症、核黄疸、発達障害の兆候のひとつともいわれます。反り返りに隠れている病気についてみていきましょう。
赤ちゃんの反り返りは脳性まひの兆候?
脳性まひとは、赤ちゃんがまだおなかの中にいるときから生後4週目の間に、なんらかの原因により脳に起こった損傷によって、運動機能に障害が生じた状態を指します。脳性まひは赤ちゃんの運動発達に遅れや異常が生じることによってあらわれます。
生後数ヶ月目に見られる脳性まひの症状を挙げると、ミルクをうまく飲めない、首の座りが遅い、反り返りが激しい、手足に強張りが見られるなど。このような症状がある場合には、乳幼児健診の際に相談するようにしましょう。
乳幼児健診では首の座りなどの項目もチェックされますので、気になることがある場合には、医師に相談するようにしましょう。
どんな反り返りなのかよく観察する
生後数ヶ月目に反り返りがあるからといって、必ずしも脳性まひだとは限りません。赤ちゃんの反り返りが問題ないものかどうか、じっくり観察することが大切です。
反り返りはとくに体に問題がなくても、赤ちゃん自らが体を動かせることを確かめるように行う場合もあります。反り返りがあったとしても、以下に示すような状態であれば、まず問題ないといえるでしょう。
首が座っている、首の動きに不自由はない、左右の手を口元に当てることができる、目の動きに異常はない、脚を自由に動かすことが出来る。
このように手足や体幹の状態に異常が見られない場合、反り返しは単に赤ちゃんが自分の体を動かしているものなので、特別心配する必要はありません。
脳性まひ以外の病気の可能性
反り返りに隠れている疾病は脳性まひだけではありません。脳性まひ以外の病気と反り返りについてまとめてみましょう。いずれの場合も医師に相談し指示を受けるようにしましょう。
破傷風
破傷風は土の中にある破傷風菌が、体に付着することにより感染します。破傷風に感染した場合も、発症すると反り返りの症状があらわれます。破傷風は現在では、混合ワクチンの予防接種を行うことで効果的な予防が可能ですが、
万が一感染した場合は、重篤な状態に陥ってしまいます。破傷風の症状は息苦しさや反り返り、筋肉の硬直などですが、感染者のほとんどは高齢者で新生児の感染はごく稀なケースになります。
発達障害
自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害の場合にも、抱きにくい、反り返りがあるなどの症状が見られることがあります。発達障害の原因はまだ完全に解明されたわけではありませんが、脳の機能になんらかの障害が起きていることに間違いはありません。
自閉症などの広汎性発達障害の場合にも、反り返りや抱かれるのを嫌がることがありますが、反り返りの症状だけをもとに発達障害かどうかを診断することは出来ません。反り返り以外にも気になる症状がある場合には、自己判断せずに専門医に相談するようにしましょう。
核黄疸
新生児の黄疸は珍しいものではありません。黄疸とは体内のビリルビンの値が増加した症状。大人と違い、まだ体の機能が未発達な新生児によく見られます。赤ちゃんの黄疸は、生後数日から1週間から2週間程あらわれ、その後は消えていきます。
しかしなんらかの理由により血液中のビリルビンの数値が非常に高くなり、脳にまで入りこんでしまうと、脳に損傷を与える結果になります。これが核黄疸といわれる症状で、そのままにしておくと、脳性まひや難聴といった重度の障害が残るリスクがあります。
核黄疸の兆候はミルクの飲みが悪い、手足がだらっとする、疲れているように見える、筋肉の緊張が無くなるなどですが、症状が進むにつれて痙攣や発熱といった症状もあらわれます。
ここまでのまとめ
赤ちゃんの反り返りについて知っておきたい知っておきたいさまざまな情報ををご紹介しました。赤ちゃんの反り返りは赤ちゃんの身体の成長と運動能力の発達に伴い生じるもので、いわば自然な身体の反応。とくに神経質になる必要はありません。
ただしあまりにも頻度が多い場合や症状が激しい場合には、早めに専門医の指示に従い検査を受けたほうが安心です。赤ちゃんの反り返りについての知識を養い、適切に対処するようしましょう。