赤ちゃんの絶壁が気になるときに知っておきたいこと

赤ちゃん 生活

赤ちゃんの後頭部が平らな気がするけど、これってもしかして絶壁なの?と不安に感じるお母さんもいるようです。赤ちゃんの頭はきれいな丸い形が理想。後頭部が絶壁・左右非対称、頭の形がいびつ・扁平なのは、赤ちゃんの頭の変形性斜頭・短頭と呼ばれています。

赤ちゃんの頭が絶壁になる原因とは?赤ちゃんの頭の変形の症状や種類とは?赤ちゃんの頭の絶壁の予防法・対処法など、赤ちゃんの頭の絶壁が気になるときに知っておきたい情報をご紹介します

赤ちゃんの頭が絶壁になる原因とは?

赤ちゃんの頭が絶壁になる原因とは?

赤ちゃんの頭の絶壁の原因は頭に圧力がかかること。分娩の時点での赤ちゃんの頭は、狭い産道をとおりやすいように、頭蓋骨の隙間がまだぴったりと閉じていません。

このため頭が柔らかく、ちょっとした外圧を受けるだけで形が変形する可能性があります。絶壁を含めた赤ちゃんの頭の変形は、位置的頭蓋変形症と呼ばれています。

赤ちゃんの頭に外圧がかかる時期については、出生前、分娩時、出生後の3つのパターンに分けられます。出生前と出生後それぞれについて詳しくみていきましょう。

出生前の絶壁の原因について

出生前の絶壁の原因について

赤ちゃんの頭が絶壁になる原因は、新生児・乳児期の向き癖や寝かせ方だけではありません。お母さんのおなかにいるときの体勢によっても、頭の形が変形することがあります。

胎児のときの原因として挙げられるのは、逆子(骨盤位)、双子や三つ子などの多胎、横位(赤ちゃんの体が子宮の上下に対してほぼ直角)など。これらの体勢は、頭位(正常な状態、赤ちゃんの体が縦にあり、頭が下にある体勢)と違い、赤ちゃんの頭に外圧がかかりやすいため、頭に変形が生じやすくなります。

分娩時の絶壁の原因について

吸引分娩、鉗子分娩、逆子分娩、難産の場合にも、赤ちゃんの頭部に強い圧力がかかるため、頭部に変形が生じる可能性があります。

出生後の絶壁の原因について

頭蓋骨の結合

人間の頭蓋骨は前頭骨、頭頂骨、後頭骨、側頭骨といった複数の骨から成り立っています。大人の場合はこれらの骨同士がぴったりとくっついていて、隙間はまったくありません。

しかし赤ちゃんの場合、生まれた時点では頭の骨は柔らかく、骨と骨の間には隙間があります。これは分娩の際に狭い産道をとおれるようにするためで、赤ちゃんの脳の成長とともに頭蓋骨は徐々につなぎ合わさり、骨と骨の間の隙間もなくなります。

このため赤ちゃんの頭は外圧に弱く、向き癖や寝かせ方が悪いと絶壁になってしまうおそれがあります。どんな場合に絶壁になりやすいかについて具体的にみていきましょう。

長時間の仰向け寝

長時間の仰向け寝

赤ちゃんを長時間仰向けに寝かせていると、後頭部への圧力がかかりすぎ、絶壁になる可能性が増大します。日本の赤ちゃんは欧米の赤ちゃんに比べると絶壁になりやすい傾向にありますが、これは日本では昔から仰向け寝が慣習的に行われてきたため。

これに対して、欧米では以前はうつぶせ寝をさせることが一般的でした。しかしながら近年、うつぶせ寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連性が指摘されるようになり、欧米でも仰向け寝が普及。これにより絶壁の赤ちゃんが増加しています。

赤ちゃんを仰向けに寝かせると、絶壁のリスクが増えるとはいえ、赤ちゃんのうつぶせ寝はNG。乳幼児突然死症候群だけでなく、窒息死のリスクも増大しますので、1歳未満の赤ちゃんは仰向けに寝かせる必要があります。乳幼児突然死症候群のリスクを回避しながら、尚且つ頭の変形を防ぐためには、赤ちゃんの寝かせ方や抱きあげ方に注意する必要があります。

向き癖

向き癖

仰向け寝の影響により、赤ちゃんの後頭部が絶壁になりかけると、その平らになった部分を下にしたほうが頭が安定します。これにより一定の部分を下にして寝る悪いくせがつくことがあります。

大人の場合、首まわりの筋肉が発達しているため、仰向けに寝たときも顔を真正面に保つことができますが、赤ちゃんの場合は別。首の筋肉が未発達なため、顔を真正面に保つことができず、扁平になった側を下にして頭を安定させようとします。この向き癖により、絶壁がさらに加速するおそれがあります。

抱き癖

抱き癖

赤ちゃんを抱くときに、いつも同じ腕で抱くことも絶壁の原因のひとつ。赤ちゃんの頭の片側だけに圧力がかかってしまい、その部分がへこみやすくなります。

ベビーカーなどで長時間同じ体勢を取ること

ベビーカーなどで長時間同じ体勢を取ること

ベビーカーやベビーシートに乗せ、長時間同じ体勢を取らせることも、赤ちゃんの絶壁の原因になります。とくに睡眠時間の長い乳児は、寝ている間に体勢を変えることができないため、下になった部分に大きな外圧がかかってしまい、扁平が生じます。

早産の赤ちゃんの場合

早産の赤ちゃんの場合

早産の赤ちゃん、体が小さく生まれた赤ちゃん、呼吸機能が未熟な赤ちゃんは、生まれてすぐにNICU(新生児集中治療室)で治療を受けますが、保育器の中で過ごす時間が長引くと、下になったほうの頭に変形が生じやすくなります。

赤ちゃんの頭の変形症の種類

赤ちゃんの頭の変形症の種類

位置的頭蓋変形症には、斜頭症、短頭症、長頭症、後部扁平といろいろな種類があります。それぞれの特徴についてみてみましょう。

斜頭症とは?

斜頭症とは?

斜頭症にはいくつかのパターンがありますが、もっとも一般的なのは後頭部の片側が扁平になる変形で、さらに症状が悪化すると、耳や頬が前方に出る、前頭部が突出するなど、頭だけでなく顔も非対称になります。

短頭症とは?後部扁平とは

短頭症とは?

後部扁平とは後頭部の丸みが少ない状態、いわゆる絶壁を指します。短頭症とは顔の左右の幅が前後の幅に比べて広い状態を指します。短頭症は多くの場合、後部扁平を伴います。

長頭症とは?

長頭症とは?

長頭症とは頭の前後の幅が横の幅に比べて広くなっている状態を指します。

赤ちゃんの絶壁の予防とは?

乳幼児突然死症候群や窒息死のリスクを避けるためには、赤ちゃんを仰向けに寝かせる必要がありますが、仰向け寝を長い間継続することは、絶壁や斜頭症といった頭の変形につながりかねません。仰向け寝は維持しながら、絶壁を予防するために効果的な方法について挙げてみましょう。

タミータイム

タミータイム

タミータイムとは欧米で盛んに推奨されている方法で、赤ちゃんの絶壁を予防するだけでなく、首や背中の筋肉の発達を促してくれます。具体的には赤ちゃんをうつぶせにおき、自分で頭を起こそうとする動きを見守ります。

赤ちゃんをうつぶせにすると、無意識のうちに頭を上げて、周囲を見ようとします。このとき首、肩、背中の筋肉が鍛えられ、手足もバタバタと動かしますので、体全身の運動機能の発達にもつながります。腹ばいを姿勢を取っている限り、頭への圧迫がまったくありませんので、絶壁の予防に効果的。毎日の生活にタミータイムを取り入れることにより、首のすわりがよくなり、寝返りの練習にもなります。

赤ちゃんをうつぶせにする際の注意点

赤ちゃんをうつぶせにする際の注意点

赤ちゃんのうつぶせの練習は生後1ヶ月を過ぎてから行うことが一般的です。うつぶせにする際には赤ちゃんから絶対に目を離さずに、注意深く赤ちゃんを見守りましょう。最初は数秒からはじめ、慣れてきたらじょじょに時間を伸ばしていきます。

うつぶせのまま頭をおこせないときは、すぐに赤ちゃんを抱き起こしましょう。やわらかい布団で上で行うのはNG。赤ちゃんがうまく頭や体をおこせないと、口や鼻がふさがれてしまい、窒息する危険があります。赤ちゃんのうつぶせにする際には、ひとときも目をはなさずに赤ちゃんの様子を見守ってあげましょう。

抱く腕をかえること

抱く腕をかえること

赤ちゃんを抱く腕を交互にかえることで、同じ場所に圧力がかかることを防止できます。授乳の際には一方のおっぱいだけでなく、左右を交互に与えるようにしましょう。片方の腕で抱くくせがつくと、赤ちゃんのほうもそれに慣れてしまいます。赤ちゃんを抱く際には、意識的に腕や抱き方を変えることが大切。頭の同じ部分だけに繰り返し圧力がかかりません。

寝かせ方のポイント

寝かせ方のポイント

赤ちゃんを布団やベビーベットに寝かせるときには、毎回同じ向きに寝かせず、少しずつ向きや頭の位置をかえながら寝かせましょう。

授乳後の寝かせつけのたびに、まったく同じ向きに寝かせていると、頭の一箇所だけに圧力がかかります。授乳後に寝かせるときには、赤ちゃんの頭の位置や向きを少しずつずらしながら、一箇所だけが下にならないよう気を配りましょう。

枕の位置もかえてみる

枕の位置もかえてみる

赤ちゃんを布団やベッドに寝かせる際のもうひとつのポイントは、ときどき枕の位置をかえてみること。布団やベッドからの視線が固定されると、赤ちゃんの好みの方角が決まってしまい、その結果頭の向きも常に同じ、ということになります。

ときどき枕の位置をかえてあげると、見える風景も変わり、頭や顔の向きをうまくかえることができます。絶壁の予防になるだけでなく、赤ちゃんの好奇心も刺激され、発育・発達を促してくれるというメリットも得られます。

ドーナツ枕を使用する

ドーナツ型の枕は真ん中にくぼみのあるベビー用の枕。ドーナツ枕に寝かせると、赤ちゃんの後頭部に圧力がかかりません。

赤ちゃんの絶壁の対処法について

今度は赤ちゃんの頭の絶壁が進行しているときの対処法についてみていきましょう。赤ちゃんの月齢が低く、なおかつ絶壁の症状が軽度の場合は、赤ちゃんの寝かせ方や抱き方を工夫することにより、症状を改善することが可能です。

しかし症状が重篤な場合、月齢が高い場合、水頭症などの病気にかかっている場合には、これらの対処法では対応できません。赤ちゃんの絶壁の治療法とはどんなものでしょうか?

ヘルメットによる治療

ヘルメットによる治療

赤ちゃんの絶壁を矯正するために特別に作られたヘルメットを装着することにより、頭の変形を改善することが可能です。これはもともと欧米で開発された治療法ですが、現在では日本でも一部の病院で取り扱っています。

ヘルメットによる治療が有効かどうかについては、専門医の判断を仰ぐことが大切です。赤ちゃんの絶壁が気になったら、まずは専門医の診察と精密検査を受けましょう。ヘルメットの費用は健康保険の適用外になりますので、医師とよく相談の上で治療を進めることが必要です。※参照1

まとめ

赤ちゃんの頭の絶壁が気になるときに知っておきたい情報を幅広くご紹介しまし。赤ちゃんの絶壁は遺伝によるものもありますが、抱き癖、向き癖、寝かし方によっても頭に変形が生じることがあります。

赤ちゃんの頭をきれいな形に整えるためには、赤ちゃんの抱き方や寝かせ方に注意することが大切。寝かせるときにいつも同じ側が下にならないように注意するとともに、起きている時間帯にタミータイムを積極的に作り、赤ちゃんの頭に圧力がかかりすぎないよう心がけましょう。

※参照1 厚生労働省 形状誘導ヘルメット ワーキンググループによる評価