まだ言葉を話すことができない赤ちゃんは、体調が良いときや悪い時のサインをさまざまな方法で示しています。機嫌や食欲などでわかることもありますが、具体的に症状として体調不良が読み取れる場合もあるでしょう。
そのひとつとして咳がありますが、咳=病気というわけではありません。
実は、咳が出る、 咳き込むのにはさまざまな原因があるのです。その原因により対処方法も異なりますので、咳の種類を読み取り、適切に対処していきましょう。そこで、赤ちゃんと咳に関する情報を幅広くご紹介していきますので、参考にしていただければと思います。
咳のメカニズム
赤ちゃんが咳をするのには、さまざまな原因があります。そもそも咳が出てしまうのは、口やのど、気管支など肺に繋がる気道の中に異物が混入したことから発生するものです。
異物を排除しようとする働きが、咳という症状として現れます。咳が出るというのは、さまざまな異物から身体を守る大切な機能なのです。
咳の音での症状の目安
ひとくちに咳と言ってもさまざまな種類の咳があります。例えば、音に注目してみましょう。
「コンコン」という軽い乾いた音の咳は、病気の初期症状か、病気以外の原因で出ている可能性があるでしょう。
「ゴホゴホ」という湿り気のある音の咳や、「ゲホゲホ」といった痰が絡むような咳は、病気にかかっている可能性があるでしょう
「ケンケン」と犬のような咳をする場合は、呼吸困難に繋がるような重度の病気が関係している可能性があります。
さまざまな病気の咳
赤ちゃんが咳をするとき、気温差や空気の乾燥が関係していることもありますが、ウィルスや細菌が体内に入り、病気を引き起こしている可能性もあります。
風邪の咳
最も多いのが、風邪による咳です。鼻から侵入したウィルスが鼻水や鼻づまりを起こさせて鼻呼吸をストップさせてしまいます。
そして口呼吸になり、粘膜が弱って咳を誘発させてしまうのです。風邪の回復と共に咳は落ち着いてくるので、悪化させないように気を配るようにしましょう。
風邪が悪化した場合
赤ちゃんが風邪をひくと、鼻水が出たり咳が出たりします。そのまま回復すれば咳は落ち着いてきますが、稀に悪化する場合もあるので注意が必要です。
咳の音が「コンコン」から「ゲホゲホ」に悪化するのはよくあることですが、そこからさらに「ケンケン」と犬の鳴き声のような咳に変わったら要注意です。
ケンケンという咳は犬吠様咳嗽と呼ばれ、喉の奥が炎症で腫れ上がり呼吸がどんどん苦しくなる可能性があります。苦しそうにケンケンと咳が続くようなら、すぐに病院で処置してもらうようにしましょう。
場合によっては入院が必要になるほど深刻な場合もありますので、異常な咳が聞こえてきたら、すぐに病院へ行くようにしてください。
肺炎について
赤ちゃんの咳が悪化すると、肺炎を引き起こす可能性もあります。最初は風邪であっても、咳が続くことで粘膜が弱り新たなウィルスや細菌に感染してしまうのです。肺炎になるのには、さまざまなウィルスや細菌が関係してきます。
年齢によって異なりますが、赤ちゃんの時期なら、B群連鎖球菌や、大腸菌などの腸内細菌が肺炎を引き起こしている可能性があるでしょう。
1~2歳くらいの赤ちゃんなら、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が肺炎を引き起こすことが多いです。2歳以降だと、肺炎球菌やインフルエンザ菌に加え、肺炎マイコプラズマや、肺炎クラミジアに感染する恐れがあります。
いずれの場合も、抗生物質や抗菌薬で対応する必要があるので、すぐに病院で処置してもらうようにしましょう。
気管支炎の場合
赤ちゃんが風邪をひき、悪化させてしまうとケンケンという咳に代わることもありますが、「ゴホゴホ」「ゲホゲホ」と痰が絡む咳がひどくなるケースもあります。
そのまま悪化が進むと、咳が慢性化し気管支炎を引き起こす可能性もあるので、咳止めを処方してもらい、様子を見るようにしましょう。
咳止めは強いお薬なので市販薬を個人の判断で与えないようにしましょう。必ず医師の指示に従い赤ちゃんでも安心して服用できる薬を使うようにしてください。
百日咳
百日咳は、長い期間咳が続いてしまう病気です。予防接種により発症率は低くなっていますが、ひとたび流行すると感染しやすいため注意が必要です。
予防接種を受けている赤ちゃんが少ない地域ほど、百日咳が流行しやすくなるので、自治体に予防接種のスケジュールを確認しておくようにしましょう。
百日咳の治療には抗菌薬が必要ですので、早めに病院で診てもらうようにしましょう。
その他咳が出る原因
咳の音に注目することで、軽度か重度かを判別することができます。では、病気以外での咳が出る原因には、どのようなことがあるのでしょうか。
赤ちゃんは、さまざまな原因で咳をします。例えば、空気が乾いている状態だと、喉の粘膜が乾燥して「コンコン」と乾いた咳をし始めるでしょう。また、気温差に弱いため冷えた空気を吸い込むことで咳き込むこともあります。
空気乾燥での咳
赤ちゃんが咳をするのは、病気だけが関係しているわけではありません。気温差などが咳を誘発させるとご紹介しましたが、空気の乾燥も咳を出やすくさせるので室内の湿度も調整しておくようにしましょう。
寒い季節に暖房を使うと空気が乾燥して咳が出やすくなりますので、加湿器を設置して湿度を一定に保つようにしてください。
鼻水が咳の原因になる場合も
赤ちゃんはよく鼻水を出しますが、大人のように鼻をかむ事は出来ません。そうすると寝ている時に鼻水が喉へと落ちてしまい、喉でからむ後鼻漏という状態になります。
赤ちゃんは喉の異物を排除しようと咳をしますが、上手く出来ないため咳を繰り返すようになるのです。この場合は先に鼻水を改善しないと咳も良くならないという事なので、吸入器などを使って鼻水を吸い取るようにしましょう。
また水平に寝ると鼻水が奥へ移動するので、寝るときは枕を少し高くして赤ちゃんに少し角度をつけてあげると、呼吸が楽になります。痰が絡んで咳が酷くなってきたのならば、耳鼻科や小児科で去痰剤を処方してくれるので、赤ちゃんの様子を見ながら上手く活用してください。
誤飲による咳
赤ちゃんが咳をする時、誤飲が原因の場合もあります。特に、離乳食をスタートさせた時期に咳が出やすくなりますので注意しましょう。母乳やミルクとは違い、離乳食は固形物ですのでうまく飲み込めないことがあります。
誤飲で気道に食べ物が引っかかってしまうと、なかなか咳が止まらなくなってしまうので、抱っこをしてポンポンと背中をたたいてあげましょう。また、離乳食はとろとろの状態にして、少しずつ様子を見ながら硬さを調整していくようにしてください。
タバコの煙での咳
赤ちゃんが咳をしているときに、タバコの煙を吸い込んでしまうと、咳が悪化する恐れがあります。ただでさえ粘膜が弱り敏感になっている時期ですので、タバコのような刺激の強いものは遠ざけるようにしましょう。
家族に喫煙者がいる場合は部屋を区切って煙がこないように配慮するべきです。
また、タバコの煙により風邪をひいていなくても咳が出ることもあります。小さな赤ちゃんの喉はとてもデリケートなので、外出先でもできるだけタバコの煙に触れないように気をつけましょう。
咳き込んで嘔吐を繰り返す場合
赤ちゃんが咳を出しているとき、嘔吐することがあります。発熱がなくても嘔吐があると病気ではないかと不安になりがちですが、元気な様子で食欲も落ちていないようならすぐに病院へ駆けつけなくても大丈夫です。
嘔吐してしまうのは、咳が続いて胃を圧迫してしまうことが関係しています。特に食べた後に咳をすると、胃の中の物が出やすくなるので、嘔吐しやすくなるのです。
ただ、嘔吐の後にぐったりしていたり、食欲もなかったりする場合は病気である可能性が高いと言えます。軽い咳であっても、必ず病院に行き何が原因かを突き止めてもらいましょう。
咳が出たときの対処方法
赤ちゃんが咳をするのには、さまざまな原因があります。空気の乾燥や温度、誤飲やウィルス、細菌などいろんなケースがあります。では、咳が出たときにはどのように対処するべきなのでしょうか。判断が困難な場合は病院で指示を仰いで下さい。
乾いた咳
咳の音が「コンコン」と乾いたものであれば体調の様子を見てみましょう。
食欲があり、機嫌も良いようなら、すぐに病院に行く必要はありません。気温差や乾燥による咳の可能性もあるので、しばらく様子を見てみましょう。
しかし、軽い咳でも熱が出ていたり、食欲が無かったりする場合は、すぐに病院で診てもらう必要があります。
咳が苦しそうなとき
赤ちゃんが咳をしていて、苦しそうなときは、抱っこをして背中をポンポンと叩いてあげると楽になります。寝ている状態なら、少し状態を起こすと肺や気管支を圧迫しにくくなります。
夜中に咳が続く場合は、室内の温度や湿度を調整し、少しお水を飲ませて水分補給するようにしましょう。
咳に近い異常な音
赤ちゃんが咳をするのは、さまざまな原因がありますが、稀に咳とは違う音を出す時もあります。
どちらかというと呼吸が苦しそうで「ゼーゼー」という音や「ヒューヒュー」という音が出ることがあるでしょう。その場合、咳ではなく気管支ぜんそくを発症している恐れがあります。
気管支ぜんそくは、ウィルスや細菌が関係しているわけではなく、アレルギーが関係していることが特徴です。気管支が細くなり、ゼーゼーという音やヒューヒューという音を出します。
成長するにつれて徐々に緩和されてくるケースもありますが、症状が悪化すると呼吸が苦しくなる事もあるので、マメに病院で経過を見てもらうようにしましょう。
寝る前の咳
昼間は大丈夫だったのに寝る時点になって咳が酷くなってぐずぐずし始めた赤ちゃんを見て、困ってしまうお母さんも多いですね。どうして寝る前に咳が酷くなるのでしょうか。
人間は寝る時間になると体表面温度が上がるのですが、体温が上がると気道の分泌物が増えるため、それが喉に絡んで咳につながります。特に赤ちゃんは体内の水分量が多いので、分泌量も増えて余計咳をしやすいのです。
咳が続くと赤ちゃんは眠るどころではなくなってしまうので、そんな時は縦抱っこにしたり背中をさすってあげましょう。喉がクリアになって咳も収まっていきます。深い眠りに入れば体温も下がってくるので、それまではすぐに寝かさずにもう少しそのまま抱っこしてあげましょう。
夜や明け方の咳
すやすやと眠っていたのに、夜中に急に咳き込み始めたり、明け方目を覚ましたら咳き込んだりする赤ちゃんがいますが、何が原因なのでしょうか。自律神経の働きが関係しているケースもありますが、気温差が関係していると考えられるでしょう。
夜中から明け方にかけては、季節を問わず気温が下がっていきます。特に明け方は1日の中で最も気温が低くなるので、その気温差を敏感に察知し、咳き込んでしまうのです。
気温が上がれば徐々に治まってきますが、咳が気になる場合は室内の温度を調整してあげるようにしましょう。
咳が出ているときの食事
咳が出ているときは、どのような食べ物を与えればいいのでしょうか。母乳やミルクなどで栄養を摂っている時期なら、喉に引っかかりにくいので大丈夫ですが、問題は離乳食をスタートしている場合です。
離乳食でも初期の段階なら、トロトロの状態で液体に近いため、無理なく食べることができますが、離乳食も中期~後期に差し掛かる頃になると、粒が大きくなり固形物に近い状態になるので、うまく飲み込めなかったり、誤飲したりしてしまうことがあります。
咳が出て食べづらそうにしているときは、初期の離乳食に戻してあげましょう。また、食欲がない場合は、母乳やミルクだけにしてもかまいません。元気になったら、再び離乳食をスタートさせていきましょう。
水分補給について
赤ちゃんに咳が出ているときは、できるだけ水分補給に気を付けるようにしてあげてください。喉の粘膜が弱っているので、乾燥すると咳が出やすくなるので適度に湿らせてあげることが大切です。
また、風邪をひいているときは発熱を伴い、脱水症状を引き起こす可能性もあるので、こまめな水分補給は必須です。ただ、水分補給に柑橘系のジュースを与えるようなことは避けましょう。
オレンジなどの柑橘系は、刺激があるため喉がイガイガしやすくなり、かえって辛くなってしまいます。ビタミン補給と考えて与えてしまいがちですが、喉を潤し、保護する上でも冷ましたお湯などで対処するようにしましょう。
こんな症状を伴ったらすぐ病院へ
病院に連れて行くといっても、すぐ連れて行かなければならない場合と一晩待ってからでも十分間に合う場合があります。咳に加えて通常の風邪と思われる熱や鼻水があるのならば、日中の受診でも問題ありません。
しかし、一日中ずっと咳が止まらない・呼吸するたびに音が聞こえる・ぐったりして水分も受け付けてくれない、そんな場合は、夜中であっても救急病院へ連れて行きましょう。
赤ちゃんの脱水症状は重篤な状態になりやすいため、早い行動が大事です。反対に咳をしていても元気に遊んでいるのならば、病院にすぐ行かず家で様子を見ていても大丈夫です。赤ちゃんの様子をよく観察して、前よりも酷くなったと思ったら病院に連れて行くようにしましょう。
お母さんに感染しないために
赤ちゃんが咳をしていると、お母さんは気がかりでつきっきりになるでしょう。そうなると、同じ空間に長時間一緒にいるので、お母さんにも病気がうつってしまう可能性があります。
それを防ぐためにも、1時間に1回は窓を開けたり、換気扇を回したりして空気を入れ替えるようにしましょう。また、空気が乾燥しているとウィルスや細菌に感染しやすくなるので、加湿器などで湿度を一定に保つことも大切です。
お友達にうつさない様に
お友達と遊んでいるとき、赤ちゃんが咳をし始めたら抱っこしてその場を離れるようにしましょう。もし、ウィルスや細菌による咳の場合、周りのお友達にうつしてしまう可能性があるからです。
外遊びが大好きでも、咳が続くようなら自宅で安静に遊ぶようにしましょう。
元気な様子でも、外に遊びに出て症状が悪化する恐れがあるからです。基本的に咳が続く場合は大人しく過ごして経過を見守るようにしましょう。
まとめ
赤ちゃんと咳についての情報を、さまざまな角度からご紹介しました。咳にはさまざまな種類がありますので、咳の音や体調などから見極めていきましょう。
また、咳が辛いときは症状を緩和させるように努め、少しでも早く回復させ、悪化させないようにしてください。適切な対処方法を実践し、大切な赤ちゃんを1日も早く元気な状態に近づけてくださいね。症状が気になる場合は自己判断せずに病院行きましょう。